戦いの後に
戦いの熱き血潮のさめぬままに、戦士たちは腰から大型のドルクワットナイフ(ドラゴス戦士たちが愛用している、先が僅かに沿っていて、皮をそぎやすくなっている解体用ナイフ)を抜き出すと、すかさず獲物”ルチル”に群がっていく。
肉は食用に、爪や牙、角は武器に、皮は防具や衣服に、内蔵は薬や魔術に、瞳は宝玉に、どれも余すところなく使われる。みなキビキビと動き、黙々と解体作業を行っている。早く下山しなければ、日が暮れてしまう。また、血の匂いに誘われて別の火竜に襲われるのを皆、恐れていた。彼らは解体作業を始めてすぐに気が付いたのだ。自分たちが相当に疲れていることに…。
戦士長ドベルトは、副戦士長のケルニスにこの場を任せると、皆の顔色を見渡して、体力のありそうな者を3名指名すると、ルチルとの戦いで火孔付近に落とされた仲間の捜索に向かった。
落下場所は、戦士たちのベルトに括り付けられている竜骨の魔道具、「友の標”しるべ”」により大体の位置は分かっているそうだ。竜種の耳の奥にある勾玉のような形の骨は、魔力を通すことで共鳴し、僅かに発光する。学者によると、竜種同士のコミュニケーションに使われているそうで、友の標を使った竜種との会話の研究も進んでいるそうだ。
カズマとカミューラは手伝えることもなく、座るのに丁度よさげな、表面が平な岩に腰をかけて、戦士たちの解体作業を見つつ、ドベルトから仰せつかった空への警戒を、真剣な眼差しで健気に行っていた。
「ねえねえ、さっきの見えてたわよね?」
「もしかして、精霊のこと?」
「そう、聖炎龍王”ファブニール“様のこと…。」
「カズマは精霊使いなんだ…。」
「そうだよ、この村では秘密にしなきゃいけないんだけれど、ないしょだよ?」
「なにか理由があるのね、わかったわ。でも、今度カズマの精霊を見せてよね?」
「カミューラのを見せてくれたらね。」
「カミュでいいよ。父様もカミュって呼ぶし、でも残念だけれど私は精霊使いじゃないんだよ。これはファブニール様とご先祖様の契約のおかげ、ドラゴス村の開拓者、ドラゴスはファブニール様と契約したの、血の契約ね。以来初代ドラゴス様の血族はみんな精霊を見ることができるのよ。」
「血の契約?」
「これ以上は、カズマが強くなってドラゴス村の戦士と認められるようになったら教えてあげる。」
「わかったよ、きっと立派な戦士になってやる。」
「ええ、きっとよ。」
その時のカミューラの笑顔は、カズマの脳裏に深く刻まれて今後、幾度もなく思い出すのであった。




