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異世界召喚されて、生贄にされそうになったので逃げました!

作者: とと
掲載日:2026/01/28

読んでいただきありがとうございます。


わぁ~~~~~。

落ちてる、落ちてる落ちてる!


ザブーン。


凄い高いところから落ちたはずなのに痛くない。


がぼぉ。。。


ていうか息ができない。深い、死んじゃう。じたばた手足を動かすが、体が浮かない。

これはやっぱり死ぬ。

私かわいそうじゃない。

16歳で、なんだかわけのわからない穴に落ちて死ぬなんて。


ん~。

次は美人に生まれたい。




薄れて途切れそうな意識の中、急に体が水面に浮上した。


がはぁ ……   はあ~。


大きく呼吸をし、眼を開くとそこには猛烈美男子!しかし眼が紫……。


「大丈夫か」


声までかっこいい。

穴に落ちて。池に落ちて紫瞳の美男子に抱えられて、状況が全く理解できず、ぽかんとする私の頬を片手でぐりっとつかみ、口を開けさせられた。


「水を飲んだのか?大丈夫か?」


私きっと不細工な顔になってる!

「だだだ 大丈夫でしゅ、息してましゅ。生きてましゅ」


「なぜ空から降ってきた?お前が聖女なのか?」


この美男子は、私に質問しているのかしら?

ただ穴に落ちた私にどうしてかなんてわからない。


「あの……学校の帰り道で、急に足元に穴がい空いて……落ちました」


「…………」

3分経過……なんか言ってください。


「100年に一度この国には聖女が空から舞い降りる、そしてその力でカタストロフィから国を守ると言われている」


「カ カタストロフィ?」


「厄災と言ういい方ならわかるか?魔の森で魔物が大発生する」


「魔物?」


「アレックス団長!どうされました?」


「池に落ちた娘を助けただけだ、こちらで保護する」


「団長……ここは王宮ですよ聖女様なのではないですか?神官を呼びましょうか?それともレオ殿下の方がいいですか?」


「どちらも呼ばなくていい、魔道騎士団でまずは預かり不審者でない事を確認する」

がやがやと人が集まり始めた。


アレックスさんは、そばにあったマントを私に覆いかぶせると、抱えて歩き出した。

やややや、これはもしかしてお姫様抱っこと言うものでは!


マントの中で小さく丸まっていると突然、椅子の上に降ろされた。


おずおずと顔を出すと、アレックスさんに少し待つように言われ待っていると、がやがやとメイドさんみたいなお姉さん達が数名入ってきて囲まれ、あっという間にきれいなドレスを着せられた。


「あのあのドレスなんて無理です~。皆さんの着ているその服と同じものを私に貸してください。制服が乾いたら洗ってお返ししますから」


「ドレスお似合いですよ。ウエストが細いから、コルセットもいりませんし。かわいいですよ」


「でもでも」


コンコン。

ノックの音と共に、アレックスさんが入ってきた。


「着替えは済んだな、応接で少し話そう。ついてきてくれ」



✿ ✿ ✿



応接室には、あたたかな紅茶と、フィナンシェみたいな焼き菓子があり、ごちそうになりながら「佐藤 玲菜 16歳 高校2年生です」まるで面接の様に次々くり出されるアレックスさんの質問に答えていった。


ここは王宮内にある魔道騎士団が管理する施設の中で、アレックスさんはほとんどここで暮らしているらしい。

このカルバ国では厄災が訪れる、半年ほど前に空から聖女が舞い降りて起こる厄災を鎮めるらしい。

これはまさしく、異世界召喚では!

光がぱーん。みたいな、魔を払う力を私が放てるなんて思えないけど。

それとも。

手から光を出して、ぱー。みたいな傷を治す力とか!


自分の手をまじまじと見つめてみる。



ないな。


しかしどうしたものか考えながら紅茶を飲んでいると。すごい勢いで応接の扉が開いき。

金髪のサラサラな髪を後ろで結んだ。物語の王子様とはこの人!みたいな人が勢いよく入ってきた。


「アレックス!聖女が召喚されたそうだな!」

ザ!王子と眼があった。


「この子か。きみ、名前は?

私はこの国の第一王子、レオ。召喚された聖女はその時の王族と婚姻を結ぶ、習わしなんだ。

こんなかわいい子が私と結婚するなんて嬉しいよ」


「私は、佐藤 玲菜です。

あの、習わしと言われましても、初めてお会いして突然に、結婚などできません」


「…………」

そっけない返事に驚いたレオさんだが、直ぐに笑顔になった。


「驚かせてしまったね。サトウ・レナ。サトウが名前かい?」


「サトウはファミリーネームです。私の名前はレナです」


「レナ。きれいな名前だね、私の名前に似てる。突然この国に来て心配あだろうけど、私が守るから大丈夫だよ。少しずつでいい。仲良くしてくれるかな」


アレックスさんを見上げて助けを求める。


「レオ王子殿下、この娘は庭園の池に落ちた不審者です。現在調査中ですのでお引き取り下さい」


「アレックス団長

先刻、光の塊が庭園に落ちてきた事は、複数の者が確認している。

池に落ちていたこの子は空から降りて来た聖女ではないのか?」


「私は池に落ちるところを見ただけです。おぼれていたので助けましたが、不審者である可能性も捨てきれません」


「不審者に可愛いドレスを着せて、お茶でもてなすのか?

目撃した者は彼女がこの国では見たことがない服を着ていたと言っていた。

とりあえず、神官に判断をして貰う方が先ではないか?」


「この者は、聖女か不審者かわからない状態ですが、先ほど池でおぼれかけたばかりです。

今日はこちらで管理します。神官の判断は明日にお願いします」


レオさんとアレックスさんが揉めている間に日が傾きかけていた。


「今日では時間も遅くなるな」


レオさんにふいに手を握られる。

「レナ。明日迎えに来るからね、君は不審者でなく聖女だ、神官に確認してもらい王宮に君の部屋を整えよう。今日はゆっくり休んで」

満面の笑みで手を振りレオさんは帰っていった。


「あの。アレックスさん、助けていただきありがとうございます」


「レナ。私の事はアルでいい。親しい者はそう呼ぶ」


「今日あったばかりで、池から助けてもらって、いっぱい迷惑かけてるのに、いいんです?」

「大丈夫だ。レナは友達には何と呼ばれるのだ?」


「れなっち とか、 れなたんですかね」


「れなたん」

うつむきながら小さな声で、アレックスさんがつぶやいた。

かわいい。きゃーそしてなんだか恥ずかしい。


「レナでいいです。レナと呼び捨てでお願いします」


慌てて頭を下げる私を見て、アレックスさんは少しほほ笑んだ。

笑顔の破壊力!


「今日はゆっくり休め、客室に案内しよう」



✿ ✿ ✿



ふかふかのベッドに入ったけれど、何だか眠れない。


そりゃ私だって、乙女ゲームや異世界ファンタジーで聖女召喚は知っておりますけれど、物語のヒロインみたいに魔力が開花するわけでも、お役立ち知識が豊富でも、てきぱき仕事ができるでもない。


王子様との結婚だって、国母を決めるのに空から落ちてきた私なんかでいいの?

まあ。かっこいい人だったけど……


私がヒロインよ~。なんて思えない。

何もしてない黒髪ストレート、普通のメガネ女子なんだから。

容姿で自慢できる事なんて、少し珍しいヘーゼルアイくらいなんだから。


!! そういえばメガネがない。でも見える!この世界は、乱視の私がはっきり見える様に、ブレてるのかしら?そしたら美男子もほんとは美男子じゃない?


そんな事を考えているうちに私はいつの間にか眠りについた。




ドアをノックする音で目覚めると、お日様はすでに高い位置に上っていた。


「レナ様、おはようございます。朝食をお持ちしました」

私は昨日のメイドさん達に促されるまま朝食を食べ、なんだか白い光沢のあるシンプルなドレスに着替えさせられた。


「あの、この国では、あまり人の名前に(さん)なんて敬称使わないですか?

目上の人には失礼ですか?」


「そうですね。王族の方には殿下、貴族の方には閣下などが継承として使用されます。

それ以外ですと、お名前を呼んでいいと言われれば、目上の方には様をつけることが多いですかね、親しくなったり、婚約者同士などは、軽傷をつけなかったり愛称で呼び合う事もあります」


「そうなんですね。ありがとうございます。

いろいろわからない事が多くて、また教えて下さい」

頭を下げる私にメイドさんたちは、優しく笑って部屋を出て行った。




「レナ。迎えが来た。一緒に神殿に向かおう」


アル様と一緒に神殿に向かった。

初めて乗る馬車は、かなり揺れてお父さんの運転を思い出した、お父さんが運転すると小さなころから車酔いする。さらにお尻が痛い。座布団が欲しい。


神殿に着くと、同じような白い服を着たサンタさんみたいなおじさんが、私に手をかざしてからおじさんの後ろの大きなマリア様像?に祈りをささげると、マリア様像の後ろが光り、私は聖女と認定された。


像の後ろに何かあるんじゃないかと回り込もうとしたが、レオ王子殿下に腕を取られずりずり引きずられるように神殿を出た。

あんな光るなんて怪しい。


「レナ。君の部屋を準備したよ、今日からは王宮で過ごせるよ」


「あのあの、私はできれば騎士団の施設で暮らしたいのですが、メイドさん達もとても親切ですし」


「駄目だよ。聖女と分かったからには私の婚約者だ、王宮のメイドたちも優しいよ、大丈夫」


「こちらの国での習わしだとは聞きましたが、私の暮らしていた国では習わしや家の都合で結婚するなんて今はほとんどなくて、好きになった人と結婚するんです。

なので、婚約者なんて急に困ります、顔を見るのも2回目で一目惚れもしてません。

それにまだ私16歳なんです。

私の国では、結婚なんてまだ全然考えられません」



「…………」

まくしたてる私に、レオ王太子殿下を初め周りのみなさんもみんな動きを止めた。


「すみません」


「そうだよね、昨日ゆっくりと言ったばかりなのにすまい。

100年に一度降りてくる聖女は、魔を払う力を持ち王族はその聖女を助けるのが重要な務めなんだ、それが当たり前と私は思っていたがレナにはわからない理屈だよね。

でも知らないこの国で一人では生きていけないだろ?

私の助けを受け入れてくれないかな」


そうだ、生きていけない。

でもどうしたらいいかわからない。

結婚はどうするか別にして、本当に私が聖女ならできる事をしてからその先を考えよう。


「はい。取り乱してすみません。

でもわがままを言わせてもらえれば、やっぱり昨日のお部屋で暮らしたいです」


アルさんも話に入ってくれて、私は騎士団の客室で過ごしながらレオ王子殿下とお茶をしたり、この国の歴史を学んだり、ダンスやマナーなんかも教えてもらうことになった。


次の日アル様が、女性騎士のリリー様を私専属に付けてくれ、いつも行動を共にしてくれる。

とても気さくで私より4歳年上だ。

リリー姉さまと呼び、直ぐに仲良しになった。


そして私が召喚されてすでに4ヵ月くらいたった良く晴れた日。


その日は早めにレッスンが終わったので、庭園を抜けてお部屋に帰ろうとお庭を散策していた。


空に向かって手を伸ばし、ストレッチしてから周りを見渡すと少し離れたところにある渡り廊下にレオ王子殿下とお姫様みたいにきれいな女性を見つけた。


廊下の天井の形状で声が響くのか、二人の会話が離れた私まで聞こえてくる。


「レオ様、わたしもう我慢ができませんわ。

私は何年もレオ様の婚約者であり、誰よりもレオ様をお慕いしています」


わあ。レオ王子殿下婚約者がいるじゃない。

さらに女性がレオ王太子殿下の胸に飛び込みました!


レオ王太子殿下は、やさしく彼女の髪を撫でた。

「アンアンヌもう少し我慢しておくれ、予定どおりに魔の森の沼に聖女を沈めれば、この先100年我が国は安泰だ。国民からの信頼も回復する。

贄になるのは聖女のみ、聖女は王室の一員として贄になる事で王室の対面は保たれるだから聖女と偽りの結婚をするのは仕方がないんだ。

私が愛しているのは、アリアンヌひとりだけだよ。」


贄って生贄の事?私人柱になるの?


体がガタガタ震え青くなり倒れそうな私を、リリー姉さまが抱えて王子達に気づかれないように部屋まで連れてきてくれた。

そしてすぐ戻ると言って出て行った。


どうすればいい、とにかくみんなが怖かった。誰も私が生贄になるなんて教えてくれなかった。

何のためにレッスンなんてしたの!

歴史で生贄なんて酷い事が繰り返されているなんて教えてくれなかった。

怖いし、腹が立つし、悲しいし。

でもどうする事もできなくて。

ただ毛布にくるまっている私の元にアル様を連れてリリー姉さまが戻ってきた。


「レナ。大丈夫か?」

アル様の声を聞いたら、抑え込んでいた感情が溢れた。

「みんな怖い、誰も教えてくれなかった。

突然足元に空いた穴に落ちて、池に落ちて死にそうになって、どうすればいいかわからなくて」

わんわん泣きながら叫ぶ私を、リリー姉さまが抱きしめてくれた。


二人とも私が泣き止むのを待ってこれからの事を話し始めた。


「レナ。今夜リリーと二人で逃げてくれ。

逃げる場所は隣国に居る私の従弟ルイスが後を継いだ公爵家だ、そこは母上の生家でもある。

今まで話せなくてすまなかった。

レナには、怖い思いをさせないで解決したいと思っていたんだ。

ちゃんと話さないこよでレナを傷つけ、辛い思いをさせてすまなかった。

俺と、リリーのことを信じてくれるか?」


アル様が真っすぐ私の眼を見る。


私は、今までの日々を思い返していた。

池に落ちて助けてもらったあの日から、レオ王子殿下から私をできるだけ遠ざけリリー姉さまを護衛に付けてくれたのはアル様だ。


私は拳を強く握りしめ答えた。

「二人の事は信じます」

またぼろぼろと涙がでた。


私は夜の闇に紛れて、リリー姉さまと隣国に向かう事になった。

私が居なくなったことが出来るだけわからないように、明日の朝からは体調が悪いと、私に似た女性がベッドに潜っていてくれることになった。

リリー姉さまの変りも、姉さまと同じ真っ赤な髪に魔法で色を変えた騎士様が身代わりを務めてくれる。



出発の時、アル様が見送りに来てくれた。


「アル様、私のせいで皆さんを危険な目に合わせてごめんなさい」


アル様に深く頭を下げ馬車に乗ろうとすると、アル様に腕を掴まれ気がつくとアル様の腕にすっぽり包まれていた。


「アル様」

抱きこむ腕がさらに強くなった。


「必ず迎えに行く、元気で」

アル様は驚く私のおでこにキスを落とし、くるりと振り返りこちらを見ずに手を振った。


「いきましょう、レナ」

リリー姉さまに手を引かれ馬車に乗り込んだ。


馬車は順調に進み国境を越え、超えた先にはルイス様の公爵家からお迎えが来ていた。

公爵家では、おばあ様のイザベラ様が同じ黒髪の孫ができたようでうれしいと、とても可愛がってくれた。


身代わりになってくれた彼女たちを心配したが、気がつかれる前に逃げ王家は私を血眼になって探しているようだ。




✿ ✿ ✿




その後の情報がないまま、1か月ほどが過ぎた頃、リリー姉さまが部屋に駆け込んできた。


「カルバ国で、クーデターが起き反乱軍側が勝利した」


イザベラ様は、とうとう成し遂げたのねと穏やかに頷いた。


カルバ国は、以前から王家が散財し税の取り立てが厳しく、一部の貴族だけが優遇されており民衆の不満がたまっていた。

騎士団が民衆側に加担し、クーデターは成し遂げられた。



これから、新しく国を牽引する仕組みを作っていくことになり、国中忙しいようだ。

詳しくは教えてくれなかったが、王族と一部の貴族は裁判にかけられ、処罰を受ける事になりその対応にも追われているとリリー姉さまが話してくれた。


そしてクーデターが起き、聖女や魔の森の事など今は誰も気にしていないし、魔物も増えていない。


「アル様は大丈夫でしょうか?」


「大丈夫、落ち着いたらきっと迎えに来るわ」

イザベラ様が、やさしく抱きしめてくれた。

温かさに、家族を思い出し涙がこぼれた。

異世界から来た聖女でもない私に、みんなやさしい。




✿ ✿ ✿



さらに3ヵ月後。


「レナ!」


公爵家の庭園で、イザベラ様とお茶をいただいていると懐かしい声がして振り返った。


「アル様」


再会の嬉しさにアル様に飛びついた。

アル様は私を受け止め強く抱きしめる。


「無事でよかった」

アル様は、ぼろぼろ零れ落ちる私の涙を手で拭いお別れした日と同じように、私のおでこにキスをした。


あの日は緊張してて、混乱してて大丈夫だったけど今日はすごく恥ずかしい。

おでこが熱い。


「レナ。俺は、レナが好きだ。」


あの日と同じ真剣なまなざし。


「わ。わ。私もアル様が大好きですー」

真っ赤になりながら私は叫んだ。


「あらあらまあまあ」

後ろのテーブルでイザベラ様が笑ってる。


これからどうなるかわからないけど、知らない世界にやってきて

佐藤 玲菜  16歳 初めての彼氏ができました~。



~ 終わり ~


いつも誤字脱字などありがとうございます。


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