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見果てぬ大地  作者: えっちぴーMAX
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砂海での漁

 どこからが砂の海、エーリュシフォンなのかは近くにいけば一目でわかる。乾燥した細かい砂の粒子が風に吹かれて舞い上がり、そして風とともに砂の表面を駆け巡る。さらさらとした砂のパウダー、手に取ってみると驚くほど軽く、そして脆い。指でつまんでこすると煙となって消えてしまう。この広い海のどこかで吹いた風が砂の表面を駆け巡り、合わさって大きくなり、それはやがて波面となって広がり、最後には波となってどこかで消える。

ここはまさに、砂の海であった。


「日中はポイントに網を仕掛ける。夜は別の網を仕掛けてそこに獲物を追い込む。この2パターンが漁の方法だ。」


灼熱に輝く太陽の下、ドベルトは戦士たちに指示を飛ばしながらも、カズマとカミューラに説明しながら、網を砂面に投入する。船は常に風を受けて走っており、危険が付きまとう作業だ。

網の両端には旗のついた長い棒がついており、その先端には友の標”しるべ”と同じものがついていて、遠くからのおおよその位置を特定することができる。刻一刻”こくいっこく”と景色が変化する砂漠では網を仕掛けた位置もこれがなければ分からなくなってしまう。カズマとカミューラも大漁を願って網を砂に投入するのを手伝う。

 次のポイントに向かいながらも対空警戒は忘れない。これは危険なそらの魔獣を警戒するのもそうなのだが、それとは別に砂面に群れる小魚を狙って飛ぶ砂カモメを見つけるためでもある。砂カモメの飛ぶ砂面には小魚が群れで泳いでおり、それらを狙らう大型の魚も群がってくるのだ。

 ドベルトは、半日で一周できる距離に四つのポイントを設定し、周回する。仕掛けた網を取りまた沈めて、次のポイントに向かう。日中に2周する。最初に網を仕掛ける際はもちろん魚は獲れないが、次の時には魚が網に掛かっているはずだ。


地図の上に友の標”しるべ”をかざし、魔力を込めた。すると友の標から光が発せられ、その光は地図上に光点を写し出した。全部で5つの光点で青く光っている場所が現在位置である。


最初に仕掛けた網の付近までやってきた。ゼノスは甲板上で友の標を握り、魔力を込める。光点はすぐ近くを指していた。船をさらに近づけると、やがて網に取り付けた旗が砂面の波間に見えてくる。


ピッタリと仕掛けた網に寄せるのは難しい、経験で培った感を頼りに操船する。

戦士の一人が無事に旗を手繰り寄せ、最初の網を引き揚げる。

もちろん、カズマやカミューラも手伝う。

砂の抵抗がほとんどない網は、獲物が掛かっていれば重さですぐにわかると言う。


「掛かっているぞ。」


戦士の一人がみんなに聞こえるくらい大きな声量で声をあげた。


「そら、引き揚げろ。」


網の引き揚げた直後、数匹の魚の形をした獲物が網の間に挟まっているのを見つけた。

胸びれ、背びれ、尾びれ、エラぶた等、ほぼ水に住む魚にそっくりである。

ただ、違っていたのは目が無かったことだ。カズマは前世の記憶がある分、それが少し気味悪く思えた。


「本当に掛かってる。」


しかし、喜ぶカミューラを見ると、見た目の悪さも気にならなくなり、甲板上に揚がった網から獲物を取り外す作業を始めた。


「こりゃ、運がいい。夕日鯛が掛かっているぞ。」


カミューラが網から外した魚は夕日鯛”ゆうひだい”という縁起物の魚で、祝いごとに出される定番の魚であった。


「一番初めの獲物が夕日鯛とは、めでたいねぇ。」


ゼノスがニヤニヤと笑いながら、カミューラを褒めている。

対してカズマは、ゼノスを横目に見つつも、我関せず、黙々と魚を網から外す作業を行っていた。


水に住む魚と違って、砂に住む魚は陸でも呼吸可能であり、何も食わずに数日は生きていける。

ただその分、瘦せてしまい、味も落ちてしまう。逆に殺してしまうと腐敗が始まるので早く加工しなければならなくなる。魚を絞めるタイミングも難しいのだ。


「砂カモメが飛んでいるぞ。」

夕陽が水平線に沈みかけた頃、見張り番の戦士が声を上げた。


ドベルトは、見張り番の指差す方へ自らも視線を向けるとすぐに砂カモメを視認した。

砂の波間に複数の砂カモメが砂面付近に群がる魚をねらって、攻撃を仕掛けている。


「雷魔術を使っているじゃねえか。」


薄暗い空に飛ぶ、黒い鳥影”とりがげ”から小さな稲光が砂面へと数回、撃ち込まれた。


「雷呼鳥”コンコルド”でしょうか?」


カズマがゼノスに問いかける。


「いや、コンコルドはアッシュベルト大森林の固有種だ、ここにいるはずはない。それに思っている以上に小さいぞ。」


「ありゃ、雷鳴鳥”らいめいちょう”って言うんだよ。雷自体は初級クラスだから、そこまで脅威にならない。Cランクの魔獣だよ。ほら、聞こえてくるだろう、あの雷の音は雷鳴鳥の鳴き声なんだよ。」


ドベルトはそう言うと、素早く舵を切った。


「漁をしている最中に雷で狙われるのはたまらん、最初に片付けるぞ。」


「了解、こいクイルー”サンダーバード”。」


”バチン”ちょうど雷鳴鳥の飛ぶ、夕闇の空にひときわ輝く稲妻とともに、大きな鳥影が権限した。

霊圧が風を起こして、船の帆を大きく揺らす。


”キューィー、ヒョロロ~”


クイルーはひとたび甲高い声を上げると、雷鳴鳥が起こした雷電の数倍はある太い雷を発生させると、砂面を旋回していた岩カモメごとまとめて攻撃した。


2度目の落雷の後、空には一番星が遠く輝くのみで鳥影はなくなっていた。


「ありゃ、鳥肉は期待できないな。」


ドベルトの呟きに、ゼノスはすまなそうな顔をするのであった。
















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