騎士
「海先輩! 気を付けてください。僕らはアジトに戻って、情報収集や襲撃の対策を練ります。後で向かいに行きます」
「誰に言ってんだ、俺を誰だと思ってる? 迷子になんかならねえよ」
「いえ、そういう意味じゃなくて、勝ってくださいよ」
「なんだ、そういうことか。任せとけって」
そう言って、海君は、私の視界から消えて行った。
「では、行きましょう」
「いやいいよ。ここで別れよう。俺と明日香、佐藤それとマークス君は俺と一緒に慎吾くんのアジトで計画を練るのと兼丸岡君の看病。慎吾君と霧島君は情報収集してきてくれ。何かわかったら戻って来るか電話で伝えてくれ」
「分かりました、では行きましょう」
「ちょっと、どこ行くかわかってんの?」
そういって、林檎ちゃんと慎吾君は鳩とカラスに乗って飛び立っていった。
「真斗、私たちは?」
「まずは、アジトに戻ってこれまで集めた奴らの情報を整理して、それに沿って計画を立てよう。よしマークス君、丸岡君を車に運んで、一応治療はしてあるけど、なるべくゆっくりね」
「分かってマスよ、ボクも医者なんで」
「おい、避けてばっかじゃねえか? 怖えのか?」
「威勢がいいですね。先ほどの方のように」
「ぶつぶつ言ってねえで、さっさと来いよ。俺はちゃっちゃと終わらせて、明日香ちゃんに自慢したいんだよ」
「そう呑気な事言っていると、どうなるか分かりませんよ」
男は右手を空高く上げた。すると、避雷針のように雷がその右手に集まってきた。
「おいおい、ちょっと待て。場所、移動しないか? お前の力周りにすげえ被害がありそうだ」
「断ることは可能で?」
「いやだめだ」
「では断ります」
「ち、素直に従えよ。こんな目立つところで戦ったら、他の奴らに注目されて、写真を撮られて、記事にされて、一躍有名人になっちまうじゃねえか」
ダークはチラッと視線を海からずらし、海の後ろにある、建物を見た。
「その点は大丈夫のようですよ。今この一帯の人たちは私たちの事、見えないようなので」
「どういうことだ」
「私の仲間が、影を操る能力で、今私たちを影にしました。これで我々は普通の人間には見えないのです」
「ほう、またいい情報を手に入れた」
「フン。あなたはここで私に敗れるのでいいのですよ」
「ほー。ずいぶんと強気だな」
「もちろんです。私はワールド様の特攻部隊の内の一人ですので。他の幹部の誰よりも戦闘力には長けているのです。あなたほどの力では私には敵わないことなんとすぐわかります。私は強いのですよ。そこら中に居る人間の誰よりもね。もちろんあなた方が殺した、箕輪君や金子君よりもね」
「おいおい、俺たちはあいつらを殺してねえよ。殺したのはお前の仲間の小森だよ」
「おや、小森とは誰の事ですか?」
「なんだ、お前知らねえのか、自分の仲間の事。あのAIとやらを大量に作っている奴だよ」
「あ、ホワイトの事ですね。彼の名前は小森というのか。もともとはデスの部下であって、よく知らないのでね。あ、ちなみにワールド様直々の幹部はもともと三人だったんですが、デスの支部で二人減ったので、ディアブロ軍の本部と支部を合併したんですよ。おっと、話しすぎましたね」
「ああ、話しすぎだよ。話を聞き過ぎて、耳にタコが出来そうだぜ。んじゃ、さっさと決着付けて、仲間に報告しないとな」
「私からは逃げられません…よ!」
「やってみるさ!」
その瞬間、彼らを覆う雷と風が激しく発光し、影のように消えていった。