猫耳
カズマはゼノスがリュミエールを視認していることに驚きを隠せないでいた。
「見えるのですか?」
「ああ、いかにも見えているとも、そうだな、今晩にでもその龍のことを聞かせてくれないかい?」
「ええ、もちろんいいですが、なぜあなたは見えるのに、他の人には見えないのでしょうか?」
「それはな、もちろん俺も精霊使いだからさ」
"バサリ"
カズマの瞳に大きな翼が映った。 丁度、逆光になっていて鳥の顔まで見えなかったが、大型の猛禽類のような鳥だったように見えた。それは、ゼノスの背中から翼を大きく広げた。
「クイルー、こいつの名前だ、サンダーバードの一種だよ。君の龍の名前は?」
「リュミエール、種族はわかりません。」
確かに、ゼノスの影と一緒に巨大な翼の影が地面に写し出され、その証拠に日差しが遮られたのをカズマは見た。
自分以外の精霊使いをカズマは尊敬する眼差しで見つめた。
最後に、なかなか馬車から出て来なく、ブラムに手を引かれて降りてきたのは、紺色のワンピースを着た少女だった。ただ頭から猫の耳と服の裾から猫のしつぽが出ているだけの…。
カズマは目を丸くして、思考を停止させてしまった。
普段は実年齢にそぐわない落ち着いた雰囲気を持っている息子であり、今回も相手のリードを取ってくれると期待していたのだが、逆に固まっている姿を見て、
"年相応の姿を見せることもあるのだな。"
"そういえば、同じ年頃の異性の友達は初めてであったな"
ブラムは微笑ましく、カズマを見つめた。
「モーラ、みなに挨拶しなさい。」
言ってるそばで、ブラムの背中に隠れようとするモーラを見て、少しブラムは残念に思った。
”やはり、モーラを屋敷に連れてきたのは間違いであったか…。”
「その猫耳、可愛いね」
「あう」
反射的にひしと両手で耳を抑える。
「ベルシュタイン家の三男、カズマです。よろしくね、モーラちゃん。」
「よ、よろしくお願いします。」
周囲の音にかき消されそうなくらい小さな声で、モーラはカズマに挨拶した。
「ベルシュタイン家の次女、エレノアです。はじめまして、モーラの歳は幾つなの?」
「10歳です…。」
それ以上、会話が続かないようであったので、ブラムは先に要件を伝えることにした。
「モーラは、先にあった魔獣の被害で、故郷と家族を失った。これから彼女をメイドとして城で雇おうと思う。みんな、よろしくしてやってくれ」
「アリス、はじめは大変苦労するだろうが、彼女の面倒を見てやってくれ」
この日から新しいメイド見習いと精霊使いが城に住むことになった。




