ATTACK
「着いたぞ。ここでいいのか?」
国道沿いの路肩に車を止めた藤原が、アキラに尋ねた。
「ああ。助かったよ。」
目的地までは少し遠いが、
このまま車で接近するのは危険だったし、
藤原には一刻も早く香織を連れてこの場を離れてもらう必要があった。
藤原はアキラがどこへ行こうとしているのかを、
あえて聞こうとはしなかったが、
藤原のほうもだいたいは察知していて、
これ以上アキラに加担することになると、
公安全体の責任問題に発展しかねない事態になることは予想された。
「藤原さん。
香織のことを頼みます。」
車から降りたアキラが、
藤原に一礼した。
「ああ、任せておけ。
おまえも無理するなよ。」
この後起きる事態を暗示するように藤原が声をかけた。
二人のやり取りから、
不安なものを感じ取った香織も心配そうにアキラを見つめている。
そんな香織に向き直り、アキラは力強く言った。
「必ず戻るから、心配するな。」
「はい。」
香織は精一杯の笑顔で答えた。
車は再び走り出し、
アキラはその後ろ姿を見送りながら、車に背を向けて歩き出した。
この先には私鉄の駅があり、
それを囲むように広がる繁華街、
その外れに目的地があった。
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