ハンター協会、素材買取所
「次は、さっそく魔獣の素材買取受付だな。とは言っても、同じ建物の中にあるが一度、外に出て別の入り口から入る。魔獣の死体はどれも捨てる物がないくらい、使える部位が多い。まあ、人が持ち帰れる量には限度があるから、金になる部位のみ持ち帰る者がほとんどだが、それでも馬車などを使って、そのままの死体を持ってくる者もいる。同時に解体も行うから血生臭い異臭がすごいんだ。」
ゼノスに案内されて、ハンター協会を出るとすぐさま裏手に回る。広い建物伝い(たてものづたい)に10分程歩くと、ようやく裏手に回ることができた。途中には植物や鉱物の素材買取窓口などもあってどこも人で賑わっていた。ゼノスの話によるとハンター協会の中には、食堂、訓練場、医療室、雑貨屋、武具屋や宿泊所、大浴場も備えており、近場の依頼については全て、ハンター協会の中で道具やら食料やらの準備がそろうそうだ。ちなみに24時間、開いていてハンター以外の人も利用できる総合施設になっている。どおりでハンターは少ないはずなのに、人が多くて賑わっている訳である。
裏手の大部分は解体場で、奥は鍛冶場となっていた。解体場は建物の中だけでは納まり切れず、大きな作業台が20以上外に設置されていて、各作業台には木製の屋根がついていた。よく見ると解体されているのは魔獣だけではなく、鶏、豚や牛(この世界での)のような家畜も解体されていた。解体所のすみには檻が設置されており、生きたままの魔獣もいる。血生臭い匂いと鍛冶場の薪が燃える匂い、金属を叩く音、家畜や魔獣の鳴き声、作業場の人の声が溢れており、市場のような活気で溢れていた。
解体場を横目に見ながら、建物の奥の素材買取カウンターに行く。
「カズマ、上を見てみろ。」
ゼノスが人差し指を立てて、天井を指差した。
「すごい。これがドラゴンか…。」
そこには、翼を広げて飛ぶ、ドラゴンの骨格があった。体長50メートルはある翼竜である。
「こいつはヘカテー(エルフの里)を襲ってハンターに討伐された黒炎王竜アルバトロンの骨格模型だ。数百年前にこの場で解体されたそうだ。」
"これがドラゴンか…。"
全てを切り裂きそうな剣のような爪、巨大な矢じりのような牙、大型の魔獣の骨も難なく嚙み砕けそう
な頑丈なあご、各関節には大小様々な形の角、尻尾には太く巨大な鎌のような骨がついていた。眼窩が四つあることから四つ目だったのだろう。
カズマは立派な骨格から、生きた竜を想像する。ヘカテーはとてつもない災厄に見舞われたことだろう。人間に頼る程に…。
「素材を売りに来た。」
ゼノスがカウンターで受付している、犬系獣人に話し掛けると、すぐさま素材買取長を呼んで来た。
ゼノスを見るとこちらの制止を振り切って、長を呼んでくる協会職員を待ちながら申し訳なく思っていたが、VIPであるゼノスの対応となれば仕方のないことだろう。いつもの貴族である自分の姿をゼノスに置き換えながら横から見ていると周りからはこんな目で見ていたのかとカズマは思った。
「仕事中に悪いな。」
「いやなに、これも仕事さ、アダマンタイト級のハンターは、協会での最重要人物だ。それに個人的にも城の生活とか聞きたかったしな。」
「おっと、こは失礼を、カズマ殿下ですね。」
「はい、本日からハンターの一員となりました。よろしくお願いします。」
「伯爵家の一族をハンターに? 大丈夫なのかゼノス?」
後から聞いた話、素材買取長は竜人族で、見た目は普通の人間にしか見えない。まあ、やや目つきは肉食獣のように鋭かったけれど…。
「大丈夫だ。」
ゼノスが自分を納得させるようにゆっくり、大きく頷くと、素材買取長はそうかと短く呟いた。
「私はギュレム=ハジキと申します。ベルシュタイン支部、素材買取長をしております。今回のご利用はどのようなものでしょう?」
カズマは背負い袋から予め用意していた、解体済みの素材をカウンターに敷かれた上質な布の上に広げた。
するとギュレムの目が魔力を帯びて、鑑定の魔術を使っているらしいことがカズマには分かった。
「Bランク紅牙大熊の牙と爪、毛皮と、珍しいAランク雷呼鳥の嘴と爪、風切り羽に尾羽…。合わせてこちらの金額になります。ご納得頂けたら、この皮用紙にサインをお願いします。」
ギュレムは鑑定中に記入した皮用紙を差し出した。内容は各部位の個数に1つあたりの買取価格が記入されている。
合計は大金硬貨1枚、金硬貨8枚、大銀硬貨3枚、大銅硬貨2枚であった。(一千八百三二千円相当)
貨幣の内容については、鉄硬貨(1円)大鉄硬貨(10円)、銅硬貨(100円)、大銅硬貨(1000円)、銀硬貨(10000円)、大銀硬貨(十万円)、金硬貨(百万円)、大金硬貨(一千万円)である。
あまりの金額の多さにカズマは顔を引きつらせて、びっくりする。
「まあ、妥当だな。」
頷くゼノスを見ながら貴族である自分より、ハンターの方が金銭感覚が庶民からかけ離れているのではないかと一瞬、疑問に思った。




