幻滅の空
「ここは?」
そこはどこかで見たことのある景色だった。あたり一面は黒で統一され、私の周りに立っている枯れ木だけが白く光っていた。
私は脳の奥底に眠る記憶を取り戻そうとしたが、激しい頭痛に見舞われ、思わずその場に跪いた。
「やあ、明日香。久しぶりだね」
「明日香ちゃん、元気してる?」
どこかで聞いた声…あなた達は誰? ここはどこ?
「僕達は君の家族だよ」
「何言ってるの? 私の家族はもう真斗だけしか」
「本当にそうなの? 明日香が叶えようとしている夢を手助けしている人達は言ってみれば家族同然じゃない?」
「大沢海君、萩野慎吾君、アーサー・マークス君、丸岡淳平君、霧島林檎ちゃん、それと僕の兄も。全員明日香の家族だ」
「もう君は一人ぼっちじゃない。みんなが君の希望に気付き始めている。君にはもう寂しさなんてものはない。この八年間一人ぼっちにさせてごめんね。でも、もう大丈夫。僕達がついているから」
「何言ってるかわからないよ? あなた達は誰、誰なの?」
「もうすぐわかる時が来るさ。すべてが終われば」
「君の未来は君以外の誰も決められない。君が生きたいと願えば生きれるし、もう世界に絶望して死にたいと思えばいつでも死ねる」
「もう、みんなが死んでいくのを見たくないと思えば、いつでもこっちに来ればいい。こっちは毎日が楽園だからね」
「ほら、もう起きて。みんなが呼んでるよ。君が行こうとしている自由という楽園から連れ戻そうとする地獄の使者がね…」
「じゃあまたあとで」
男のうちの一人がこちらに手を振ると、突然炎のように二人が激しく燃え上がり、そのまま闇に消えていった。
「ウッ、ウウ!」
そして自分の脳にも激しく燃え上がるような痛みが走り、目の前の光景が地震ようにグラグラと揺れた。畳みかけるように脳裏に誰かが大声で叫んできた。誰…あなたは誰なの…