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見果てぬ大地  作者: えっちぴーMAX
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ドラゴス村の朝

 ドラゴス村の朝は早い、とりわけ村長の一家となれば村一番の大家族であって、一人一人が大切な役割を持っている。特に勤勉なのはこの家の女性陣である。そしてだいたい最後に起きてくるのは、カズマかカミューラなのであった。


カズマが重い瞼を開けると、砂の中でもぞもぞと四肢を動かす。

昨夜は若干寒かったため、いつもより深くに体を沈めていた。最初は寝返りを打つ度に、口やら鼻の穴に砂が入り、むせて目覚めるなんて経験をしていたが、今ではもう慣れたものだ。

実際の眠り心地は悪くない。砂が体に合わせてフィットしてくれるし、砂の温かい熱がじんわりと体を温めて体中の疲れを取ってくれるのだ。


「あいたたたた…。」


最早、筋肉痛が常態化していくことに苦笑しながら、体を起こす。

すぐ隣にはカミューラが寝ていた。カミューラの規則正しい呼吸音が聞こえる。


まだ夜明け前の空だった。時計のない世界で未だ慣れないカズマは、夜中に何度か起きると周囲を観察してまだ寝ているようであれば、また寝なおすの繰り返しをしており、結果カミューラと村一番最後に起きるのを競い合っている状態だ。まあ、まだ子供なので誰からも文句を言われたことはないのだが・・・。


「子供は寝るのが仕事なのだ…。」


カズマは、ポツリと口にだして、自分に言い訳をすると、幸せそうにまだ寝ているカミューラを横目に自分の頭から足のつま先へ砂をはたき落とすのだった。


子供とはいえ、家の手伝いは行う、むしろこの世界では子供の労働力も貴重な戦力だ。転生前とは違って便利な機械はない。人力で賄うのが基本で、この村の朝の子供の仕事は水汲みと決まっていた。


カミューラと連れ立って、村の中心にあるこの辺りで一番大きい溶岩石”ようがんせき”の下にやってくる。二人とも両手に抱えるのは、4ℓ”リットル”は入りそうな壺である。溶岩石”ようがんせき”のてっぺんには、水の秘宝が設置されており、周囲の魔力を吸い取って、水を自然と流してくれているのだった。溶岩石の根元には、石垣に囲まれていて、半径5メートル程の池になっている。まるで、噴水のようであり、この村のシンボルのような場所である。しかし、流れ出る水量はチョロチョロと少なく、朝はどこの家族も使用するので、夜のうちに溜まっていた水も村一番の寝坊助二人がやってくればもう、水深が1センチ程になっていて、手ですくわなければならないほどになくなっていった。

手ですくって4ℓもある壺を十分に満たすためには何分かかるかわからない。


しかし、これもいつものことで、カズマは手を水の秘宝に向けると自分の魔力を操作し、秘宝に流し込む。

すると、勢い良く秘宝の周囲から水が溢れ出す。まるで噴水のようであった。丁度、日の出の頃だったので、オレンジ色の空に水飛沫”みずしぶき”が舞い、きれいなコントラストを描いていた。


砂漠の村にとって水の確保は重要である。村の朝が早いのは、朝一にこの水を確保するためであり、一度早起きして水場に来た時には、周囲は水を汲む人でひしめき合い、子供一人入る隙間もなかったものだ。

カミューラと二人して顔を青くしたことは鮮明に記憶に残っている。


その後、この方法を苦肉の策で編み出したのだが、村の唯一の生命線である水の秘宝に無理やり魔力を注いで水量を増やすという荒技を行った際には、壊してしまわないかと正直、心臓が止まる思いであった。


果たして、その心配は杞憂に終わり、秘宝に魔力を注いだ感覚は注げば注いだ分だけ水が吹き出し、正直底がしれないものであった。カズマはもしかして、水の攻撃魔術に使えるのではと疑念を抱いている程であった。兎にも角にも、貴重なアーティファクトには違いなく、攻撃魔術に達するであろう魔力を注いでみたいという誘惑に駆られながらも、カズマは丁寧に魔力を注ぐのであった。



「カズマ、毎朝ありがとな。」


「カズマちゃん、ありがとね。」


その結果、カズマが新たに水を作り出してから水を汲みに行こうとする人も増え、朝の混雑は解消されたのであった。

カズマにも少し得になったことは、こうして村人から声を掛けられ、早く村に馴染むことが出来たのであった。


水場から村長の家”テント”までは徒歩で10分弱の割と近い場所にあり、水場の周囲はその水を利用した貴重な畑地帯がある。年中を通して気候が変わらないここは、逆に年中を通して同じ作物を収穫することができる。肉中心の食事であるが野菜も摂ることができ、貴重なビタミン源になっている。


魔力で身体を強化して壺を運んだので、たいして疲れないまま、しかし、しっかりと目が覚めて家まで戻ってくると、カミューラの母、エミュル=ドラゴスが出迎えてくれた。


「カズマちゃん、いつもありがとね、壺はいつものところに置いておいてね。」


「はい、おば様。」


「いやね、そんな”おば様”なんて、むずがゆくなっちゃうわ。」


まだ、30代であるエミュルはこの村の出身ではなく、数年に一度この村に立ち寄るキャラバンと呼ばれる商人たちの娘であった。髪の色も黒色で肌もきれいな白色をしており、村では自分と同じ毛色の違うカズマに何かと気を使ってくれるのであった。


「ご飯できてるわよ、早く席につきなさい。」


「は~い。」


過酷な環境の地域であれば、ある程、戒律や規則が厳しいと言われている。

このドラゴス村も厳しい環境にあり、厳しい戒律があったものの、先代の村長であるドミニク=ドラゴスはそれを嫌い、古い実利を伴わない風習や戒律を無くしてきたそうだ。


しかし、今でも続いている風習が食事の席の配置である。


一番の上座に村長であり、戦士長のドベルトが座り、左手に元村長でカミューラの祖父であるドミニク、その隣にその奥さんであるエゾナ、その隣にはドベルトの兄弟である、カミューラの叔父、叔母家族、ドベルトの右手にはカミューラの母、エミュル、長男のサージ、次男のカシムが座り。その隣にカミューラ、ドミニクの対面に客人扱いであるカズマが座る。


ドミニクが食前の祈りを捧げた後、食事が始まる。

朝食のメニューはいつもと変わらず、昨日汲んだ水の余りを利用したスープに干し肉、村の畑で採れた根菜、ゴードンと呼ばれる山羊”やぎ”に似た生き物の乳と、トウモロコシのような植物の実を粉末にしてそれを固めて焼いたナンのようなものを食べる。


塩が貴重なものなので、どれも薄味であまり美味しくはないが、幸いに量はある。毎日お腹いっぱいに食べれるのだ。育ち盛りのカズマにとって食事の質は重要なのでこれは嬉しいことであった。


「今日は以前から決めていた通り、魚を獲りに行くぞ。」


付近に水場があるとしたら、毎朝通っている水の秘宝しか頭に思い浮かばなく、ドミニクの言葉に、カズマの頭にはクエッションマークが浮かぶのであった。



















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