第9節 その2 青銀の師団
銀の師団の遠距離攻撃が奈落の民の軍勢に、矢の雨を降らせると、待機していた奈落の民の軍勢およそ一万が押し寄せてきた。
地下にいたやつらとは違い、剣と楯を持って武装している。
カルスは迂回して、中央都に潜入している。
そしてドラゴンが飛んでくる。
ドラゴンのファイアーブレスが本陣をおそうが、伯爵がそれを片手で薙ぎ払う。
そして、大ジャンプして、ドラゴンの注意を誘う。
襲ってくる奈落の民。
ゴートは召喚されていない。
俺はマテリアに渡していた形見の指輪を伯爵(カルスが持っていたのだが)から、返してもらうとそれを同じ指に着ける。
そして、指輪がほぼ連結した状態になった後、槍と真珠のチョーカーを装備した。
アクアマリンは瑠璃に渡してある。
槍は地下迷宮で手に入れた対奈落の民仕様だ。
そして、右腕に伯爵のシルバーブレスレットを装備して、叫んだ。
「サモンセルフ!!!」
ゴートが青白いオーラをまとい現れる。
そして、ゴートは、今度は槍を持っている。
そして、オリジナルのブレスレットこそ無いが、装備は本体である自分と同様。
いつものように体も透けてはいない。
伯爵が作戦説明の際に言っていたとおり、100%のオスミウムが完全な分身を生み出した。
そしてさらに、腕輪を高く掲げ、ゴートに向かって叫ぶ。
「マルチプリケーション!!!」
その瞬間、ゴートが大量に増殖していく。
分身は倍々に増えて行き、瞬く間に1万の分身となった。
そして、ゴートの軍勢は新たな師団、《青銀の師団》として、奈落の民に向かって突撃していく。
激突する1万VS1万。
青銀の師団の強さは圧倒的だ。
あの奈落の民がどんどん倒れて行く。
「よし成功だ!」
オリジナルのゴート、瑠璃とともに、俺たちも中央都へ乗り込んだ。
マテリアの元へ急ぐんだ。
エメル公国の首都である中央都は、城塞に囲まれているわけではない。
しかし、城塞都市と比べ、はるかに広く高い建物も多い大都市だ。
しかし、現在は戦争をさけた人々が難民となり街を去り、住民はほとんどいない。
都市の中央にある森林に囲まれた場所に、公爵の城はあった。
城の屋上まで、一気に駆け上がった時、そこにはカルス、マテリア、そして、エメル公爵がいた。
マテリアは捕縛され、エメル公の呪縛魔法にカルスも動けなくなってしまっているようだった。
そして、目の前で、エメル公の杖からほとばしる緑色の閃光、攻撃呪文だったのだろう、直撃したカルスが粉々にされた。
「カルス!!!!!」
俺は自分のために何年も訓練をしてくれたカルスに正直、伯爵以上の尊敬の念を抱いていた。
そして、自分のことを息子のように厳しくも優しく鍛えてくれたそのカルスが今目の前で、粉砕された。
「ちくしょう、ちくしょう!!」
俺は怒りにまかせて公爵に突撃しようとした時、上空からドラゴンがあらわれた。
伯爵は負けてしまったのだろうか?ドラゴンがファイアーブレスの体勢に入った。
まずい。
そして、エメル公爵もこちらへ攻撃をしようと攻撃の体勢をとっている。
「ガーデン!!」
瑠璃が叫ぶ、緑色の植物が群れになってドラゴンを縛り付ける。
「今よ!」
瑠璃は、再生魔法をカルスにかけている。
「おおおおおお!!!」
ゴートが、先に突撃していた。
俺もその後を追う。
エメル公爵の攻撃がほとばしる。
しかし、その攻撃をゴートは、槍で薙ぎ払う。
しかし、逆の手にある杖から捕縛魔法がゴートを襲い、動きを止めてしまった。
「コースケ、行くのだ!マテリアは無事だ!」
伯爵はマテリアを助けていたのだ。
(あの人がドラゴンに負ける訳なんかないか・・・・・・)
俺はニヤリと笑ってしまった。
伯爵にとって、最優先はマテリア。
それはとても素晴らしいことではないか。
俺の槍は公爵の攻撃魔法も、捕縛呪文も切り裂いた。
そして、全身を回転させ、槍の遠心力を全開にして、公爵を防御する2本の杖ごと薙ぎ払った。
公爵は屋上の端まで吹き飛び、気を失った。
ドラゴンは消え去り、青銀の師団は、奈落の民をせん滅した。
ゴートの捕縛も消え去り、カルスは首から上だけは再生した。
銀の師団が一気に中央都へ乗り込み、残っていた奈落の民以外の緑の師団を捕縛した。
瑠璃がガーデンで、公爵を拘束し、両手の杖も回収した。
ふと後ろからマテリアが飛びついて来た。
伯爵が何かを言っているが、気にならない。
俺は両手で彼女を抱き上げ、再会とこの大きな勝利を喜んだ。
ゴートは、大の字で寝ていて、なぜか瑠璃に蹴られている。
マテリアに瑠璃を紹介しよう。
そして、家に帰るんだ。
マテリアにどこから話をしようか、今はそんなことで頭がいっぱいになっていた。




