異世界の住人14
多分、R15くらいです。
水の底から浮き上がるように、ゆっくりと意識が浮上していく。
ぱちっと目が覚めた。
柔らかい日差しと畳の香り、暖かい布団。
ゆっくりと寝ぼけ眼を擦ると、目の前に顔があった。
ぼんやりと焦点を結ぶと、切れ長の目と高い鼻梁、洗練された美貌が見えてくる。
「おはよう、沙羅」
「…………………………………………え」
目の前に寝転んでいる、長い黒髪の男性と目が合った。
えっと……………………確か………………
その淡い色の瞳を見て、昨日のことが嫌でも思い出される。
駅で声を掛けられて、手首を縄で縛られて…………それから……………………
ハッとして、唇に指先を当てる。
この人に……何か口移しをされた!
その強烈な程に艶かしい記憶に、かあっと頬が熱くなり、勢いよく上半身を起こす。
「だ、騙したわね!!」
不意に起き上がると、2組の布団がぴったりとくっつけられているのが目に入った。
「なんでこんなに布団が近いの!?」
「ごめんね…………」
男性は眉を下げながら、視線を不自然に泳がせる。
「え………………」
そして、自分の服装に目が止まった。
「な、何これ…………」
視界に入った光景に愕然とする。
下着姿にパジャマの上着を羽織っただけの状態。
前ボタンは全部開いているので、丸見えだ。
「な、な、なんで!!」
どうして、こんな格好に…………?
その下着でさえ、どこか妙にズレていて、フィットしていないような違和感があった。
布団のすぐ側には太い縄と、私が履いていたはずのパジャマのズボンが落ちている。
まさか………………
その予感に、目を見開いた。
隠すように自分の肩を抱き、長髪の男を見る。
「な に を……し た の ?」
男はむくりと体を起こして、私に向かい合った。
「ごめんね、沙羅が可愛くて、我慢できなくて…………」
なに……それ……………………
胸元がはだけた寝巻きから強烈な色気が香り立っている、そのじっとりと絡みつくような視線を向ける長髪の美貌の男性に、惹き込まれそうで怖くなる。
でも、こんな騙し討ちは許せない。
「……………………しんじ、られない。
優しい人だと思ったのに…………
寝込みを襲うなんて、最低っ!!」
「ほら、そんなに大声出したら……」
下腹部がズキッと傷んだ。
「え………………………?」
「痛い?
ごめんね…………」
申し訳なさそうにしているけれど、どこか暗い愉悦が滲んでいる。
…………!?
下腹部から、どろりと何かが染み出してきた。
横座りの体勢で傾斜が付いていたせいか、それは下着の隙間から溢れ出して、内腿を伝い落ちていく。
な……に…………?
少し座っていた位置をずらして確認すると、敷き布団に少し血の混じるシミを作っていた。
「や……………………」
シーツに付着しているのは、少し血の混じる半透明の液体。
それを目の当たりにして、頭が真っ白になる。
「ああ……………」
長髪の男は感嘆の溜息を零し、それを恍惚とした表情で眺めていた。
いくら男性経験の無い私でも、これがなんだか分かる。
信じたくはないけど、これは、この男の…………体液。
頭を鈍器で殴られたようなショックが襲う。
「可愛くて………………止められなくて、最後まで……ね」
「な…………………………」
私は、何も知らないうちに…………
…………………………失っていた?




