畏れながらも、奴隷でございます 14
「言葉が通じない?」
「そのとおりです。これでは診察ができず、ターリャが苦労しているのです」
どうやらあやめと同じように、国外からやってきた女性が一人、具合を悪くしているという。彼女の容態を診ようとしても、言葉が通じず、一向に手が出せないらしい。
「この国の医療は、世界に比べてかなり遅れている。一刻も早く、国外へ出してやりたいが、いつどこで、体のどこを悪くしたのか。その程度のことは把握して、向こう方にも伝えなきゃならない。医者として、暗黙の了解だ」
「我々ではラビヤ語以外が使えませんし、国外から来たあなたを頼る他にないのです。協力してもらえませんか?」
「承知いたしました」
首飾りに触れながら、サラ様が首を傾げる。それを見たあやめは、胸に手を当てて、恭しく一礼した。
「見た目は黒髪黒目、白い肌。髪はまっすぐ、毛先がやや内巻き。背は⋯あやめより少し低いが、ライヤよりは高い」
「主な外傷は?」
「服の外から目視できる限りでは見当たらない。食べ物も一通り手を付けるが、口に合わないのか食欲がないのか、あまり量は食べないな」
「水は飲めていますか?睡眠障害などは」
「脱水の症状は見られないが、あまり飲んでいないな。睡眠障害についても、見たところは無いようだね。時折魘されているとの報告もあるが」
見たところは女性であるらしいが、念のためサラ様も同行することになり、3人で病室に足を運んだ。
「ここに彼女――見た目から仮にも彼女と呼んでいるが、とにかく患者がいる」
重たい扉が開かれる。その奥の白い寝台の上で、白い服に黒い髪の人物がこちらを振り返った。