第5節 戦争終結
光介は、奈落の巨人を打倒した。
そして、反乱軍の王候が持つ宝石も手に入れ、とうとう七大宝石が全てそろった。
偽りの月が落ちたことで、大陸北にあった奈落の大穴は巨人とともに塞がり、奈落の民はもう水銀の国を襲う事はない。
そして、なによりこの世界に本当の昼がやって来た。
これまで朝の一時しか太陽が地表を照らさなかったためか、人々は皆眩しく感じているようだ。
農作物などの生産性はきっとあがり、世界は豊かになるだろう。
いや、太陽の恩恵はきっと人々の心にも明るさをもたらすだろう。
日の光とはそういうものだと思う。
この世界は変わって行く。
きっとこれまでの歴史になかった時代・世界が来る。
そう思わずにはいられない。
戦争が終わっても、数日経った今でも帝城では、新帝、伯爵、マテリア、瑠璃、それにこちらへ呼び出されているエメル公爵、ルビー候、サファイア候、正気を取り戻した黒鉄候、新たな白金候となった子息などが集まっている。
ともに、今後の体制、建て直しについて話合っているようだ。
光介も呼ばれたが、正直、政治の話には興味がないので断った。
結果としては、今後のことが色々と決まった。
マテリアが聞いた話では、各国の領地と爵位は旧体制に戻す。
ただし、7つの宝石のうち、アメジスト、ガーネット、アクアマリンは皇帝が預かる事とする。
そして、三カ月に一度帝都で行われる議会を拡大して設置するので、各国の王候はそれに出席し、常に大陸の状況・問題点などについて話し合う。
これだけの事があったのに、反乱側の王候にとても寛大な処置と言わざるを得ない。
しかし、憎しみの連鎖を断ち切り、恒久の平和を目指すにはそれが正しいのかもしれない。
人間中心で暮らしたい人は、オーラムやトパーズへ、純粋魔族や魔族だけで暮らしたい人は、ハロゲンタムや、エメルへ向かう。
そして、共存を望むものは、帝都や帝国の各候国、もしくはアーゲンタムで暮らすようにということが推奨された。
帝都はハーフやその子孫を、帝国内の各候国も4国それぞれで微妙に方針に違いがあり、同じ共存といっても多少の違いがある。
それらの多様性を世界に持たせることで、不平・不満が起きないように考えられている。
また、同一の思想で各国が固まると以前と同じ、国家間の争いに発展してしまう可能性が出てくる。
それを防ぐために、帝都に各国の警察機構を除いた軍隊を全て集約することになった。
全国家は軍隊を放棄したのだ。
文民統治を進め、王候の役目は、外交と国民が割れた時の仲裁や最終的な判断を仰ぐ象徴的なものになった。
それでも国民の期待や尊敬を集めて、国を一つにまとめる。
そういう役割だ。
国家間の対立が発生した場合は、あくまでも中央議会で話合いによる決着とする。
また、奈落の民などの外敵が来ないとも限らないので、帝国主催の武芸・法具による武道大会なども開かれるらしい。
そして、それらが決まって合意がなされると諸侯は自国へと帰っていった。
伯爵もその一人である。
七大宝石の魔法やゲートについては、興味がないといい、
「勝手にしろ。
ああ、これでベリルのところへいつでも行ける・・・・・・」
そういってカルスやエメル公爵とともに、帰路についてしまった。
会議が終わって伯爵も帰った後、光介は新帝に七大宝石の魔法を使わせてもらう約束を再度確認しにいった。
もちろん約束通り新帝は準備してくれていた。
ただしチャンスは一度だけだ。
諸侯のオリジナルを一時的に預かっているだけのこともある。
これも光介たちの戦功による特別な措置だった。
マテリアや瑠璃はとうとう来る時が来てしまったと不安を隠さない。
なぜなら光介はまだ彼女たちに何も話していないのだから。
それから間もない日の夜、帝城の屋上で、新帝から預かっているアクアマリンを除いた七大宝石がはめ込まれた金剛の杖を借りた。
とうとうゲートを開く時が来たのだ。
杖にアクアマリンを嵌めると、その杖は七色に光りを放ち、その光は先端にあるダイヤモンドのあたりで輝きを増している。
ダイヤモンドが光をあらゆる角度に屈折させ、回転しながら虹色の光線を夜空に伸ばしている。
俺は、指輪をはめた状態で思いを込めて、杖を振う。
回転していた虹の光は大きな橋を夜空に作り出し、その入り口のあたりの空間に大きな霞がかった空間を徐々に広げている。
そして、ついにゲートが開いた。




