馬頭(メズ)14
R15くらいです。
翌朝、私は温もりに包まれながら、目が覚めた。
あったかい…………え?
「なっ……!?」
目の前に広がるのは、牛頭の鎖骨。
抱きしめられている!?
背中と腰に回された腕は、身を捩っても解けない。
じたばたしていると、下腹部から生温かいものがどろりと溢れ出した。
え…………?
思考が止まる。
その間にも、太ももを生ぬるく流れ落ちる液体。
皮膚の上を這うようにもったりと流れ落ちるその感覚に、ぶわりと全身が総毛立ち、お腹の奥がきゅんとしてしまった。
……………………これって…………
めくるめく昨日の光景。
この寝室で体を拭いて、それから…………キスをされて…………
……え………………襲われ……た?
そこで、すべてを察した。
「ん……おはよう、沙羅」
目を覚ました牛頭の穏やかな声色が耳に落ちてくる。
背中に回っていた腕は、優しく私の背中を撫でた。
「は……離して!」
その腕は名残惜しそうに私から離れると、そのまま牛頭は長い髪をかきあげた。
いちいち、色気が強すぎる。
「き、昨日は意識があったはずなのに!
なんで…………?」
聞いたって、牛頭は眉を下げてにっこりと笑うだけ。
その顔に浮かぶのは、深い愉悦とほんの少しの申し訳なさ。
「ねぇ、牛頭…………まさか…………」
布団を剥いで、自分の姿を見ると唖然とした。
パジャマは着てなくて、上下の下着しか付けていない。
それに、今回はもっと酷い。
肩や腕に複数の噛み跡。
胸やお腹、内腿にキスマーク。
まるで、暴漢に襲われたかのような凄惨な跡の残る身体。
「ねぇ!!最低!!」
「ふふ、ごめんね……」
キスした後の記憶が曖昧だ。
「なんで、そんなことになって…………私寝てたの…………?」
「緊張して、失神しちゃったのかな?」
「そんなわけ…………!」
有り得ない。
だって、昨夜は警戒して気を張っていた。
そう簡単に意識を失うはずはない。
この状況があまりに信じられなくて、太腿に伝う半透明な体液を指で掬い上げた。
「これ………………なに?」
指に付着している液体を、牛頭に見せつける。
「・・・」
どこか達成感すら感じるほどににっこりと笑う牛頭を見て、怒りが湧き上がった。
「なんで中に!」
「ごめんね、沙羅。
こうするしか無かったんだ」
「なんで、意識のない時に、同意も得ないでするの?」
すると、牛頭は私を抱き寄せた。
寝間着がはだけている胸に、半裸の素肌が密着する。
「ごめんね、好きすぎて……」
こんな状況なのにドキドキすら感じる自分が情けなくて、抵抗する力が抜けていく。
「もう、意味わかんないよ……」
ここにいる限り、寝込みを襲われることを理解した。
そして、与えられた温もりに安らいで目を瞑ってしまう自分が、一番怖かった。
次回、登場人物紹介です。




