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見果てぬ大地  作者: えっちぴーMAX
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分岐点(2)

「アリス、モーラは見かけなかったか?」


空いた食器を片付けていたアリスが目に止まり、カズマは話かけた。


「そうですね、確かブラム様と一緒に部屋に戻ったと思いますよ。彼女、やっぱり人付き合いが苦手なのね、ブラム様には少し心を許しているみたいだけれど、メイドとしてやっていくのはまだ先のことになりそうね。」


「ああ、そうかもしれない、けど、少しでも早くみんなに打ち解ける手伝いはできるんじゃないかな、僕らにも。」


「そうでしたね、カズマ様は昔から、困っている人を見捨てられない人でしたね。いいでしょう、このお姉さんメイド、アリスも協力して差し上げます。」


「お姉さんメイドって…。歳は今幾つ? 確か母様と2歳くらいしか…。」


「カズマ様、私はお呼びじゃないみたいですね…。」


「いや、その…。やっぱりアリスお姉様は、頼りなりますね。」


「フフフフッ…。私にドーンと任せてください。」


確かに、両手、両腕に数枚もの皿を積み上げて素早く会場の空いた皿を片付けている姿は、じつに頼りがいになりそうである。


ちなみに、今ドーンとアリスを押したら酷いことになりそうだ。とか益体のない考えがカズマの頭にふと浮かんだ。


「アリス、それを片付けたら、モーラの部屋に案内してもらえる?」


「わかりました、少々お待ちください。」


アリスはくるりと背を向けると、調理室に入っていった。




城の中は長い間隔でロウソクがともっており、とても薄暗い。おかげで、暗闇の中をランプを持ちながら、進まなくてすんでいるが、カズマは夜に廊下を歩くのは少し、苦手であった。


築数百年もの、古城だからな、人はたくさん住んでいるけど、この雰囲気が苦手なんだよね。

石作りの壁に時折見かける黒い染みのようなものが、余計にカズマを不安がらせた。


"こんな暗いところで、一人か…。"


暗い部屋でぽつんとベッドに座る、少女を想像してカズマは自らを奮い立たせた。


"こんな程度でびびっているんじゃない。"


「ここが、モーラの部屋です。」


アリスに連れてこられた部屋は案の定、エレノアの部屋の、一つ下の階に位置するものであった。




村が燃えていた…。炎は全てを焼き尽くし、空へと還っていく…。家も、家畜も、作物も…。人も、魔物も…。


全てはあの日から始まった、あの夜、日が沈んだはずの空が明るくなった。遠くから雷鳴が鳴り響き、それは夜通し続いた。


次の日から森の様子が急に変わっていた。やがて、狩人かりうどが村に戻らなくなり、森から動物がいなくなった。近所で仲良しだったレオナが薬草取りに森へ向かって、戻らなくなった。

村の大人もざわめき始めた。



子供たちの間で安全な遊び場だった森が、その日から怖い魔の森に変わった。


やがて、村の家畜が魔物に襲われるようになり、あの日がやってきた。


ゴブリンとオーガと呼ばれる人型の魔物が数百もの大軍となって村に襲い掛かってきた。とてもじゃないが、勝ち目はなかった。


やつらは、血が染み付いた剣や槍を持ち、圧倒的な暴力の波となって村を襲った。



「みんな、すぐに起きて逃げるんだ。」


深い眠りの中、急に父に起こされた家族はまだ、状況についていけず、混乱していた。


遠くから、獲物を前にした雄叫びと、反撃するための怒号、湧き上がる悲鳴…。


徐々に、至る所から悲鳴が聞こえ、知りたくもない、絶望的な状況が分かってしまった。


「いいか、何があっても村から出て、南の城門に向かうんだ。あそこなら城門を守る騎士団がいる。」


村の戦士だった父は戦闘を終えて家に戻ってきたのだ。父の鎧に血が大量に付着しているのに気が付いた。



父は剣を持って先頭を進み、幼い妹は母が抱いて、私も必死に後を走る。


幼い4歳の妹は、村の異変に恐怖し、泣き続けた。


熱気と煙と恐怖で涙がとめどなく流れた。


何匹かのゴブリンが父の行く手を阻んだが、その全てを父は切り伏せて突き進んだ。


村の門が見えてきた。しかし、門はすでに破られていた。


"あそこから侵入してきたんだ。"


あと少しで村の外に出られる。そう思ったのも束の間、そこには絶望が待っていた。



獲物を待ちわびている。数百もの瞳、下種な笑い声。


そこには、ゴブリンの他にもオーガが数十匹待ち構えていた。



視線の先には、これから自分たちも同じ末路を辿るであろう、仲間の死体が横たわっていた。



カチカチと歯が鳴った。



「すまない、これから何としても道を切り開く、後は任せた。アンナ、ミーナ、モーラ」




そこから先の記憶は曖昧であまり覚えていない。ただ、気が付くと一人、城壁にたどり着いていた。



モーラは、暗い灯りのない部屋から見える、星の輝く夜空を見て、あの日のことを思い出していた。
















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