異世界の住人15
脳内は恐慌状態だった。
朝一番で状況を把握しきれないし、最低だし、訳が分からない。
「ごめんね…………でも、安心して。
責任は取るから、ね?」
そう微笑む顔は清々しいほどに綺麗だったけれど、許すつもりは毛頭無い。
それに、責任って何?
私はこの世界から去る人間なんだから、責任なんて言われても困るし、その言葉で私の純潔が戻ってくる訳でもない。
初めては、好きな人とが良かったのに!
なんで意識も無いうちに、知らない人と!
悔しさで涙が滲み、怒りで肩が震えた。
「ーーーっっ最低っ!!」
「まだ寝てた方がいいよ、安静にしてて」
「貴方のせいでしょ!!
大体、なんで知らない人とこんな事に……!!」
「知らない男の人の家について行っては駄目だよ」
非常事態とはいえ、一人暮らしの男の家に着いて行った私が馬鹿だった。
もっと警戒するべきだって後悔してる……でも!!
「貴方が言わないで!!
もう、嫌だ!!
こんなところ、居られないわ!!!」
すくっと立ち上がると、下腹部に鈍痛が走った。
「うっ……」
突然の痛みと、あまりのショックに酷い目眩がする。
気持ち……悪い……
「まだ起き上がっちゃダメだよ」
男は私を支えようと手を差し出したけれど、もちろん力強く振り払った。
悔しさと怒りが止まらない。
「触らないで!!変態!!」
手をバシッと叩き落とし、思い切り睨みつける。
すると、急に立ち上がったせいか、内腿から伝う気持ち悪いものが、膝の裏まで流れて落ちていった。
「や……だ…………」
自分の内腿から流れてどろりと落ちていく、半透明の男の体液を見て、絶望に似た気持ちが込み上げる。
目の端に溜まっていた涙が、遂に零れ落ちた。
…………なんで……こんな目に………………
その不快感に血の気が引いて、視界が明滅する。
やがて視界が暗く狭まっていき、地震が起こっているような揺れを感じた。
う………………
重力に従い、膝から崩れ落ちる。
「沙羅!」
倒れる前に、男に抱き抱えられたような気がした。
「はな……し……」
そしてまた、気が遠くなっていった。
次回、登場人物紹介と次話投稿します。




