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第3節 その2 虹色の光と水晶

何分ぐらいみていたのだろうか。


一〇分ぐらいか、実は三十秒ぐらいだったのか、時の止まったようなこの場所でマテリアはふと我にかえった。


この石は高く売れるだろうか?どこに持っていけばよいだろうか?こんなに綺麗ならきっとたくさんの銅貨と交換してくれる。


薪運びの車を持っていくべきだろうか。


食べ物は何を買おうか?そんなことを考えていたら、急激な空腹が襲ってきた。


でも食べるものなんてない。


今日は、もう寝よう。


枕を頭の下にあてがい、まだ少し暖かいこの石を横に起き、マテリアは眠りにつく。


しかし、体は限界だった。


熱もあるようで頭がクラクラする。


そして寒い。


明日の朝ちゃんと元気で目覚めることができないかもしれない不安がおそってくる。


さっきはあれほどどうにでもなれと投げやりになっていた自分が、ご飯も食べられず、この隕石を手放すことになることは、とても辛いことだと感じ始めていた。


隕石はとても綺麗だ。


ご飯に変えてしまうのは間違っている気がしてくる。


通行証と同じで、あっという間になくなってしまうのではないか?そんな風に考えつつ、ただただ石を見つめていると、自分の中の色々な気持ちがどんどん湧き出てくる。



姉にこれを見せたかった。


街の人に自慢したかった。


家のベッドに飾りたかった。



そんな幸せな気持ちをもう持てないとわかるからこそ、また少女の目には涙が溢れる。


「幸せに・・・・・・なりたい」


思わずつぶやきが漏れた。


その声を出すのに体の全ての力を使い果たしたのか、マテリアのまぶたは再びとじ始める。


半開きのまなこには、綺麗な虹色が差し込んでくる。


まるで窓辺に差し込む朝日のようだ。



(ああ、もう夢の中なのだろうか、こんなにも眩しい。天国にいけたのかな?)


マテリアの意識はほとんどなくなっていた。


しかし、その意識を無理やり呼び戻すかのように光は強く、夜目に慣れていたマテリアの目は強く痛み出した。


目を開くと、隕石が実際に虹色の光を放っている。


そして、その光はゆっくりと回転しているようにも見える。


隕石の回転速度と輝きは徐々に加速していき、回っていると認識できる限界と思ったと瞬間、その光は三百六十度全方位に大きくはじけた。


石がある地面の底から、はるか上空の月のすぐそばまで光の柱は伸びている。


その光が伸びきったと思ったら、今度は一気に収束して、光を石が吸い込んだ。


光の柱が無くなった後、石があった場所、マテリアのすぐ横にゆらゆらとゆらめく虹色の空間ができた。


そして次の瞬間、虹のゆらめきの中に、四角い箱のようなものが見え始めた。


マテリアの背より少し低いぐらいの鉄の箱だ。


だんだんゆらめきの中の箱の輪郭がはっきりしてくる。


箱の上には木の板がついている。


テーブルのようだ。


虹色の光が完全に消えたとき、その背の高い鉄のテーブルが残っていた。




「えっ?えっ?」


マテリアは石を探した。


こんな訳の分らない箱はいらない。


あの綺麗な石は花火だったのか?手品?そんなことはどうでもいい。


石はどこ?という思いが、マテリアの体を動かした。


そして、木の箱の裏側を覗いた時、マテリアは、はっと息を飲んだ。


そこには、自分より少し年上くらいに見える少年がうずくまっていた。




「ゴホッゴホッ・・・・・・」咳をしている少年はこちらをみない。


マテリアが問いかける。


「石はどこ?」


少年がゆっくりと顔を上げる。


そして目を見開く。




「KR()+E#$+SFU+JR~|=*”」


何かを言っている。


「石はどこ?」


マテリアはおかしいと思いながらも、自分の口は動いている。


もう一度石について訊く。



「“UR%」、W#J+FJ) *PFO` PEI) FAPS )(、{} GK」


少年が、今度はゆっくりと何かを話しているが、何を言っているのか言葉が全くわからない。


どうも少年は人間のようだが、意思疎通の耳飾りをつけていないようだ。


私と言葉が交わせるわけがない。


「ちょっと待ってて」


マテリアは、走って姉の墓まで行き、そこに添えられた小さなイヤリングをとってくる。


「これをつけて」


マテリアはそう言うと小さな手に持っているイヤリングを少年に差し出す。



「FJIL. PFO` PEI) FAPS )(、{} GK」


少年は何かを言っているが、イヤリングを受け取ろうとしない。


「しょうがないなぁ。


はい、私がつけてあげる。」


マテリアはイヤリングを少年の耳につけた。


なにか少年は叫んだり、身構えていたが、拒否しているようではなかったので、それほど時間をかからずつけることができた。


「いや、くすぐったいよ。


なんで僕が女の人みたいに、イヤリングをつけるの?ああでも、言葉が通じないみたいだし、どうしよう。


恥ずかしいな。


・・・・・・それにしても、冷たいな君の手。


とても寒そうだよ。


大丈夫?」


「寒いわよ、変なお兄ちゃん。」


マテリアはやっとイヤリングを付け終わり、両手を腰に当てると呆れ顔で返事をした。




「あれっーーー?!言葉が通じる!??」


少年はびっくりして口あけたまま少女の顔をみている。


「石はどこ?虹色の隕石があったの?光ったと思ったらお兄ちゃんと、この変な箱に変わっていたの。


少女は先ほど起きたとても不思議な事を思い出し、少年に答えを求める。



「石?いやそんなものは無いけど・・・・・・」


少年は身の回りを探ってみる。


座っていた自分のお尻の下や、リュックの中も逆さにして、見てみるが、カロリーメイトとコンビーフの缶があるだけだった。


カロリーメイトを見たマテリアは、すぐに飛びついた。


匂いなんてしないはずだから、この子の直感かもしれない。



「これ?何?食べ物?」


マテリアは少年に食いつくように訊く。


その口からはちょっぴりよだれが垂れている。



「えっ?ああ、カロリーメイトだよ。


食べ物だよ。


知らないの?カロリーメイト?フルーツ味はこの辺はまだ売ってないとか?」


そう言ってみて、カロリーメイト自体を知らないこの少女に、とんちんかんなことを言ったことを後悔した少年は、


「もしよかったらあげるよ。


食べるかい?」と物欲しげな少女に、優しい気持ちで語りかけた。



「いいの?あれ?これどうやってあけるのかな?ああ、この中のこれだね?ありがとう!」


そういって、ごそごそしたあと、少女はカロリーメイトを一本ペロッと食べてしまった。



「美味しいね。あまい果物の味がする。少しパサパサするからお水が欲しね。汲んでくる。」


少女は元気を取り戻したのか、スタスタと走って小川の方へ向かう。


腰にぶら下げていたマグカップを使い、手慣れた手つきで川の水を汲む。


「これ持ってて。」


といって、マグカップを少年に手渡す。


そして、もう1本のカロリーメイトを食べてから、


「はい。お水ちょうだい。」


と手を伸ばし少年からマグカップを受けとるとゴクゴクと水を口に流し込んだ。




「ふうー。生き返った。

もう何日もなんにも食べてなかったの。

もう死んじゃうところだったんだ。」


大きく息を吐き出した後、少女は満足そうに眼をつむり、食事の余韻を楽しいでいるような満足げな顔でうっとりしている。


とんでもないことを言われた少年は、ふと我に返り、鉄のテーブルから外へでてあたりを見回した後、びっくりした顔をして早口で急き立てた。



「君は誰? ここはどこなの?」


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