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終末都市の塵芥  作者: Anzsake
ジニア:セオウ/ゼロkgの重り
43/111

進むための歩き方

「これまでのあらすじ」


旧市街で見つかった「タネ」と呼ばれる生き物の登場により、旧市街は大きく変化を始める。

ケラ喰いの襲撃、胞子下から這い出る虫、そして特異で巨大な個体の出現。

これまで安全圏で活動していた回収員たちの生存率は、次第に下がっていく。


さらに西から旅人たちが現れ、消息不明の元古参「ヒマワリ」の行方が再び注目される。

外縁10kmよりも奥、ボーダーラインの内側への探索の準備が始まろうとしている。


電車に揺られる。横でシライシが寝ている。


向かいに座るジニアは、あまり良い顔をしていない。

恐らくは先日確認されたと言われる変な虫のことだ。


「…ベゴニアでも殺せないと?」


「過信しすぎだ。僕が単騎で殺せるのは僕よりも少し大きい程度だよ」


「報告にあった巨大ムカデは殺したんだろ?」


「あれに僕は関わってない」


ジニアが頭を抱えるが、そこまで深刻そうな顔もしていない。

横にいるミナトが口を開く。


「巨大ムカデの報告書には、タネとカリンの対応で補給支援砲撃で討伐したとありましたね。同じ戦法は使えませんか?」


隣に座るカリンが顔を上げる。リズは今回は来ていない。

安静にしていたいのと、他の療養者をキキョウと診る為だ。


「誘導が可能だったので出来ましたが…その虫が同じようになるとは限らないと思います」


「何にしても、情報が少ない。巨大ムカデに、植物の翅を持つ巨体ハエ。旧市街は俺らが思うよりも魔境のようだ」


「あの時から居たのかな?」


「どうだろうな。少なくともあの時は、全員無知で弱すぎた」


「あの時って?」


カリンの横で聞いていたルンクが乗り出す。横でヴィンは外を見ている。


「…ヒマワリ含む僕らが初めて旧市街に入った時だよ。外縁15kmで断念したんだ」


「現在、外縁13kmまではルートができている。あの頃の15kmまではもうすぐだ」


大きな山を過ぎると旧市街が見えてくる。雨が降っている。




時間は午後7時。外縁7km。

装備チェックをして外に出る。最近は、ボーダーライン外側の虫が極端に少ない。


今回のパーティは

僕、シライシ、カリン、タネ、ジニア、ミナト、ルンク、ヴィンの8人だ。


ルンクの首の装置のランプが光る。


「ルンク、ヴィン。戦闘経験はあるか?」


「ないけど。ヤバい?」


「構わん。目的は先に進むことだ。そこだけ間違えるな」


「へーい」


他の回収員を見送り、ここから東に歩く。


「ベゴニアも、不要な戦闘は避けて欲しい。お前なら大丈夫だと思うが」


「OK。道案内は任せるよ」


「頼もしい限りだ。お前が居るなら、もしかしたらあそこまで行けるかもな」


「…やっぱり、それが狙いか」




ボーダーラインにたどり着くまで虫を10匹程殺して進む。ケラ喰いは居ない。

カリンはメイスの相性が良く、1回の攻撃で思い切り頭を潰している。


虫は、頭が無くなってもしばらくは普通に動く。


そこに居るはずの頭を潰した張本人を殺そうと、鎌持ちは前脚の鎌を振るが、カリンは身をかがめて避ける。


「どうですか師匠。僕、素振りとか色々特訓してるんですよ」


「コミュニティで顔を見ないと思ったら、そういう事か」


袖をめくり力こぶを作って笑うカリンが可愛らしい。

正直ジニアの方が凄いが、大人と比較するもんじゃない。


「様になってるな」


「本当に思ってますか?少しは強くなりましたが、まだまだですよ」


「そうかもな。これから楽しみだ」


遠巻きに戦闘を見ていたジニア達が戦闘終了を確認して歩き出す。弾薬やボンベ温存のため射撃兵装は極力使用しない。


ジニアは手に持った杖を地面に立てて起動する。

特殊なエコーやソナーを放ち周囲の生き物を検知する専用装備。EASマルチロッド。


戦闘を避けるジニアがボーダーライン内側の探索を進められているのも、この杖のおかげだ。


「8体。問題ないな。進もう」




何度見ても、ボーダーラインは異様な雰囲気がある。

内と外を隔てる白い胞子の壁。ジニアとミナトは構わず中に入る。


「うひゃー。これが噂の胞子か」


「ルンク達の呼吸器は問題ないか?」


「坑道は微細な粉塵やガスも酷いからな。これがなきゃ死んでたが、今はこれのおかげでへっちゃらさ」


ルンクは笑ってスカーフの下の呼吸器を見せつけ、持ってきたゴーグルをつける。


必要ないとは言ってあるが、これが気合い入れのルーティンらしい。




霧の中を、体調50cm程のトンボが飛んでいる。滞空していたと思えば、素早い動きで飛んでいく。


「あれ、こっちに反応しませんね。なんすか?」


「偵安種と呼んでいる。こいつが飛んでる時はケラ喰いは居ない」


「タネ、食うなよ」


「ふむ、敵意の無いケラ喰いには反応しないのかもしれんな」


「回収員の服着せてるからかも」


タネが服から背部腕を覗かせると、トンボはどこかに行ってしまった。


タネが大人しく腕を仕舞う。そうすると、自然とトンボが寄ってくる。


「なるほどな。1つ知見を得た訳だ」


しかし、トンボは再び離れていった。

ジニアは杖を付いてソナーを飛ばす。


「…10体。2体近くに居るな」


その言葉に斧を抜く。周囲に生き物の気配は無い。


「警戒しながら進む。発見次第判断する。耳は澄ましておけ」


ゆっくり、あまり音を立てないように前に進む。


ビルに囲まれた大通りの真ん中は、見通しが良いようで、細かい路地が分かりにくい。


「1度路地に入る。付いてこい」


ジニアについて行き、車一台が通れる程の路地に入る。地鳴りがしたので、ジニアが少し広いスペースで杖を付く。


「…9体。安心は出来ないが、1度立て直そう」


「思ったよりも、生き物居ないんですね」


「胞子は大量だがな」


「近頃は異常に少ない。偵安種もかなり数を減らしている」


「例のデカ虫か?」


「かもしれん。それか、どこかに集まっている可能性もある」


ヴィンが大通りを振り返る。そちらに向かって指を指す。


「…あれは?」


指さす先に見えるのは、6本個体のケラ喰いだ。近くに要塞種の死体が落ちている。

こちらには気づいてない。


「…うひゃー」


「面倒だ。離れよう」


ジニアが反対方向に歩き出す。ケラ喰いを見つめているヴィンを、ルンクが引っ張る。


ケラ喰いがこちらを見た気がするが、直ぐに食事に戻る。安堵のため息を吐いて、ジニアについて行く。


あの頃よりも、緊張している。それはきっと、この先の期待もあるのだろう。

「1行キャラ紹介」(全キャラあり、長め)


中心人物

・ベゴニア:本作の語り手。古参の1人。近接主体の戦闘系

・シライシ:ベゴニアの相方。援護射撃が得意

・タネ:人語を介すケラ喰い。少しずつ言葉を覚えている。

・カリン:リズを守るため強くなりたい新人回収員

・リズ:カリンの妹。ケラ喰いに認知されにくい


古参

・ジニア:堅物。現実主義。

・キキョウ:元医師。煙具を用いる裏表の激しいタイプ

・サルビア:射撃戦メインの戦闘狂

・マリー:回収員トップ。古参の前では柔らかい

・アジサイ:元回収員の髭。レストラン経営者

・ツユクサ:旧市街でサバイバルをしていた。死亡

・ヒマワリ:古参の元リーダー。消息不明


回収員

・カワイ:中堅。勘がいい。仕事について嫁と揉めている

・オダンゴ:近接主体の戦闘系。死亡

・ミナト:ジニアの相方。サポートメイン

・ホルン:サルビアの相方。防御主体の戦闘系


コミュニティの人たち

・ハヅキ:技師。義足。武装や補給支援砲台の製作者

・イチゴ:シライシの嫁

・リナ:シライシの娘

・ジロー:サルビアの同居人。ホルンとコミュニティに来た


落人の籠

・マユラ:集落の長。タネ様信仰を崇拝している

・ソハラ:集落の若者。死亡

・ソハル:ソハラの弟。6歳


ヒマワリを追った旅人

・ルンク:知的好奇心が強い行動派。首に特殊な呼吸器が付いている

・ヴィン:絵を描くことが好き。ルンクに引っ付いて行動している

・Fz:喋る犬

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