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異世界の住人3



禍々しい視線を感じて、背筋が震える。



「…ひ……………っ!」



今、あの赤くぎょろりとした目と、目が合った。



ああああ…………



あれは、間違いなく私を見てる。



確実に気づかれた。



その黒い異形の何かは、こちらに向かってグチャグチャと移動し始めた。



無数の手足を伸ばして、ぎょろりとした目玉をいくつもこちらに向けて。



に、逃げ、ないと!!



しかし体は金縛りにあったかのように、動かない。



「あ……あ……」



――ズサッ



腰が抜けてしまい、後ろに思い切り尻餅をつく。



駄目だ、逃げないと死ぬ!



早く!!



死の予感に体がガクガクと震えて、力が入らない。



見たくないのに、縫い付けられたようにアレから目を離せない。



それは、この世に存在しない醜悪な異形の何か。



「い……や……………………」



どうして、どうして、どうして………………



動いて、お願い、動いて、お願い!



気が狂って、叫んでしまいそう。



「あ……ァ……」



その時、背後から不意に声が落ちてきた。



「お嬢さん、大丈夫?」



全身が総毛立つ。



「いやあああああああああああああああああ!!!!」



もう無理もう無理もう無理



「お嬢さ……」



「キャアァァァぁぁああああああああああああああ!!!!」



助けて死にたくない助けてたすけて



「大丈夫、大丈夫だよ」



隣に人がしゃがんだかと思うと、背中をさすられる。



「急に声かけてごめんね、ゆっくり呼吸して、もう大丈夫だよ」



「ひっ………はぁ……はぁ…」



汗が張り付き、肩で息をしていた。



背中をさすられる手の体温が伝わってくる。



「大丈夫だよ、落ち着いて深呼吸して」



男性の声だ。



宥める低音はとても優しくて、少しずつ落ち着いてくる。



いつの間にか泣いていたらしく、涙を拭うと隣の人の顔が見えた。



真っ直ぐ伸びた長い黒髪、淡い色の瞳と目が合う。



え…………



どうしてだろう。



私はこの男性に、見覚えがある。




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