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ステップ  作者: 鷹橋達也
26/26

TRUTH




「よし、侵入したぞ。」



名称欄に打ち込んだ途端、画面は真っ黒になり、

中央にパスワード入力という文字が現れた。



アキラは壱万円札の識別番号と同じ文字を打ち込んだ。



Enterキーを押した途端、再び画面は明るくなり、

今度は整然と並んだファイルがびっしりと現れた。


「一体何が入ってやがんだ……?」


さすがの高杉も、好奇心よりも不安のほうが大きいらしい。



ファイル名は無記名になっていたので、


アキラはとりあえず一番左上のファイルを開けてみた。



だが、アキラはその内容を見て、「とりあえず」などという中身ではなく、

いきなり本丸にのり込んでしまった気がした。



高杉も食い入るように画面を見ている。


「……こりゃ、


とんでもねぇ爆弾を置いてったな、

弓ちゃん……。」




それは、民政党「若林派」の大物代議士に関する不正行為を、

詳細に調査した情報だった。



財界との贈収賄はもちろん、

新興宗教団体や「海江田組」の関係団体、そして警察やマスコミとの癒着、


果てはアメリカ共和党の指示による日本の政策誘導への加担、などなど。



しかも、

それらに関係する人物同士の繋がりや、


それを証明してくれる証人と、その証人を脅すための情報、


さらには、

証人が既に死亡している場合には、

殺害に関与した組織と人物の情報まで書き込まれていた。



そしていずれの情報にも、

それらを証明するための写真や映像が添付ファイルとして保存されていたのだ。




アキラと高杉は、その情報量と正確な分析に、鳥肌が立つ思いでいた。




「アキラ、こっちのパソコンも繋がったわよ。」


高杉の机に座っていた智子がアキラを呼んだ。


アキラは秘書が使うノートパソコンの一台をこちらに移動し、智子に先ほどと同じように操作して貰っていた。



アキラの予想通り、高杉のパソコンと同じように、秘書のパソコンもファイルの並ぶ画面に辿り着いた。



アキラは高杉のパソコンと秘書のパソコンの情報を比較した。



「やっぱりな。

秘書のほうはダミーだ。」


「ダミー?」


智子と高杉が口を揃えて言った。



「ダミーとはいっても、その情報は真実だし、脅しの材料としては十分だ。


だが、高杉さんのパソコンの情報と比べると、重要度が低い情報ばかりだ。


ハッキングされた場合に、

高杉さんのパソコンの情報の“影武者“として、

冴子が忍ばせておいたんだろう。」



「………それにしても、

これをそのまま出したら、大変なことになるぞ………!」



高杉の顔は、完全に血の気が失せている。




「……羽柴大二郎と、

 ……羽柴和彦。



 現役の『総理大臣』と、

 女房役の『官房長官』、


その親子を、世界のさらし者にしろというのか……!」




高杉の気持ちは、アキラにも痛いほどわかった。



当時、世界でも類を見ない、

国政のナンバー1とナンバー2を親子で務めるというニュースは、


またたく間に世界中をかけ巡った。



そんな親子をマスコミもはやし立て、

ワイドショーは、連日二人の動向を追っていた。



最近では、

そんな馬鹿騒ぎも鎮静化し、

父親の羽柴大二郎首相の人気にも陰りが見えてきたが、


息子の羽柴和彦の人気は健在で、


次期『総理大臣』の有力株とされている。



高杉は呻くように言った。


「……羽柴親子だけじゃない。


ここに名前の上がっている政財界やアメリカの重鎮たちも追及されるだろう。



……日本とアメリカの国内は大混乱だぞ。」



アキラは高杉の話を聞きながら、


冴子が羽柴親子を追っていた理由を探していた。



そして、それを示すファイルにたどり着いた。




……やっぱり、そうなのか。




「……何だ、これは?」


アキラの傍らに立つ高杉が、不審な目を画面に向けた。


その画面には20人を越す女性の名前がリスト化されて並んでいた。



「……『羽柴和彦が売春組織を介して関係を持った女性』……?


……ほとんど死亡か行方不明じゃねえか。」




そのリストの中には、森田雅明が監禁・殺害した女子高生の名前も含まれていた。


女性の名前は、関係を持ったとされる西暦順に並んでいる。


と、その時、

画面の名前を追っていた高杉の目が、


ある女性の名前で止まった。




「…16年前………西村美月。」


高杉はそう呟き、呆然となった。





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