王族、僧官、騎士、砦
「おーい、デビルさん! ワールド様から了承得たよ」
「やっとか。全くどこまで行ってるのかと思ったぜ」
デビルは研究室の自分のデスクに突っ伏していた。
「いや~本部はまだ慣れてなくて、ちょっと迷っちゃいました」
「で、キングの希望は?」
「え~と、鳥と炎だそうです。あと六体はこの中からなるべく作りやすいやつを選ぼうと思います」
ホワイトはデビルに自分の撮ったメモ用紙を渡した。
「そうか。じゃあ、お前は休んでていいぞ。暇だったら敵に戦闘でも仕掛けてきたらどうだ? 俺の開発した薬を試す丁度いい機会だし、シャドウの話だとダークが風人間と戦っていて、残りの奴らは二手に分かれているらしい。戦いやすいんじゃないか?」
「いえ、僕は戦闘向きじゃありませんので、ダークともう一人のナイトに任せます。それにしてもシャドウはどこでそんな情報を手に入れたのでしょうか」
「さーな、だがあいつは潜入のプロだ、人間の影に勝手にひっそり忍び込んでいる。時にばれそうになったら、忍び込んでいる影本体を操り、味方と思い込んでいる奴らを速やかに抹殺する。ま、素性もよくわからねえ不気味な奴だが、味方になればなかなか使いやすい奴だ。そして、シャドウの相棒のファントムはシャドウとまるで逆、逃げも隠れもせず、堂々と潜入し、情報を本人から聞き出す。戦闘力に関しては俺はよく知らねえが、キングが奴の事絶賛してたから、強いんだろうよ」
「ええ、シャドウとファントムはもともと僕と共に鶴…いやデスの部下でした。滅多に顔を見せることはなく、謎に包まれた人物達ですがデスと同じくらいの戦闘力と聞いています。箕輪健太や金子守などは足元にも及ばなかったそうです」
「なるほど、そりゃあキングがあいつらをこの本部の砦に任命したわけだ」
「砦…ですか」
「ま、そんな事より仕事の邪魔だ、さっさとどっか行ってろ。いや…」
デビルがニヤリと微笑んだ。
「やっぱりお前には戦闘に出向いてもらうことにしよう。いいか、俺がすぐに二体のAIにAPを付けてやる。お前はそいつらを持っていったらどうだ? あいつらにAIの強さを見せつけてやれ」
「はあ、めんどくさいな」
「なんか言ったか?」
「いえ、何も」
「待ってろよ。いま、早急に作ってやるからな」
デビルは自分の後ろに立っていたロボット達のところに駆け寄り、お腹の部分を開いた。
しばらくして静かだった研究室内に携帯の着信音が響いた。
「プルル」
「ん、メールか…お、ナイスタイミング。どうやら、お前の元上司が敵のアジトを見つけたらしい。事のついでだ、お前も行ってこい、ほら、お前の部下連れて。丁度二体準備完了したからな」
そう言って、緑色に光る液体に入った進化したAIを指さした。そのうちの一体の目がゆっくりと開いた。まるで王子のキスで目覚めた白雪姫のように、人間とは思えないほどの白い肌をむき出しにいて…
「お待たせいたしました。小森さん…」
しかしその笑みは白雪姫のような朗らかなものではなく魔女のような不適の笑みだった。