精霊と魔獣
今宵の宴会は、今年一番の豪勢なものとなった。まだ冬の始まりで、蓄えを考えれば、あまり大々的にとは行かなかったが、領都の主要メンバー及び、ベルシュタイン家の家臣のみの身内しか招待していない宴会なので、多少のお目こぼしはあるというものだ。
「ゼノスさんはハンターをしているのですか?」
「そうですよ、カズマ様。ところで、ハンターとはどのようなものかご存知でして?」
ゼノスの片側の皿には、大量のステーキ肉が盛られ、ちょっとしたタワーになっていた。
なんでも食うのも仕事の内と言って、テーブルの片っ端の料理を堪能し、現在はお気に入りのステーキに戻ってきたところだ、タイミングを伺っていたカズマは、この期を逃さず話かけた。
「恥ずかしながら、噂程度しか、人伝えでしたので正確には知りません。」
「では、そこからですな、ハンターとは、ハンター協会に登録している魔物を専門に退治する戦士のことです。力量及び依頼達成度からアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、ミスリル、アダマンタイトと呼ばれる級に分かれており、その級によって依頼される魔物が違います。ご存知の通り、魔物はF、E、D、C、B、A、S(天災級)、SS(伝説級)、SSS級(神話級)に分かれており、FとEはアイアン、EとDはブロンズ、DとCはシルバー、CとBはゴールド、BとAはミスリル、AとS以降はアダマンタイトと受けられる依頼が変わってきます。ちなみに私はアダマンタイト級です。」
「ハンターはみな、精霊使いなのですか?」
「一概にそうだとは言えないな。まあ、在籍しているハンターのほとんどが精霊使いには変わりないが、必ずしも精霊使いでないとハンターになれないわけではない。要は、魔物を狩ることができる力があれば、ハンターにはなれる。まあ、今ではハンターは国の顔、国の戦争には手を貸さないが、国を跨いで、魔物を狩る。ただ、力があれば良い訳ではない。」
「話はそれたが、概ねみな、精霊使いだ。君と同じにね。」
話しながらも、ゼノスは食べることを止めずに話す。普段から慣れているのか、絶妙に言葉を発して、口の中身はみえないし、中身を飛ばずこともない。
「ゼノスさんの精霊とはどのように?」
「出会いですか? 家の里には、祠がありまして、そこに祀られていたんですよ。ある時、里が魔物に
襲われて、里を守るために逃げた祠にいた精霊と契約したという訳です。」
「契約ですか?」
「ええ、代償というやつですね、人智を超える圧倒的な力、これと引き換えに何かを精霊に捧げなければならない。昔は生贄とかもあったとか…。」
「それはどうゆう…。」
「ハンターに代償を聞くのはマナー違反ですよ。代償はそのまま弱点になりえますからね。」
「そうですか、でも僕はリュミエールには代償を支払っていないと思うけれど…。」
「それは、リュミエールに奇跡を願っていないからでは?」
「そうかもしれないですね。確かに僕はまだ、リュミエールの力を貸してくれるように頼んだことはありません。いずれ、リュミエールと生きていくには、その代償が必要になるのですね。」
「きっとそうなるでしょうな、精霊とは魔物を呼び寄せるものですから…。精霊は魔物の天敵、魔物を狩ることを宿命づけられているように私は感じています。私の里ではこんな言い伝えがあるのですよ。」
「精霊とは、神が異世界からやってくる際に体から別れた思念体である。肉体から別れた精神は、残虐性とそれ以外の精神のいずれかで、肉体にとどまった方が残虐性であれば、天災級以上の魔物に、それ以外の精神であれば、世界を守る聖獣になる。そして別れた精神はいづれも精霊になる。残虐性の精神であれば悪霊に、それ以外の精神は精霊とよばれ、神と崇められる。肉体と精神は呼び寄せ会い、やがて一つに戻り異世界へ還ると伝えられている。」
「実に興味深い話しですね。もし、その話が本当であれば、クイルーの肉体を持った魔物がこの世界のどこかにいるということですね。」
「もし本当ならね、でもクイルーは遥か昔から存在する精霊、もしかすると肉体の方の魔獣は既に討伐されてしまっているかもね。」
「もしそうなら、悲しいですね、クイルーは元の世界に還りたいのではないでしょうか?」
「そいつはどうだろうね、こいつはあまり喋らないから」
「えっ? 精霊って喋るんですか?」
「力のある精霊は言葉を話すよ。リュミエールも力をつければ、いつか神としての力を開放し、喋るようになるさ。」
カズマは、瞳を輝かせて、いつか自分と会話するリュミエールを思い浮かべた。
さっきカズマが自分自身で指摘したとおり、その話が事実であれば、肉体を持ったリュミエールと同じ姿の魔獣が存在するということに気付かずに…。




