五月の再会 2/4
私たちの通っている高等学校は今年共学になったばかりであった。そのため私たちの学年にしか女子生徒はおらず、八割方が男子生徒である。また、今年から女子生徒を迎えるにあたって、新たな校舎が設営されたばかりでもあった。男子校雰囲気を一掃させるため、校舎の周りの花壇には様々な種類や色の花が植えられ華やかになったこの学校は、周辺地域の女子生徒からは大変評判が高く瞬く間に人気校の仲間入りを果たすことになる。現在、去年まで使用されていた校舎は、旧校舎として、一階部分が、運動部、二階部分が文学部の部室として第二の人生を歩んでいる。
私も美子も特に部活動には参加していなかったため、旧校舎に入ったことはなかった。なので、今回の旧校舎に入るきっかけに少しばかり心が躍った。それに、もしかしたらまたあの花時計の王子様と会えるかもしれない。私はそんな微かな期待もまた胸に抱いていた。だからなのか、いつもはどの授業も集中して勉学に勤しんでいるのだが、今日は違った。一日中授業には集中できず、上の空だった。
初めて足を踏み入れたこの旧校舎は、言葉では表せない冷たさを感じた。隣に設営された新校舎が旧校舎への陽の光を完璧に遮断しており、まだ昼過ぎなのにも関わらず薄暗かったからだ。また、教室のほとんどが部室として現在進行形で再利用されているのに、この暗い陰湿な空気のせいで、人の気配をほとんど感じさせることもなかった。
面白いことって何だろう、具体的なことが何も分からないまま美子と参加することに不安がないわけではなかった。だが、あの青年と会えるかもしれないという僅かな期待が私にここまでの行動力を与えたのだ。暗い靴箱をぬけると、4、5名の先輩方がなにやら手作りの紙を配っていた。
「あれ、君はこの前の保健室の子でない?」そのうちの一人の男性に声をかけられた。ふと顔を上げると保健室であった体格の良い先輩が、やはり人懐っこい笑みを浮かべていた。「初めて参加する?じゃあ、よかったら僕のチームのところにおいで、二階の一番奥の教室だから」そういって私に紙を渡して手で簡単に教室の案内をしてくれた。
私は他の先輩に声をかけられている美子を呼び、もう一枚紙を貰って二階へと進む。そしてひんやりとした廊下を進んでいるときに、美子にふと尋ねた。「集会という名の部活誘致なの?」
もらった紙には『美術部、部員大募集!女子もぜひ参加を!』と書かれていた。美子は眉間にしわを寄せ、首をひねっていた。