馬頭(メズ)13
R13くらいかと思います。
「はい、背中拭いて」
「え……?」
牛頭は仰向けの状態から、上半身を少し起こして両肘を布団についた状態になった。
「これなら、背中拭けるでしょ?」
「背中を浮かせてくれるのは有難いんだけど、これじゃあ……」
腰の上に座って、抱きつくようにして背中を拭けと言われているようなものだった。
「寝間着を脱いでうつ伏せになればいいでしょ?」
「沙羅、早くしないと腕痛いよ」
「もう!
なんで痛い腕を使う体勢になってるのよ!」
肘が痛そうだ。
仕方がなしに牛頭の腰の上に座り、寝巻きの間から濡れタオルを差し入れた。
なんか、座り心地が…………
完全に下半身の上に座らせられているので、なかなかの違和感があるけど、意識したらいけない気がする。
目の前は牛頭の胸やお腹がドアップになっていて、その胸板や腹筋のゆるやかな隆起が嫌でも目に入った。
強烈な色気を前に、ドキドキしない方が難しい。
早く終わらせないと、危険だ。
それにしても、左手をついて自分の体重を支え、右手で牛頭の背中を拭くので、かなり拭きにくい。
しかも背中の奥の方を拭くのには結構密着しないといけない。
左手がプルプルし始めたところで、牛頭はニヤリとこちらを見た。
「あ……」
軸にしていた左手をすっと薙ぎ払われた。
左手がカクンと崩れる。
支えを失った体は、牛頭の上半身になだれ込んだ。
「ちょっと!」
仰向けに寝転がる牛頭の上に、向かい合って重なるような体勢だ。
完全に密着してしまった体を起こそうとすると、牛頭は右手で私の背中をロックしていた。
「ふふ、可愛いねぇ。
沙羅から抱きついてもらえるなんて、嬉しいよ」
「事故でしょ!
事故らせたのは牛頭でしょ!」
ふふっと、悪戯っぽく牛頭は笑った。
どうしよう、正面から完全に密着してしまっている。
その胸に頬をつけ、全体重を牛頭に預けているような体勢でロックされ、身動きが取れない。
そんな密着状態で、牛頭の肌から立ちのぼる上品な匂いが、ふわりと鼻腔に舞い込んできた。
その香りに、脳がゆっくりと痺れていく。
逃げなきゃ、なのに。
襲われたくないのに。
………………どこかで、もう少しだけ……なんて思うのは、とても罪深いことだと思う。
「・・・」
いつの間にか、幼子を寝かしつける時のように背中をさすられていた。
その体温が心地よくて、うっとりと目を細めそうになる。
私はすっかり…………油断していた。
いきなり身体を引っ張り上げられて、牛頭と目線が合う。
「えっ!?」
わけも分からずそのままの体勢で牛頭を見下ろすと、その淡い色の双眸がキラリと光った。
「湖で全部流されちゃったから、また注がないと……ね。
絶対に帰さないよ。
ここで、僕と生きよう?」
私が上になったままの体勢で、後頭部を引き寄せられる。
ちょっと待って、これ絶対キスされる!?
逃げようともがいたけれど、背中ごと引き寄せられて普通に力負けした。
「んむっ!?」
薄い唇に塞がれて、その柔らかさにびくりと身体が震える。
その唇は角度を変えると、水気を含んだ舌で唇を割り開かれ、あっさりと口内で舌を絡め取られた。
その微細な動きに翻弄される。
なにこれ…………
昨日は必死すぎて気づかなかったけど、この人キス上手すぎる。
思わず、はしたなく内腿を擦り寄せてしまった。
目は潤み、身体中を駆け巡るようなゾワゾワ感が止まらない。
やばい、なんか………………おかしくなる。
脳内は溶けていき、やがて何も考えられなくなっていった。




