表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/68

牛頭(ゴズ)3



お風呂を出ると、脱衣場にはバスタオルと新しい下着、そして服が用意されていた。



バスタオルで体を拭きつつ、その下着をまじまじ眺める。



それは、上下白のサテンの下着だった。



サイズを見ると、私のサイズとぴったり一致している。



……なんか、怖いんだけど。



そして、その横に置いてある服は、可愛らしい感じのピンクのワンピースだった。



牛頭ゴズの趣味なのだろうか…………だとしたら、結構少女趣味なんじゃないかと思う。



何歳なのかは分からないけど、なかなかの大人に見えるから、私とはそれなりに歳が離れているだろう。



私は女子高生だから、ロリコンとまでは言わないけれど…………近いような雰囲気を感じる。



生地の感じから見て新品っぽく見えるその服は、サイズもちゃんと合っていた。



「・・・」



どうしてこんなものを用意できたのだろう。



私が寝ている間に調達した?



私はそんなに長い時間寝ていたのだろうか。



それにしても、用意が早すぎる気がする。



いやそもそも、この世界にアパレル業は存在するのだろうか。



昨日の夜に見た、この町の荒涼たるゴーストタウンのような雰囲気から、正直アパレルショップが全く想像できない。



そういえば、日本家屋の街並みは昭和風だったけれど、牛頭ゴズの服装やこの下着、ワンピースも含めて、別に昭和風ではない。



寝巻きは昭和風かもしれないけど。



それに、よく考えると、この世界で元の世界の携帯の電波が入るのもかなり不思議ではある。



なんだろう、この妙な違和感は。



かけ離れているようで、近いところもある。



そんなことを考えながら、ワンピースを着て髪を乾かした。



いつもの通りに鏡を見ながら髪を三つ編みにするけれど、どこかいつもと違う気がする。



どうしてだろう。



ふと、三つ編みを編む手が止まった。



…………私…………大人になっちゃった…………のかな。



もちろん、記憶が無いからどんな感じだったのかは分からない。



でも、身体は大人にされてしまった。



鏡に映る自分は変わらないはずなのに、昨日塞がれた唇がやけに目に付く。



強引に塞がれた、あれがファーストキスだった。



それを思い出して、なんとも言えない喪失感に駆られる。



昨日だけで、色々ありすぎた。



知らない男性と手を繋いで家に行き、強引にキスや口移しをされて、身体の関係にまでなってしまった、なんて…………



ああーーもう、なんでこんなことに!!



三つ編みを編み終えて、溜息をつく。



その時、鏡の中が揺れた気がした。



ん?



目を擦ってみると、両肩に三つ編みを下げたピンクのワンピースの自分の姿が映っているだけだ。



……疲れてるのかな。



そう思っていると、また自分の姿がぐにゃりと歪んで見えた。



んん!?



鏡の中に、いくつものさざなみが走る。



それは、私の姿を歪めて広がり、絵の具が滲んでいくように色が混じり合って取り変わる。



鏡を見れば見る程、自分の姿からかけ離れていった。



三つ編みがストレートの白髪に

黒い眼は赤い眼に

胸はパンパンに膨らんだ

………………臈長ろうたけたる艶やかな大人の女性。



え、誰……………………?



「…………沙羅ちゃん、私の声が聞こえますか?」



鏡の中の艶やかな美女は、私に話しかけてきた。



「誰……なんですか?」



その時、脱衣場のドアが勢いよく開いた。



「沙羅、こっちにおいで!」



余裕のない表情の牛頭ゴズに手を引かれて、半ば強引に脱衣場を後にした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ