異世界に迷い込んだ女子高生4
電車が加速したような気がした。
なんとか、ここから、出ないと……
私は後ろの車両に目をやった。
まだ、全部がそうと決まったわけじゃない。
完全に抜けてしまった腰を起こすために、震える手足をなんとか動かして起き上がる。
手すりを伝ってようやく立ち上がり、大きく深呼吸をした。
さっきよりも、車両内の電気が暗くなっている気がする。
怖い……
ループの閉塞感とまとわりつくような気味の悪さに、眩暈がする。
なんとか、ここから出る方法を探さないと……
大きく震える足に力を込めて、汗ばむ手で手すりを伝いながら、後方車両に向かって一歩ずつ移動する。
時間をかけて進み、後方の車両の連結ドアの前まで来た。
窓ガラスは暗く、車両内の様子は全く分からない。
汗を握る両手で、ドアに手を掛けた。
――ガチャ
お願い、誰かいて!
碌に力の入らない全身を使って、四苦八苦しながら重いドアを引いた。
え…………
目の前に広がるのは、モノクロ映画のような灰色の世界。
その景色は電車の車両に違いないけれど、圧倒的に色彩のない世界。
足を踏み入れると、ドアの境界から私の体もモノクロになった。
夢……なのかな。
「あの……誰か……いませんか?」
この訳のわからない状況でも、私は震える声で人を探していた。
しかし、モノクロの車内に人の姿はない。
周りを見回りながらゆっくりと歩みを進めると、電車の壁に何か落書きのような字が書いてあるのが見えた。
目に飛び込んだ文字に、背筋が冷えた。
『死ぬ覚悟を決めろ』
不気味すぎる言葉に、心を砕かれる。
「……嫌だ、もう……無理……」
帰りたい。
……なんで、こんなことになっているのか分からない。
私は電車に乗っていただけなのに!
視界が揺らぎ、両頬から灰色の涙がはらはらと零れ落ちる。
「助けて……お母さん……」
私は、元来た道を引き返した。