あのおタカラがほしいんだ
ぼくはしってしまった。
いつもおなかがすいたときに、ママがくれるあのまるいやつ。
せんじつ、たまたまみてしまったのだ。
となりのへやのあそこ、あそこにママがかくしたのを。
たぶんママはしらない。
ぼくは、このベッドからでれるんだ。
ここのこれをさわると……
よし! あいた!
ここからがボウケンのはじまりだ!
うお! ものすごくたかい!
てをのばしてもとどかない。
そうだ!
おしりからいけばいけるかも!
やった!
とどいたぞ!
あのまるいやつ、おタカラまで、ぼくをジャマするものはなにもない!
いち、に、いち、に。
うう……てが……てがつかれた。
ちょっとおやすみ。
ふう。
もうすこしでとなりのへやだ。
ん? なんだこのおとは?
わわわわ!
ま、ママだ! な、なんでママがここに?
「あら? たー君起きちゃったの? ベッドで寝んねしましょうね。……おかしいなあ。私、ベビーベッドの鍵、閉め忘れたのかな?」
ママ……ひどい……
ぼく、ぼく、がんばってここまできたのに……
ぼく、がんばったのに……
うわあああああああ
「あらあら、たー君どうしちゃったの? なんで泣いてるの? お腹すいちゃったのかな? でもまだごはんの時間じゃないからね。もう少し我慢しようね」
まるいの! あのまるいのがほしいの!
たべるとサクサクする、あのまるいのがほしいの!
「おむつ湿ってるのかな? ううん、まだ湿ってないかな。どうしちゃったんだろ? なんで泣き止まないんだろう?」
ママ! まるいのたべたい!
なんでわかってくれないの?
ママ!
「はい、よしよしよし。たー君良い子だから、お寝んねしましょうね。はい、たー君の大好きな玩具だよ! からから鳴って楽しいね!」
あ! からからするやつだ!
これ、いいおとがするんだよね。
ふう、なんだかやすらぐ。
「たー君良い子だね。大人しく寝んねしてましょうね。たー君、泣き止んで偉いね」
うう。
なんだか、とってもねむくなってきた。
なんでママにポンポンされると、こんなにねむくなるんだろう……
……は!
しまった! ねてるばあいじゃなかった!
ぼくは、あのおタカラがほしかったんだ。
よし、ママはいないな。
どこかにいっちゃったみたいだ。
まずはさっきみたいにここをひねってと。
よし、あいた!
さっきとおなじように、おしりから。
あしをのばしてと。
よし、いけた! となりのへやまでボウケンだ!
あせってはいけない。
あせったら、さっきみたいになる。
ゆっくり、のんびり、じぶんのはやさで。
よし! こんどはちゃんと、となりのへやについたぞ!
おタカラは、もうすぐそこだ!
……あれ? とびらにてがとどかない。
なんでだよう!
こんなにたかいところだったの?
くそっ! せっかくここまできたってのに!
くう、てを……のばして……いるのに!
もう……ちょっと……なのに!
あ……
なんだか……おしりが……きもちわるい……
うわあああああああ
「はいはい、たー君どうしたの? あら? たー君がこんなとこに? 私、また鍵かけ忘れちゃった?」
ママ! おしりきもちわるい!
ママ!
「はいはい、たー君どうしたのかな? あら、おむつが汚れちゃってるわね。すぐに替えてあげますからね。ベッドに行きましょうね」
ふう。
おしり、きもちわるくなくなった。
ママ、ありがと!
「たー君、綺麗綺麗になったね! もうすぐご飯の時間だからね。それまで大人しく寝てようね! ……この鍵壊れちゃってるのかな? 後であの人に見てもらわないと」
ママがおむねをポンポンしてくれる。
なんでねむくなっちゃうんだろう。
こんかいはダメだったけど、つぎこそは、あのおタカラをてにするんだ。
ぼくは、ぜったいにあきらめない……ぞ……
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