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馬頭(メズ)12

少しの間だけ、投稿時間12時にずれます。



「さぁ、沙羅。

そろそろ寝る時間だね。

さて、僕の体を拭くのを手伝ってくれるね?」



「う……うん」



その妙な圧に迫られて、頷いた。



「ふふ、ありがとう」



さらりと私の頭をなでる大きな手は、どことなくしつこい様相で、頬や鎖骨にまで触れてきた。



触られた肌が、ぞわりとする。



牛頭ゴズの大きなパジャマを着ているせいで、首周りは大きく開いており、鎖骨はむき出しだった。



ぶかぶかな服は防御力が低く、あちこちから手が差し入れられそうで怖い。



「やだ、やめて」



本当に嫌な予感しかしない。



牛頭ゴズが襲う気満々のオーラを出し続けている。



これを拒否しないと!



――パシッ



その手を撥ね退けて睨んだ。



「ねぇ!

変なことしたら、嫌いになるから!」



そうやって威勢を張っていても、虚勢でしかない。



御神酒が無ければ、私が抵抗することは不可能だ。



「それは嬉しいね。

つまり、今は僕のことを好きでいてくれてるってことだよね?」



ぱちっと目を見開いてから、ゆっくり微笑むその表情は美しい。



いや、そうじゃない。



「違うから!

嫌いがもっと嫌いになるってこと!」



「……ふふ、僕にはそうは見えないな。

沙羅は既に、心のどこかで僕を求め始めている。

強がっていてもわかるよ。

……沙羅はずっと一人で我慢していたから、愛が欲しかったはずだよ」



「え……?」



その言葉に、心臓がドクンと音を立てた。



なに、それ。



私は……ずっと一人で我慢していた?



元の世界の記憶がないから何だかわからないけれど、その言葉にひどく動揺する。



そういえば、牛頭ゴズは元の世界の私を知っていて、こちらに連れてきたって馬頭メズは言っていた。



元の世界の私って……



「寝室に桶とタオルを用意しておいたよ。

ほら、早く来て」



「ちょっと!」



牛頭ゴズはパジャマ姿の私の手を引いて、強引に寝室に連れていく。



――ガラっ



寝室の襖を開けると、例のごとく、2組の布団はピッタリとくっついて敷かれていた。



「ねぇ、布団の位置が!」



「腕がヒリヒリして痛むなぁ」



「もう!」



牛頭ゴズは寝巻き姿でごろんと仰向けに寝転んだ。



枕元には水桶とタオル。



仕方なく、タオルを絞り、体を拭くことにした。



寝巻きを広げて、胸、お腹を拭いていく。



幸いにもここには御神酒が掛からなかったらしい。



長身だけど基本的に細身なので、すぐ拭き終わりそうだ。



水につけてタオルを絞り直し、肩や脇の下を拭く。



長い髪は1本で結んでくれたので、巻き込まずに済んだ。



「沙羅、緊張してる?」



「別に、そんなことないもん」



内心はあんまり直視出来なくて、困っていた。



それから両脚を拭いていく。



腕は包帯が巻かれているから大丈夫だし、お尻とかはさすがに自分で拭いてもらうとして。



残るは……背中なんだけど……




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