異世界に迷い込んだ女子高生7
降り立ったホームで、辺りをぐるりと見回す。
よくある田舎の小さい駅といった佇まいで、古びた蛍光灯に照らされるコンクリートのホームに、少し汚れたオレンジ色の椅子が設置されており、道とホームを隔てる緑の金網のフェンスには所々植物が絡まっていた。
フェンスの向こう側は日本家屋が立ち並ぶ住宅街で、反対側のホームのフェンスの先には雑木林が広がっている。
ホームを少し歩くと駅の看板が見えた。
看板は腐食が激しく薄汚れているものの、「かたす駅」と書いてある。
前の駅名は腐食していて読めないが、私の記憶が正しいなら新浜松だ。
そして、看板に書いてあった次の駅名は
きさらぎ駅
……きさらぎ駅?
聞いたことがある。
その駅は、存在しない駅。
有名な都市伝説の、きさらぎ駅……?
え………………
え………………?
目を見開き、その場に立ち尽くした。
オカルトに詳しくはない私でも、知っている都市伝説。
止まらない電車と、見知らぬ駅。
今の私の状況は、その都市伝説にとても似ていた。
心臓の音がうるさく聞こえる。
ありえないことが、起こっている。
汗は吹きでるのに、背筋は異常に寒い。
存在しないきさらぎ駅、それが次の駅として書かれている。
私はおもむろに携帯を開いた。
時刻は18時半。
し、調べなきゃ。
震える手で、「きさらぎ駅」を検索する。
ページの読み込みに成功したことに、ひとまずほっとする。
そのサイトに書かれていたのは、投稿者達が電車に乗っていると存在しない駅「きさらぎ駅」にたどり着いてしまう、という内容だ。
その後、投稿者達はオカルト的な体験をして、そのまま帰還したり、失踪したりしている。
その中に「かたす駅」の記述があった。
かたす駅はきさらぎ駅の隣駅。
今の状況に合致している。
私がいるのがそのかたす駅だ。
なら、私は今…………………………
都市伝説の投稿者と、同じ世界に来ている。