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Set!
「♪プルルルルルーー♪」
プラットフォームに発車のベルが鳴り響いた。
西村香織は階段を駆け登り、閉まりかけのドアに身体を滑り込ませた。
乗客の冷たい視線が突き刺さる。
「ハァ、ハァ、……。」
乱れた呼吸を整えようと、香織は荒い息を何度もしながら空いているシートに腰をおろした。
「お母さん……。」
搾り出したかすれ声と共に、香織は静かに目を閉じた。
香織はセーラー服の上にパーカーを羽織り、赤いショルダーバッグを肩に下げていた。
そしてその両手で薄茶色の封筒を大事そうに抱えていた。
「お母さん……。」
再びそう呟くと、香織は眠りの中に落ちていった……。
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