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異世界に迷い込んだ女子高生13



改札を出ると小さい道を挟んですぐ正面に、その小さな商店はあった。



木造平屋の商店はかなり年季が入っており、柱は所々腐食しているし、看板はもはや何が書いてあったのか分からないくらい錆び付いている。



しかし、商品は綺麗に並べられていた。



軽食やおやつ、飲み物、雑誌、新聞などが木製の雛壇の上に陳列されている。



よかった、タバコも売っているようだ。



しかし、雛壇の向こう側のお会計カウンターに店員さんの姿はない。



「すいません」



呼んでも、何の反応もない。



「すいません!!」



大きな声で呼んでみた。



しかし、何の音沙汰もない。



どうしよう……



辺りを見回すと、左端にお風呂場の椅子のような台の上に小さな紙と押しボタンが置いてあるのが目に入った。



紙には『御用の方はボタンを押してください』と書いてある。



その隣に、古びた赤い押しボタンがあった。



押してみよう。



赤いボタンを押し込むと、ピンポンと音が鳴った。



なんだか、クイズの回答ボタンみたいな音だ。



すると奥で何かが動くような物音が聞こえる。



恐らく、店舗の奥が自宅なのだろう。



ややあって、奥ののれんから白髪のおばあちゃんがゆっくり出てきた。



「はい、いらっしゃい」



かなり腰の曲がった白髪のおばあちゃんだ。



それもびっくりするほど小柄で、深緑色の和服を着ている。



「あの、お使いを頼まれてて、タバコを買いたいんですけど」



「はい?」



「お使いを頼まれてて」



「はい?」



「タバコを買いたいんですけど」



「はい?」



耳が遠いらしい、おばあちゃんは首を傾げるばかりだ。



「これください!」



私はタバコを指さした。



「200円だよ」



タバコってそんなに安いんだっけ。



私はお財布から200円を出すと、タバコを受け取った。



「はい、ありがとね」



白髪のおばあちゃんは、ヨタヨタとまた奥に引っ込んでいった。



ひとまず、おばあちゃんが目の前で霧のように消えなくて安心する。



一応、タバコが買えた!



そして踵を返し、駅の改札に戻ってきた。



あれ……駅員さんは……?



窓口を見ると誰もいない。



ついさっきまで駅員さんが居たのに、またいなくなっている。



辺りを見回すけれど、自動券売機は無く、あるのは古びた木製のベンチのみ。



仕方がないので、窓口に60円を置いておいた。



改札を抜けると、相変わらず下りホームには誰もいない。



上りホームの1番奥の柵にもたれ掛かる若いお兄さんの人影だけは見えている。



よかった、まだいた。



夕方の日は沈み、紫色の夕闇の空が広がっていた。



お兄さんに煙を起こしてもらって、私は帰る。



……大丈夫、これできっと帰れる。



タバコの箱を握りしめ、私は足早に跨線橋を渡った。





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