死の息吹
「パキン!」
という金属同士がぶつかり合ったような音がどこからか聞こえた。私はゆっくり目を開けた。
「大丈夫ですか?」
そこには悟のようなうしろ姿をした青年がデスが振り上げている刃を日本刀で受け止めていた。青年はデスと刀を交えたまま、デスを押し返し、勢いよく斜め上に刀を振り上げた。そして、こちらに振り向いた。
「慎吾君! どうしてここへ?」
「いえ、情報収集の最中で天気が急変しましたので、何かあったと思ったので。それに雷の中では鳥たちが怖がってなかなかうまく飛べないのでというのもありますが…」
「それより、その刀どうしたの?」
「あ、こちらは林檎さんから拝借させていただいたものでして。僕の能力は鳥と会話できるということなので、戦力的には他の皆さんに比べて不足していたので、皆さんのお役に立てるかと思い、ここ数か月間林檎さんの元でみっちり剣の使い方を教わったんです」
「そう、すごいわね。たった数か月の修行でずいぶん様になってるように見えるわよ」
「ありがとうございます」
「まだまだよ。そんな戦闘中に敵に背後を取らせるなんて、剣士にとっては逃げてるようにしか思えない」
辺りを見渡すと、部屋の中で翼を広げて飛んでいる加藤一に刃を向けている林檎ちゃんがいた。彼女は加藤一を凝視しながら、慎吾君にそう言い放つと、目にもとまらぬ速さで手に持っている鞘から刀を抜き、壁を蹴って空中に舞い上がり、加藤一を空中で支えている二つの翼を素早く切りつけた。その切り口はまるで定規で図ったような真一文字、その切り口からはバラ色の血液ではなくラベンダーのような紫色の羽があたりに散った。その羽に抱かれるようにヒラヒラと舞い降りてくる林檎ちゃんと、切られたという恐怖に怯えながらどさどさと石のように落ちてくる加藤一がアジト内に鮮やかなコントラストを描いていた。
「全く、南さんはこんなのにやられてたんですか」
「あ、ああ。すまないね、助かったよ。それよりよくあの鋼のような硬い翼を切れたな」
「確かに思った以上の硬さだったわよ。血も噴き出ていなかったし、たぶん翼の表面だけ切ったのかも」
「よくそんなので奴を落とせたな」
「ただ、相手に切られたという恐怖感を与えただけ。人間は精神的恐怖に陥ると普段できることもできないという時があるから。自分は鋼鉄の鎧を身に着けていてしかも飛んでいる、そういう自信があったときに浅くでも敵に切られれば、自分は瞬く間に自信を無くす。さ、とどめはあなたで刺してきて。もう、彼は翼はもがれた鳥同然、死を待つよりほかないんだからから」
「やっぱすごいですよね、師匠は。僕なんて彼女の足元にも及びません」
隣にいた慎吾君を見ると、目がキラキラと輝いていた。
「ほら、あんたもさっさとそいつと決着つけちゃって」
「はい! 分かりました」