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鍵穴の人間  作者: 蒼蕣
追憶の星
67/83

みなさん、こんにちは。こんな事態になってしまって、家で退屈していることだと思います。そんな中でこの作品を読んで少しでも暇を潰してもらえれば嬉しいです。

ちなみにもう少しでこの『鍵穴の人間』は完結するのですが、この前述べた通り、もう一作品ストックで用意してありますので、この作品が終わり次第続けてもうひと作品投稿しようと思います。

先に物語のタイトルとテーマを発表します。タイトルは『シンギュラリティ』です。よくわからない方のために簡単に説明しますと、AIが原動力となって構成されるのことです。つまり、人間が不必要、またはAIにこき使われる社会という意味です。テーマとしては人間の貪欲さを考えて作りました。興味のある方は是非そちらの方もお楽しみに。

これからもよろしくお願いします。

「というわけです」

「そうか、彼らが今度はファントムのところへ…おそらくですがもう既に彼が我々の一員だとわかってるんじゃないんですか」

「…」

「ま、彼は変装の天才だ。昔から彼らの身近な場所にいて、私に情報をくれるからね。敵が何人でどんな能力を持っているとかはすべて彼が教えてくれたんだよ」

「そうなんですか?」

「ああ、彼は京都の例の病院にいた医師の一人だったし、さっきホワイトとダークと戦った後の戦況を教えてくれた時はその現場の大家さんに化けてたようだしね。あ、もちろん君もすごいよ。君の力で人目を気にせず戦闘に専念できるし、君からもいろいろと情報をもらったからね。ほら、日向悟が死んだあとも、柊明日香と鬼庭真斗が引き続き行動を共にしてるってことを知ったのは君のおかげだ」

「でも私、潜入は得意じゃないんです。私はどちらかというと戦闘向きなので」

シャドウは何かを訴えようとするような目でワールドを見つめた。

「じゃあ、君も戦闘に参加してきていいよ。君は頭もいいし、強さもお墨付きだ。私も安心できるよ」

「ワールド様の命であれば、必ず何か成果を上げてきたいと思っています」

「ああ、頼むよ。私もそろそろ終わりにしたんでね、こんな戦いは」

「では、私にもAIを利用する許可していただけませんか」

「ああ、いいぞ。だがまだ完全修復はできていないぞ」

「大丈夫です。他のを使いますので」

そう言って部屋を出ようとしたその時、

「あ、そうだ。どうせなら一人の首ぐらい刈ってきましょうか? フフッ」

「全く、頼もしい限りだな。うちの才女は」

シャドウが静かに部屋の扉を閉めるとワールドが椅子の背もたれに寄り掛かった。

「あら、あなたは違いますの? ワールド様」

「ハハッ。私は狂女だからね」


「おーい。こっちだぞー」

「ったく。私達は仕事探すんじゃなかったの?」

「まあ、少しぐらいいいじゃないデスか。こっちもなかなか見つからなくて暇デシタし」

「でもよ。このバカ暑い中こんな距離歩かなくてもいいんじゃねえの?」

「ま、それはお金の節約ってことで勘弁しろって事だろ」

「すいません、皆さん。先輩のわがままに付き合ってもらって」

「本当よ。今日は久しぶりの非番だったのに」

慎吾達の前を犬のように駆け回っていた海が後ろを振り向き、手を振ってきた。

「あ、あそこのようですね」

「ちゃんとクーラー効いてるんだろうな」

「こんちくわー、おっさんいる?」

「いらっしゃいませ、えーとどちら様でしょうか?」

「え、覚えてないの? このイケメン顔」

「えーすいません。あなたのような方はそうたくさんいらっしゃらないと思いますが、ちょっと近頃記憶が曖昧でして」

「あ、僕達二年ほど前に僕達ともう一人、女の人と一緒に訪れたものなんですけど」

「すいませんが、お名前をお伺いしてもよろしいですかな?」

「はい。彼は大沢海で自分は萩野慎吾。それと二年前来てた女性は柊明日香です」

過去の館の店主は何か閃いたように薄く開いていた目を見開いた。

「ああ、あのお嬢さんですね。覚えていますよ。なんせその子の過去が随分面白かったもので、たっぷり堪能させていただきましたからね。あ、いやこんな言い方するとなんか変態のように思われちゃいますね」

「で、今日は残りの友達の分も見てもらおっかなって思ったんですよ。いいですよね?」

「ええ、もちろんです。どうぞ皆様お上がりください」

熊谷誠司(くまがやせいじ)は二年前の時より広い待合室らしき場所に慎吾達を通した。

「えー改めまして過去の館へようこそ。お友達から聞いたと思いますが一応私からもご説明させていただきます。まず、ここは皆さんの最高に幸せな過去を蘇らせる場所です。私があなた達の心の中を読み、過去一番幸せだった瞬間をカメラに撮って写真に収めるというものです。その写真は気に入りましたらお買い上げいただけますし、気に入らなければこの館に無償で寄付するという形になります。ではここでお待ちくださいまして、私が準備できましたらまたこちらへ来るので、一人ずつ私についてきてください」

「はーい」

「では、少々お待ちください。あ、その間にこの館中にある写真を見ていただいても構いませんよ。ただし、そちらの奥の部屋には入らないようにお願いします。それとお飲み物をお持ちしますが何がよろしいですか?」

「え、何でもあるの?」

「はい。それ相応の物は取り揃えてあります」

「じゃあ俺アイスコーヒー。もう暑くってしゃあねえんだよ」

「私はリンゴジュース」

「ボクは烏龍茶を」

「俺はラムネがいいかな」

「僕は冷たい紅茶をお願いします」

「じゃあ、俺はやっぱり冷たいビー…」

「あ、先輩にはスポーツドリンクをお願いします」

「はあ? 俺はビールが飲みたいの! スポーツドリンクなんて子供の飲み物だ。男はやっぱりアルコールだろ」

「昼からビールは体に良くありません。しかも先輩はまだ未成年です。それに引き換えスポーツドリンクは栄養とビタミン補給ができ、熱中症になりづらいんですよ」

「なんだよ。今度は俺の主治医気取りかよ」

熊谷はクスッと笑ってゆっくりとその場を立ち去った。

それを見届けた淳平は席を立ち、そこら中の壁にかけてある写真一つ一つを見渡し始めた。

「おい、見ろよ。これ、いつの頃だと思う?」

突然南が一枚の写真を指さして隣にいるマークスに話しかけた。それは焼け焦げた野原の中で男女が喜び合っている写真だった。

「さあ、戦争の時ではないんデスか? 服装がなんかそんな感じがしマス」

「あのおっさんいくら見積もってもせいぜい五十過ぎだろ。一体いつの戦争だ? それに何で戦争中にこんなに笑ってるんだよ?」

「それは戦争が終わった後に息子が死なずに帰ってきたとかじゃないんデスか?」

「お、こっちは病院だな。たぶん息子の意識がやっと戻ったとかか」

「ねえ、それにしてもこれどうやって写してるのかしら。いくら人の過去が読めたとしても写真に収めることなんてできるのかしら」

「そう、そこがおかしいんですよ。だから、もしあの熊谷さんも何かの能力を持ってるんじゃないかと思って確かめに来たんです。もしかしたら明日香さんの事知ったら仲間になってくれるかもしれませんしね」

「でも、もしかしたらもう既に敵と交渉済みだったりして」

淳平がニヤニヤしながら辺りを見渡した。

「一応監視カメラらしき物もついてるし、もしかしたら俺達を監視して、ワールドとかいう奴に報告してるかもな」

「でしたらここに長居するのは危険じゃありマセンか。ここは言ってみれば敵の巣の中、何をしてくるかわからないんデスから」

「ええ、ですから皆さんにも細心の注意を払っていただきたいんです。ここから先、恐らくですが熊谷さんに呼ばれると一人で行動することになります。先輩によるとある部屋に案内されます。そこで目隠しをされ、無防備な状態で心を読まれるので少々危険ですが、二年前に訪れた時は何もなかったので大丈夫だと思いますが…」

「おいおい、なんかストーカーみたいで怖いな」

「でもそんな中で何の不安もなく、楽しんでる馬鹿が一人、いるんだけど」

林檎は待合室の奥で子供のようにはしゃいでいる海を横目で見た。

「ええ、先輩は人を疑うということを知らないのですごく心配ですが、まあ何かやられれば流石に抵抗ぐらいするでしょう」

「おーい、見ろこの部屋面白そうだぞ。暗くて広くてお化け屋敷みたいだな」

海が待合室の奥にある閉ざされた部屋を指さした。

引きつられるように全員が部屋に向かって歩み始めた。

「お待たせしました」

「まるで間を図ったように熊谷がもう一つの部屋から顔を出した。

全員が足を止め、彼のほうを見た。

「お飲み物はここに置いとくので、ご自由にお取りください。ささ、最初の方どうぞこちらへ」

熊谷は持っていたグラスを乗せていたトレーごと近くのテーブル置くと、出てきた部屋の扉の前で右手を横に広げた。

「じゃあ、俺が行くよ」

南が熊谷の方を向き、部屋に入っていった。

「ではほかの皆様は引き続きこちらでお待ちください」

熊谷と南が去った後、淳平、林檎、マークス、慎吾は互いを見て頷いた。

「ここに何かあるとみて間違いなさそうデスね」

マークスが天井高くまで伸びた西洋風の装飾が施された茶色い大きな扉を開き、中に入った。

その部屋は薄暗く、慎吾達が待っていた待合室より一回り小さい、円形型の部屋であった。部屋の中央には太い柱が部屋全体を支えており、その周りにガラスのショーケースが囲むように並べられており、その向かいの壁側にはすべて白黒の絵が天井高くに吊るされていた。電気をつけてみると、その壁には写真のほかに仮面やナイフ、手紙なども吊るされていた。ショーケースの方を見ると中には電車の模型やミニカー、拳銃などが並べられていた。

「何だ、ここ。絵も見えないし、展示品も共通点がなさそうだが…」

「確かに、ほかの部屋とは違う雰囲気を放っていマスね」

「名札も何もない。彼のコレクションとか?」

「だがよ、ここにある物全部偽物っぽいぞ」

「写真がすべて天井高くに吊るされてるのも気になりますね」

「じゃあ、ボクが取ってきまショウか? 足を強化すれば高く飛べますから」

「いや、ここは僕の小鳥達を使いましょう」

「何でだよ、俺の風が一番簡単だろ!」

「全く、何で男って譲り合うっていうことをしないのかしら。ほら、じゃあじゃんけんで決めれば?」

「仕方がねえな」

「ま、一番フェアなやり方デスね」

「では、行きますよ」

慎吾、海、マークスがリズムよく右手を縦に振った。

「最初はグー、じゃんけん…」

「待った!」

慎吾と海がチョキ、マークスがグーを右手に示しながら三人は淳平の方を見た。

「あいつが帰って来たぞ!」

「やべぇ、急いで出るぞ!」

「ちょっと早すぎませんか?」

五人は部屋の出入口を一直線に駆け抜け、最後に出てきたマークスがバタンと扉を閉めた。

「ガチャ」

それとほぼ同時に熊谷と南がいた方のドアが開いた。

「お待たせいたしました、写真は皆さんが終わってからまとめてお渡しますので」

「お、じゃあ次俺!」

熊谷は扉の前でお辞儀をすると、お次の方どうぞというような目で待合室にいた五人に合図を送った。南が部屋から出たと同時に平然を装った海がニコニコした顔で熊谷が開けている扉の向こうへと入っていった。

「何もされなかったみたいだな」

「ああ、それであの部屋何だった?」

「なんか拳銃とかナイフとかミニカーみたいのが壁に吊るされてたり、ショーケースの中に入ってた」

「何だそれ?」

「それで天井高くの壁に写真がいっぱい飾ってあったから、今見ようとしてたところだ」

南は意味不明というような顔で四人に案内された部屋に入った。

「確かに妙な部屋だな。美術品にしてもすべてレプリカのようだし、写真にしてもあの高さじゃ見えねえな。あの写真、気になるな。よ!」

南は素早く壁を螺旋状に駆け上がり、写真を数枚手に取り、その場から飛び降りた。

「おい見ろよ、この写真」

そういって唖然とした表情をマークスと慎吾が見せた。

彼らは気になって南の周りを囲むように写真を覗き込んだ。それはこの館にあった他の写真とは正反対の人間の表情を写していた。ある写真は全身血だらけでぐったりしている男の子を泣きながら抱きしめている女性の写真。ある写真は男性に力一杯お腹を蹴られ、痛みを必死にこらえ、苦しんでいる女性の写真。またある写真は顔をニット帽とマスクとサングラスで隠した男に胸を拳銃で撃たれ、恐怖で怯えている男性の写真。どれもこれもこの館のあちらこちらの写真の中のあの幸せそうな、楽しそうな表情とは似ても似つかないような光景だった。

「これは…まさか苦しみの写真デスか? 最高の幸せとは正反対の人間達の忘れることのできない悲しい出来事を写した写真ではありマセンか」

「ってことはあのショーケースとかに入ってるやつはその出来事が起こった原因の物か」

「これであいつが何らかの能力を持ってることが分かったな」

「ねえ、ちょっとこれ」

南が取ってきた最後の一枚を見た瞬間、五人の目つきが変わった。

それは少女がトラックに引かれたと思わしき青年を前にして、泣き崩れている写真であった。

「これは、明日香さん…それにこの倒れている青年は恐らく…」

「俺の弟だな」

「鬼庭サンもいマスね」

「それにこの後ろの方に写っているボールを持った奴、こいつは箕輪健太だろ」

「ああ、それにこのトラックの運転手は、あの金子守だ」

「ねえ見て。明日香さんの奥に見える歩道からこっちを見てる二人の男って…」

「ええ、デスと熊谷サンでまず間違いないでショウ」

五人は互いを見合いあった。

「これで確定だな」

「偶然としては、まずありえないわね」

「ああ、あいつは既にディアブロ軍の幹部なんだ。ほら、シャドウとかいう奴として…」

「ありえますね。だとするとこれ以上ここでのんびりしている暇はありません。急いで先輩を助け出して、彼を捉えましょう」

五人が意を決して部屋の出入り口に向かおうとしたその時、五人全員の目の前に誰かいるのを発見した。

「これは…私の見解通り、ここは敵の巣でまず間違いないでショウ」

「ああ、見つかっちゃったみたいね…」

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