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第8話 神様が決めた運命は変えられなかった

 朝日が昇り世界を照らし始めた頃、俺は山の中を走り回っていた。正確には、ある生物から逃げている。

「はあ、はあ、はあ、くっそ!」

 息を切らせながらも、木々を利用して逃げていたが開けた場所に出てしまった。大きな影が俺に重なると、更に大きくなっていき影の本体に踏まれてしまった。

 俺を捕まえたのは、赤い鱗を全身にまとったドラゴンで大きな顔を近づけてきて俺をペロペロと舐め始めた。

「わ、分かった、分かった、今日もお前の勝ちだから舐めるのは止めてくれよ」

 ドラゴンは舐めるのを止めて、俺を傷つけないように口を器用に使って起き上がらせてくれた。

「ありがとう、ルビー」

 嬉しそうに声を出したドラゴンを俺は、ルビーと呼んでいる。5年前、山の中で出会った赤ん坊のドラゴンが立派に成長して、今では俺を乗せて空を飛べるほどだ。ちょくちょく、一緒に遊んでいたら俺の事を覚えてくれたらしく、すっかり友達になったのだ。

「今日のタイムは、10分ですか。一応、今までで最長の逃げ切りタイムですが、まだまだですね」

「いやいやいや、アルファさん。ドラゴンから10分逃げられているだけでも凄く無いですか? 普通なら食べられてますよ?」

「そうですね、ルビーが相手だからこそ今のタイムが出せました。これが、他のドラゴンなら5分も持ちませんよ」

「酷いなぁ。少しは、褒めて伸ばそうとしてくれても良いんじゃないか?」

「少しでも褒めるとマスターは、調子に乗りますからね。上手く調整しているんですよ」

「そうですか。さて、そろそろ家に帰らないと朝食の時間だ。それじゃあ、ルビーまた来るよ」

 名残惜しそうにするルビーの顔を撫でて、アルファの転移で家に帰った。


「おかしい」

「何がですか?」

 朝食を食べ終えた俺は、部屋で例の説明書とにらめっこしながら頭を悩ませていた。この世界で15歳になった俺は、神様から貰った説明書に書かれている俺の姿とほぼ変わらない姿になっていた。

「この説明書を見る限り俺は運良く何処かの学園に入学する予定だが、そんな兆候は少しも無いんだよな」

「確かに、この本に記載されているマスターと思われる人物を解析してみましたが、マスターである確率は100%と出ました」

「いつの間にそんなことしてたんだよ」

「こうなると、マスターが努力したことによって運命を回避したことになりますが」

「まあ、それならそれで構わないけれど、少し拍子抜けでもあるな」

「今更ですが、マスターはどうして運命に抗おうとしたのですか?」

「あ、いや、実は、明確な理由は無くて、ただいきなりモブだと言われたのが腹が立っただけというか」

「むしろ、その気持ちでよくこれまで頑張って来れましたね」

「そうだなぁ、今になって思えば勇者になって魔王を倒したかった訳でも、チートスキル使って好き勝手したかった訳でも無いからな」

「マスターがそう思うのであれば、その本に書いてある未来をただ待っていても良かったかもしれませんね」

「う~~ん、いや、それは無いかな」

「何故ですか?」

「だって、あの日動いて無かったらアルファには恐らく出会えて無かったからな。この数年間修行は辛かったけど、アルファと一緒にいた時間は楽しかったから。あの時、動いておいて良かったと俺は思っているよ」

「マスターは、変わっていますね。ただの機械に会えて良かったなどと」

「ただの機械とか言うなよ、俺の大切な相棒なんだから」

「・・・私が人間であれば、感動して涙を流していたかもしれませんね」

「それ、マジで言ってる?」

「いえ、冗談です」

「何だ、冗談か~。ちょっと、残念。まあ、学園に入ることにならないなら、それはそれで良いかもな」

「お父様のように冒険者になられても良いかもしれませんね」

「おっ、確かにそれもありだな」

 学園に入学するのはまだ先で、そもそも入学することも無いかもしれないと勝手に考えた俺だったのだが、あの説明書に書かれていたことがそんな簡単に変えられる訳がないことを知る事になった。

「レイン、お前学校に興味あるか?」

「えっ?」



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