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異世界に迷い込んだ女子高生10



今のはきっと……夢だ。



崩れそうな足に力を入れながら、階段を降りる。



よかった、まだいた。



オレンジ色の椅子には、あちら側のホームから見えた、新聞を読んでいる割腹のいい中年男性が座っていた。



「あの、すいません」



「はぁ……毎日似たようなニュースばっかりで嫌になるよ。

いじめ自殺とか、子供の虐待死とかさ、嫌な記事ばっかりだ」



この人も、私の話を聞く気が無いらしい。



男性の読んでいる新聞を覗いてみると、いじめ自殺の記事が一面に書いてあった。



しかし、新聞の端を注意深く見ると、発行日付は15年ほど前の日付になっているのが見える。



なんで、わざわざ古い新聞を読んでいるのか、分からない。



「しかしどうしてかな、昨日も同じ記事を見たんだよ。

毎日こんな内容、飽き飽きしてるのにさ。

嫌な世の中だよなぁ……」



「あの!すみません!

私、ここから帰りたいんですけど!」



割と大きめな声で話しかけてみた。



「え?帰りたい?

そんなの、電車に乗ればいいだろ。

俺も新聞読みながら、電車を待ってるんだよ。

でも、ちょっと遅いな。

……別に家で待ってる人なんていないから、良いんだけどさ」



男性は胸ポケットから、くたびれた茶色い革の定期入れを出した。



二つ折りの定期入れを開くと、その中には女性と小学生くらいの女の子が笑顔で写っている写真が入っているのが見える。



「なんだか、ずっと待っている気がするよ。

長い間、ずっとね……」



また霧が解けるように、男性は消えた。



また……消えた。



そんな予感はしていた。



これは、見間違いなんかじゃない。



間違いなく目の前で、消えてしまった。



現実では、ありえないことが起きている。



これは……やっぱり、夢だよね。



きっと、現実の私は電車の中で眠っていて、悪夢を見ているんだ。



そのほうが、よっぽど納得できる。



こんな夢、早く終わらせて……目を覚まして。



目を閉じて祈った。







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