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終末都市の塵芥  作者: Anzsake
アジサイ:シメイ/流れる。変わる。託す。
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化け物たち

「…化け物みたい」


ザワつく列車の、たった一言が胸に刺さる。


それを否定するどころか、初めに僕らが言ってきたことだ。

タネだから。そう蓋をしてきた。

分かってたはずだ。だからタネには隠させていた。


ケラ喰いは、化け物だ。


「…そんな化け物が、旧市街には沢山居るの?」


「……そうだ、旧市街には、ケラ喰いが居る」


列車のざわつきは、更に広がった。


「…そんな恐ろしい物を、子供にごっこ遊びとして教えてたの?」


「…あぁ」


「…すぐ隣に、そんな化け物が居ると知って?」


「…そうだ」


「……信じられないわ」


何も言い返さない、いつも通りのタネが、余計にみんなの疑惑を確信に変えていく。

怯えた視線が、やがてじりじりとタネから僕に移ってきた。なぜ一緒にいるんだ、そう目で訴えかけられる。


「師匠!」


後ろから声がした。カリンとサルビアとホルンが来る。

その不安の声を聞いたカリンが、こちらを見る。


「…師匠?」


「そんなことを言っている場合では無いでしょう!!」


アジサイの怒号に、みんなが黙る。

僕ですら、これまでこんな大きな声を出したところを見たことが無かった。


「すぐそこに次の虫が来ているんだ!子供は列車に!ベゴニア君たちはあっちに!!」


空を飛ぶ虫は、この黄昏の中でも見える程近くに来ている。


アジサイの指さす方向に、ベティと1台のトラックがある。ベティの上で、エヴェリンが手招きする。


「…アジサイは?」


「僕は列車に乗ります」


「…頼んだ」


気持ちを押し殺したまま、トラックに乗り込む。

中には、古参を含む回収員とユウトが乗っていた。


列車が動き出す。それに合わせて、トラックとベティも走り出した。




虫を避け、鉄道のトンネルに入る。道が悪く揺れる。誰も話そうとしない。

気を利かせようとシライシが口を開く。


「えっと、これからどうするんですか?」


誰も返事をしない。というか、出来ない。

分からないからだ。僕らはたった今、コミュニティを投げ出した。


もっと規模の小さいコミュニティなら良くあることらしい。

1度捨てた場所を復興するよりも、新しい住めそうな所に移る方がマシだ。


それでも、失った物は大きい。


これまで整えてきた畑も町も、集めた物資も全て無くなった。人数も、かなり減ってしまった。

一番に声を上げたのはカリンだ。


「僕は、リズを助けに行きます」


それにキキョウが反論する。ついさっきの荒れようから、だいぶ落ち着いた言葉で制す。


「いや、先に復興を優先するべきですね」


「先って何ですか!?今助けに行かなかったら間に合わないかもしれないんですよ!?」


「だからって、無闇に突撃して何とかなる場所では無いですよ。装備もない。そもそも、まだ半分しか進めてないでしょう」


装備で思い出し、腰に提げたメイスを取り出してカリンに渡す。


「…ありがとうございます」


続けてポケットに手を伸ばした時、ジニアが話し出す。


「装備ならある」


「…どういう事です?」


「言っただろう。俺は元々、奥に行く予定だったんだ」


ジニアは上を指さす。トラックの荷台の屋根に、空気ボンベやガスマスクが積まれている。


「回収員を辞めると言いながら、勝手に使うつもりでしたか」


「それでも、この数じゃ足りないな」


ユウトが、持っているカバンを床に落とす。中から、特殊な形のガスマスクが出てきた。


「…これは?」


「俺がなんの用も無く技師の所に籠ってた訳ないだろ。空気ボンベの不要なガスマスクだ」


数は30程、少なくともここの人間全員は使える。


「残りは技師が持ってる。もし渡米する人間が居たら、あの汚染環境を通る必要があるからな。何よりも先に、これを持ってきた」


「なら、ハヅキは生きているんだな?」


「当然だ。俺とエヴェリンがここまで来て、見殺しにしてるわけが無い」


そう言い切るユウトを見て、何故かサルビアが俯く。

手に握りしめた派手な色のポーチ。確かあれは、ジローが買っていた物だ。


目が合ったサルビアは、バツの悪そうに話す。


「ベェ…あんたがまだ行くなら、ボクも行く」


「……」


「もう、ボクに残ったものなんて無い。だから、最後の青春をちゃんと終わらせる。ベェもそうなんでしょ?」


「それは…」


言い始めるより早く、マリーが僕の襟を掴んだ。

抵抗する元気もない。


「ずっと!ずっとそうやってヒマワリちゃんに縛られて!!今助けられるかもしれない人を見殺しにするつもり!?」


「ちが…」


「マリー!!」


サルビアがマリーの頬を叩いた。首が解放されて椅子に落ちる。


「そうやって、ベェを悪者にして!古参の誰がベェを責められるって言うのさ!」


頬を抑えるマリーは、目を逸らして何も言わない。サルビアが続ける。


「キキョウの言う通りだよ…私たちは、ヒマワリちゃんを置いてきた悪者だよ…だから次こそはって?弱っちいのにたまたま生き残ってるだけのあんたが、贖罪だ何だって正義面して…何様のつもり?」


カリンが反論する。


「だったら、リズはどうなってもいいって言うんですか!?」


それにジニアが反対する。


「…そうだ。そもそも、リズを助けてどうする?これから第2第3のユユが出てくるんだろ?お前には悪いが、このクソみたいな状況を打開するとしたら」


1度言葉を飲み込む。その続きを止める程の余力は、今の僕には無い。


「…リズを見つけて、殺すべきだ」

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