二人目
名前は柊明日香。俺と同じ十七歳。彼女の最期は八年後、ボールを拾いに道路に飛び出した子供を助けようとして、自分はトラックに轢かれて体ごと弾き飛ばされ、全身を強く打ち、死去。腕の中に抱きかかえていた、子どもは生きているらしい。
「さあ、どこでも空いている席を選んで座ってください」
彼女は迷わず、俺の隣の席に座り、一時限目の科学の教科書を取り出した。俺がそんな彼女をじっくり見ていると、俺の視線を感じたのかこっちを向き、にっこりと笑った。俺も一応にっこりと苦笑いをした。
「俺もいつの間にか、十七歳か。この力の事ばかり考えていると、時間がものすごく早く感じる。やべっ! 俺もう少しで大学受験じゃん。何も考えてない。ま、今の成績だと、このまま一生コンビニでアルバイト生活だな」
俺は静かにつぶやいた。
「ねえ、悟君だっけ? 私と一緒だね。何か、すごいことを一人でやろうとしてるんでしょ?」
昼休みに、学校の屋上で横になりながら、空を見ていると、いきなり声が聞こえた。
「えっと、明日香……さん。何で俺がここにいると?」
明日香は笑みを浮かべながら、
「フフ、だって一目見た瞬間、悟君が私と同じものを持っているような気がして。私も、よくこういう静かなところに来るから、もしかしたらと思ってね」
「え、俺の心が読めるんですか?」
「いいえ、ただ私と同じ目をしていたから、そう思って。私でよかったら相談に乗ってあげる」
明日香は馴れ馴れしく聞いてくる。
「信じられないと思うけど、俺、すべての人や物の最期、つまり死ぬところが見えてしまうんです。詳しくね。本当だったら心の奥底にしまって普通の高校生活を送ろうと思ったけど、なんかこの力は神様が僕に授けてくれたんじゃないかと思ったりしちゃって。だから、この力を有効活用できないかと思ってこの十年間ずっと考えてきたんだけど。ごめんね、ちょっと俺変だよね」
「フ、フフフ。」
やっぱり信じられないか。
「あ、ごめん。別に信じてないわけじゃないよ。ただ、私と一緒の人がいると思うと嬉しくて」
「え、じゃあ、あなたもこの力が使えるんですか?」
「ううん。でも似たようなもの。私は私の目に移ったすべての物を一回蘇らせることができるのよ。つまり、死んでも治療することができるの」
俺はびっくりして、三十秒ほど硬直してしまった。
「そんな力を持っているなんてすごいですね。僕と全く逆だ」
「でもこれで、悟君の力をいいように使えるかもしれないよ。だってたとえ死んだとしても、蘇らせることができるかもしれないでしょ」
僕はその言葉で目の前に広がっていた闇が拓けたような気がした。
「そうか、よし試してみよう」