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イソジンと恋愛

甘酸っぱ

作者: イソジン

梅雨が近づくと、みんなどんよりとした顔をして気圧が〜とか雨で髪が〜とかそんな話を飽きずに毎日のように繰り返している。

私には無関係なので参加せず、ただただ雨の降る校庭を眺めていた。

みんなはあんまり気にしていないけど雨ってよく見ると1粒1粒大きさや入射角が違う。同じようで全く同じでは無い。けど地面に落ちれば水溜まり、最後は一緒になってどれがどれだか分からなくなる。

全員違うのに社会に出たら誰がどうとか関係なくなる。人間みたいね。と私もどんよりとしてしまったのかそんなことを考えながら、結露した窓にニコちゃんマークを描いて、少し眺めたあと制服の袖で消した。濡れた袖を頬に当て、少しだけ雨を感じた。


努力は嫌いだ。この前のテストも結構頑張ったのにそこまで点数が伸びなかった。努力はなかなか目に見えない。結構頑張っても点が取れなきゃそれまでで、誰も褒めてくれないどころか親には怒られる始末、やってられないなと思う。


ふと前を見ると自分とほとんど同じ姿勢で外を見ている奴がいる。私と同じように窓にニコちゃんマークを書いてご丁寧に輪郭まで付け始めた。変なやつと思うがなかなか視線を外せないでいると、こちらの視線を感じ取ったのかチラッと振り返る。

一瞬、目があったがバツが悪かったのでわざとらしく視線を外すとあちらも外を見直してニコちゃんマークを袖で消した。


こいつはことごとく変なやつだ。

いつも1人でいるし、視線を感じ取るのが上手いのかよく目が合う。

しっかり話をしたことはないが、遠くを見てるような目はいつも意味ありげな雰囲気を漂わせている。ご飯を食べるのは遅いし、授業で発表なんかしてるの見たことない。少しくらいいいカッコしてみろよって思う。もう少し話やすい感じがあれば話してあげるのに。


あーあ、なんでこいつのこと好きなんだろ。

窓にもう一度ニコちゃんマークを描いて隣にあいつの名前を書く。

今度を少し消さないで置いて見ようかな。

横目で見るとあいつもまたニコちゃんマークを書いていた。

暇なヤツ。

見えないけどあいつも隣に何かを描いて少し眺めたあと袖で消していた。

なんでも知ってそうな顔をしてため息なんかついちゃって、また外を眺めている。


でもあいつは知らないんだよな。窓に書いた落書きが、乾くとうっすら浮かび上がること。


そこに書いてる女の子の名前が私にバレてること、茶化されるの可哀想だから私が掃除の時に、気を使って消して上げてること。


私の落書きに気がついて欲しいこと


そこに書かれる名前がいつか私のなるのを祈ってること





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