表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

リッパ―

作者: テクマ

「・・・1000、1001、1002・・・」


ソフィアは城の中庭で日課の木刀の素振りにはげんでいた。


「おはようございます、姫様、今日も御精がでますな」

「バラン、おはよう。あと920回です。すぐ終わりますから、お茶でも飲んでお待ち下さい」


バランは剣聖が集う天空の里から来た女剣士で修行の旅の途中であったがソフィアの剣術指南役として城にとどまっていた。


「それでは私は眠気覚ましに城のまわりを走ってきましょう、もしかしたらゴブリンぐらい狩れるかもしれない、それから練習にしましょう」


姫は建国の父である英雄王の長女として生まれた。何不自由なく育てられたが、父はもう歳をとり昔の力が無いことを知り、幼い王子が一人前になるまで国を守る使命があると考えて騎士を目指すことにした。


(私は父と違い凡人だ、だが何かできるはず、いや、やらねばならない。そのためなら手段は選ばない)


はじめは剣の鍛錬のために金髪の髪を短く切っていたが、自分を弱く見せて相手に油断させることも戦略と知り、弱者を装うために長い髪を巻き髪にしていた。だが、まわりからは脳筋の変人と言われていた。


しばらくするとバランが荷車にしばりつけた3体のゴブリンを連れて帰って来た。


「姫様、捕まえましたぞ」

「これは活きのいいこと、ではお願いします」


兵士が縄をほどくとゴブリンは立ち上がりまわりを見渡し姫を見てよだれをたらした。


「はははっ、こいつらは腹が減っているとみえる」


バランはゴブリンに剣を投げわたした。ゴブリンは剣をひらうと姫を取り囲み切りかかった。姫はかわすと剣を八双から上段にかまえた。


「十分に引き付けなさい、剣に才能などいらん、必要なのは恐怖に耐える胆力だけだ」


ソフィアはゴブリンが振り下ろす剣を紙一重でかわすと脳天から肛門まで切り裂いた。二つに割れたゴブリンを見てたじろいたゴブリンたちに向かってソフィアはまた上段から剣を振り下ろし、残りの二体も二つに切り裂いた。


「お見事です」

「こいつらはなぜ私に向かって来るのです?バランはともかく他にも兵士やメイドが何人もいるのに」

「それは姫様の髪が金色だからです、奴らはまずキラキラするものに反応します」

「そうですか、それではキラキラする防具を作らせましょう、防具が出来たら狩にでます」


数日が経過してキラキラする防具が出来あがり、姫はさらに光り輝くように魔法をかけた。


「北の村の近くの洞穴に湧いてきたゴブリンの群れの討伐依頼が軍隊にきています、数が多くギルドの依頼を受けた冒険者が食われています、急がねばなりません」

「そうですか、討伐に出ましょう、打ち漏らさぬように軍で取り囲み私達が中にはいります」


巣穴の周りを取り囲むと、バランと一緒に中に入った。


きぇぇぇ!!!

おたけびと共に剣を振りおろし、姫は何体ものゴブリンを切り倒した。


「どうですバラン、私の太刀筋は」

「すこし勢いは衰えてきましたがまだやれるでしょう」

「今日は限界を超えるまでやります、今の自分を知るいい機会です、あとは頼みます」


更に切りまくったがさすがに息があがってきた。


「もう限界でしょう」

「いえまだまだ、ですが後ろを頼みます」


バランは姫の後ろからかかってくるゴブリンを倒した。さらに何体ものゴブリンを倒し、姫は最後のゴブリンを倒して周りを見渡した。


姫はバランの助けを借りて一人でゴブリンを討伐したと喜んだが、巣穴の奥からゴブリンキングが出てきた。


「私が代わりましょう」


バランが前に出ようとしたが姫は制止して前に出た。


「これは私への試練です」


しかし肩で息をして剣を杖にしている状態でまともに戦えるわけもなく姫はゴブリンキングに蹴り飛ばされて意識を失った。バランはそれを見ながら。


「命に別状は・・・無いな」


バランは剣を持ってゴブリンキングに向かって歩いて行った、そのとき何者かが入ってきた。


「まったく我が娘は死を恐れぬのか」


遅れて供の者を引き連れて入ってきた王はそう言うと剣を抜いてひとふりでゴブリンキングのクビをはねた。そしてバランに聞いた。


「我が娘はどうだ、ものになりそうか?」

「はい、情熱に勝る才能はございません、きっと高位の剣士になるでしょう」

「そうか、では旅に出させよう。

それで死ぬならそれまでの才能と言うことだ。


娘が自分で思い付いて旅に出るように誘導してくれないか」


かたわらにいた摂政に命じた。


「はい、おおせのままに」


姫はメイド達にかつがれて運び出されて行った。王はその姿を見ながらバランに言った。


「娘はお前がいると頼ってしまう、誰か力の近い者を旅の友としてあてがってくれまいか」

「うってつけの者がおります、近日中に出会えるよう手はずを整えましょう」


摂政は姫の活躍を王国に広く知らしめると共に勲章を与えることにした。

そして賞金を武者修行の旅に必要な金か、あるいは家宝の剣を与えることにすると、姫は迷わず武者修行の旅を選んだ。


(いくら良い剣を持ってもそれを使う人が未熟ではしょうがない、一年ほどの旅をして自分を磨きあげよう)


「バラン、父は何も言わないが私をどう思っているのでしょう」

「私には分かりません、ですがこれでいいのではないでしょうか、心配なら籠に入れておくでしょうから」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ