馬頭(メズ)6
昨日、間違って二話掲載していました。
しかも、馬頭6の下書きをそのまま間違って掲載してしまい、今日見て真っ青になりました。
慌てて編集したところです(10:45)。
ちなみに、これが今日の分の掲載です。
「お邪魔しました!」
馬頭に見送られながら、家から出る。
「頑張ってね、沙羅ちゃん」
玄関のドアが閉まると、家の前の道で夜叉と二人だけになった。
…………さっきから睨まれてて、かなり嫌そうにしてたけど、大丈夫かな。
むしろ、電車で一人で帰った方がいいんじゃ…………
そんなことを考えていると、夜叉は盛大に溜息をついた。
「はぁ~、お前さ、マジで臭い」
「は、はぁ!?
いきなりなんなんですか?」
馬頭がいなくなった途端、夜叉は悪態をつき始めた。
「牛頭の匂いがプンプンして、本当に臭いんだよ。
正直、かなり不快。
馬頭様の命令じゃなければ、剣の山に真っ逆さまに落としてやるのに」
さっきまではチャラそうな見た目の割に、妙におとなしかったことに違和感を覚えていた。
多分こっちが本性なんだと思う。
というか、女子に向かって臭いと言うのをやめてもらいたい。
「剣の山ってなんですか!
こ、怖いこと言わないで下さい。
それに私、一人で帰れますから、別に送ってくれなくて大丈夫です!」
「……あ?」
夜叉はその瑠璃色の目で、思いっきり私にガンを飛ばしてきた。
まるでヤンキーだわ。
威圧され、隠すことの無い負の感情をぶつけられたって、別になんとも思わない。
……別に、なんとも。
あれ……?
今、何か引っかかったような……
「くせぇし、うるせーし気分悪ぃな。
馬頭様の命令だから、やるしかねーんだよ!
さっさと終わらして帰るわ」
すると、唐突に夜叉は私の前で屈んだ。
「え?」
次の瞬間、身体が浮いていた。
「な、何!
なんなの!?」
視界に映るのは、地面と夜叉の背中。
何故か夜叉の肩の上に、俵のように担がれている。
「うえぇ、くせぇ、最悪だ。
行くぞ」
「ちょっとなんなのよ!」
夜叉が地面を蹴ると、遥か高くまで跳躍した。
急激にお腹に掛かる推進力。
それはほとんど逆バンジージャンプ状態だった。
「まっ、待って!!!
ちょっと!!!!
キィヤァァァァアア!!!」
ジェットコースター系はすごく苦手。
「うるせぇよ!!騒ぐな!」
そのまま自由落下していき、地面に付くとまた跳躍した。
「イヤアアアアアアアアアアア!!!」
無理、無理、無理無理!!
「うるせーんだよ!!!
黙れよ!!痛えし、くせぇし、最悪だこいつ」
どんなアトラクションより怖い。
「下ろして!!!!!
無理!!キィヤァァァァアア!!!!」
繰り返し訪れる、急激な上昇と下降。
衝撃がすごくて、手足は夜叉の背中やお腹にぶつけてしまうし、ずっと逆バンジーとバンジーを繰り返しているような気持ち悪さがある。
「俺も具合悪くなってきた……臭すぎて」
夜叉は鳥居のある場所のすぐ裏の地面に降り立つと、私を投げ捨てた。




