Prologue
初投稿ではありません。
スローペースで更新していきます。
ありふれた、どこにでもある街。
朝には日が昇り、夜に沈む、変わらない当たり前を繰り返す街には、毎日異なる日々を送る人々が生きている。
「ただいま……」
黒いセーラー服を着たこの少女も、日々を送るうちの一人。
紅い陽に背を照らされ、冷えた扉の取っ手に手をかけ、誰にも聞こえないほど小さな声を出して帰宅した。
少女の声をかき消す程の扉の音に反応する者はおらず、聞こえるのは木の軋む音と、つけっぱなしのテレビから流れるニュースの声ぐらいだった。
「あの人は……寝てるか」
少女が小さな声でそう呟きながら覗き込んだ部屋には、点けっぱなしのテレビと、畳の上に転がった熊のように大きな身体の男の姿があった。
側に置かれた小さなテーブルの上には、飲み終えたお酒の空き缶やティッシュ、スナック菓子の袋などが散乱していた。
声をかけることもなくため息をひとつついて、階段を上り、ゆっくりと扉を開け自分の部屋へと入る。
部屋の隅に鞄を放るように置き、勢い良く勉強机に突っ伏した。
「はぁ……」
大きなため息をついて、そのまましばらく動かなかった。
「お姉ちゃん……」
少女はそう呟いて、袖を濡らす。
その湿りは少しずつ、ゆっくりと広がっていく。
窓から差し込む光の量は少なくなっていき、闇が部屋を包み込むと共に、少女は深い眠りへと落ちていった。
多忙な中スキマ時間を縫って書きすすめておりますので、「いつまでも待ってやる」という方は是非ブックマークを押して気長にお待ちいただければ幸いです。