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鍵穴の人間  作者: 蒼蕣
瞳に映る未来
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人の心

土曜日と水曜日に更新と言いましたが、初回なので一気に三部投稿しようと思います。

僕はそれ以前から、僕が見たすべての物の最期が見えていた。

だが僕は、当然他の人にも見えているものだと思っていた。


小学六年生の春、始業式を終え、新しい教室へ入るとみんなの最期が目に飛び込んでくる。

みんな七十年とか、八十年後のことだが、一人だけ一週間もしないうちに死んでしまう子がいた。

名前は桜庭(さくらば)雄一郎( ゆういちろう)。四月八日、いつものように母親の運転する車でこの学校に来る途中、信号無視して横断してきたトラックと衝突。母親はガラスの破片や、大破した車の破片、横切ってきたトラックの破片などが体中に刺さり、出血多量で死去。

雄一郎も同様に、身体のあちこちに破片が刺さり、シートベルトはしていたものの、急ブレーキをかけた時に、前のシートに頭をぶつけ、首の骨を折り、また頭蓋骨陥没し、死去。まだ十数年しか生きていない。

僕は彼がそれを知っていて、こんなに楽しく最期の人生を過ごしているのだと思い、

「あの世でも幸せに生きてね」

と、言ってあげた。

「なに言ってるの悟君?」

僕は一瞬驚いたが、最後まで死を認めたくないのだと思った。が、思わぬ言葉が返って来た。

「ぼくの話ちゃんと聞いているの。僕が行くのは、あの世なんかじゃなくて温泉。一週間後、ママとパパと三人で温泉旅行に行くんだ。だから少しの間学校休むの」

「ええ~。いいな~」

と他の人たちは言っていたが、僕は、言っている意味が分からなかった。


雄一郎君は、三日後死ぬんだよ。一週間後なんて生きてない。雄一郎君は天国で、温泉旅行にでも行くのかな? 

それに、なんでほかのみんなも雄一郎君に最期の言葉ぐらい言ってあげないの?

もしかしてみんな、雄一郎君の最期が見えていないの?

それだけじゃない。先生や雄一郎君自身も見えていない。見えているのは僕だけ?

僕はこの力が怖くなった。

「ねえ雄一郎君。君、自分の最期が見えないの?」

「どういう意味? 君には僕がいつ死ぬか見えてるの?」

「え、うん。じゃあ雄一郎君には見えてないの?」

「い、いや全然。どこで見るの?」

みんな僕に注目し始めた。やっぱり誰にも見えていなかった。


「よく見て。あの黒板は二百年後、この学校が壊されちゃうときに一緒に壊される。

あの椅子は三十年後、全校模様替えの時に捨てられ、燃やされちゃう。

あそこにいる子は六十三年後、脳卒中っていう病気で死んじゃう。そして君は……」

僕は少しためらったが、そのまま続けた。

「君は三日後、交通事故に遭って首の骨を折っちゃって、頭もへこんじゃって死んじゃうんだよ。君のお母さんも一緒に」

僕は思い切って言ってしまった。

「な! なんてこと言ってくれんだよ。僕があと三日で死んじゃうだって! そんなことあるはずない。そんなこと分かるはずない。君の冗談は酷すぎるよ」

「冗談なんかじゃない! じゃあ、一緒に来て。僕が嘘をついてないってことを見せてあげるから。」

そして僕は雄一郎君を隣の教室へ連れて行った。


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