表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無力からの逆転劇―“記憶の使者”が紡ぐ異世界の運命

作者: みたたま

よろしくお願いいたします。

「リオ、あなたの職業は“記憶の使者”ね。」


神託の儀で発表された、僕の職業は「記憶の使者」だった。周囲からは一瞬の静寂が広がり、その後、ひときわ大きな笑い声が響いた。


「記憶の使者って……記憶を奪うだけじゃないの? それじゃ戦えないよな!」


まさに、そんな感じだ。僕は無力で、使えない存在だと思われていた。戦士や魔法使い、剣聖、賢者といった煌びやかな職業と比べると、「記憶の使者」という職業は、その名の通り、記憶を“使う”ことしかできないと思われていた。


だが、僕にはその職業が意味することが、まだわかっていなかった。



僕が持っていた力、それは他者の記憶を触れることで知ることができる力だった。初めはこの力に困惑した。相手の記憶を奪うことはできても、何の役にも立たないと感じていた。


だが、次第に気づいた。


「記憶がわかれば、その人の過去、思考、経験、弱点まで全てが見えてくる。もし、それを活かせば、何かできるかもしれない。」


僕は決してあきらめなかった。記憶を手に入れることで、目の前の問題を解決する方法を見つけ、少しずつ成長をしていった。


例えば、冒険者として最初に受けた任務。鬼族の討伐だった。しかし、ただ戦うだけでは勝てない。僕は敵の過去の記憶を見て、その中にある弱点を見つけ出した。敵が過去に恐れていたモンスターの姿を見て、彼らを恐れさせることで、戦わずして勝利を手にした。


「ふふ、記憶を操ることでこんなに楽になるとはな。」


戦闘も冒険も、僕の力によってどんどんと有利に進んでいった。



ある日、僕は大規模な冒険者パーティーの一員として参加することになった。そのパーティーのメンバーは、どれもが強力な能力を持つ者ばかりだった。戦士のエリック、魔法使いのリナ、治癒師のカティ。みんな強く、頼もしい存在だ。


だが、その中で僕だけが、いわゆる「弱者」として扱われていた。


「おい、記憶の使者。お前、戦力にならないんだろ?」


エリックが冷たい言葉を投げかけてきた。彼の剣技は非常に強力で、魔法使いのリナも敵を瞬時に消し去る力を持っている。治癒師のカティは、どんな傷も瞬時に癒すことができる。そんな中で、僕の力は単なる「記憶を奪う」ことしかできない。戦闘には無力だ。


だが、僕は気づいていた。彼らが見ていない部分にこそ、僕の力が生きる場所がある。


僕は静かに言った。


「記憶を奪うだけでなく、それを活かす方法があるんだ。」


その時、僕はエリックの過去に触れた。彼がかつて、最も大切にしていた人を失った記憶。その記憶には、彼の「恐れ」が詰まっていた。僕はその恐れを引き出し、エリックが今までの戦いの中で抱えていたトラウマを理解した。


その理解が、エリックの心を開かせた。


「お前……、なんでそんなことがわかるんだ?」


それは、僕が他人の記憶を知ることができる「記憶の使者」だからだ。僕はその力を使い、エリックの心を支えるようになった。彼の力を引き出し、真の強さを発揮させるために。



パーティーのメンバーが一致団結したとき、僕たちは次々に難関の冒険をクリアしていった。しかし、ある日、僕は重大なことに気づいた。


「記憶の奥深くには、単なる過去だけでなく、未来の可能性すらも見えることがある。」


僕が触れたある人物の記憶から、未来に起こる大災害の兆しを察知した。まるで未来の記憶がその人の中に埋もれているようだった。僕はその情報を基に、パーティーを導き、予言された災厄を未然に防ぐことに成功した。


その瞬間、僕は気づいた。


「僕が持っている記憶の力、これこそが本当の意味で世界を変える力だ。」



僕たちの冒険は続き、ついに最後の戦いが訪れる。世界を滅ぼす力を持つ邪神の復活が迫っていた。僕はその邪神の過去の記憶を追い、彼の誕生から復活に至る経緯をすべて知った。実はその邪神も、元は人間だった。


僕はその記憶を、再度解析した。


「彼の恐れと絶望を知れば、彼を止めることができる。」


邪神の弱点を見つけ、過去の痛みを理解したことで、僕は最終的に彼を倒す方法を見つけ出す。そして、彼を救い、破壊の道から外れさせることができた。



戦いが終わった後、僕は再び仲間たちと共に過ごした。僕が「記憶の使者」として歩んだ道は、決して楽なものではなかった。だが、その力が世界を救い、仲間たちと絆を深めていったことは、何にも代えがたい宝物だ。


「リオ、君がいなければ、俺たちは絶対にここまで来れなかった。」


エリックの言葉に、僕は微笑んだ。


「僕はただ、記憶を紡いだだけさ。」


僕はそう答え、未来を見つめる。過去も未来も、全ての記憶を紡ぎ直すことで、僕たちは新しい道を切り開くことができる。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ