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第5節 その2 ゾンピの群れ

 パーサイトは、標識からは、それほど遠くはない場所に、小さな吊り橋を渡った向こう側にあった。


とはいえ、吊り橋自体が倒壊していたため、槍の端にロープをつけて、向こう岸の大木に投げつけて、突き刺し、反対側をこちら側の橋の基盤に結び付けて、綱渡りをする羽目になった。


帰りのことを考えて、大木にロープを縛り付けておいた。


そうして、俺はパーサイトの入り口までやって来ることができた。



 パーサイトも廃墟かと思うような古い街であったが、チラホラと人影がみえる。


念のため、マフラーで顔半分を隠しながら、声をかけた。




(考えてみたら、あいつは農民のような服一枚に槍装備か・・・・・・、ちょっと怪しいな。)


2日前に分れた相棒の事を、ふと思い出したが今は自分の調査に集中だ。




「すみません、旅のものですが、ここはパーサイトですよね?」


老人に声をかけた。




「ええ、そうです。


どちらからいらっしゃいました?あなたが来た南側は封鎖してあり、人は来られないはずです。


デイサイトの死霊どもから街を守るため、吊り橋を壊して通れないようにしていたのです。」


老人は少しうろたえ気味に訊いてきた。




「えっ?!ええ!もちろん、吊り橋は壊れていましたよ。


法具を使って、飛び越えたんです。」


(そんなことがあったのか。


嘘をついて悪いが、橋自体は壊れている。


とりあえず、余計な心配はさせない方がいいな。


しかし、デイサイトが死霊の都市だって。


あそこのカタコンベから夜な夜なゾンビや骸骨が起き上がるということなのだろうか・・・・・・・)


「そうですか。


とにかく、この街の傍にもときおり死霊がでるという噂です。


なので、夜は出歩かないようにした方がいい。


そうだ、今日はそこの家にでも泊まるといい。


今は空き家だから。」


「ありがとうございます。


ちなみに、このあたりを治める男爵様はなんというお方ですか?」


「デイサイトにいた、オブジディアン様です。


しかし、もうお亡くなりなられて、後継ぎもいないということです。


ですから、実際は、この街の北にあるジェイドにいる男爵様が領主ということになっています。


お名前は良く知りません・・・・・・」


老人はそういうと立ち去って行った。


俺はジェイドまで足を延ばすか悩んだが、明日の夜には国境まで戻らなければならない。


今回は此処までいいだろう。


老人が勧めてくれた家で休んで、早朝には国境の宿屋へ向かって戻ろう。


俺は、空き家で一晩過ごすことにし、早めに眠りに就いた。






 物音でふと目が覚めた。


遠くから足音が聞こえてくる。


一人ではない。


数十人はいるだろう。


この家の周りの全方向から聞こえてくる気がする。


今まで眠っていたため、まだ寝ぼけてはいたが、その異常な足音から尋常でない殺気を孕んでいることが感じられ、立てかけていた槍に手を伸ばす。


その時、扉からノックの音がした。




「はい、どちらさまでしょうか?」


俺は不安いっぱいな気持ちで、応える。




ドンドン。


ガンッ!それは、ノックなのか?と思われる強烈な勢いでドアが叩かれる。


良く見ればこのドアやこの部屋の中はかなり乱れていた。


自分が罠に嵌められたことに気付いた時には、ドアがあけ放たれ、白目をむいた昼間の老人が牙をむいていた。


うめき声はその後ろから大量に聞こえてくる。


俺には分かった。


こいつらはアンデッドだ。


すかさず、槍の宝石を入れ替える。


アクアマリンを槍に嵌めた瞬間飛びかかるゾンビの攻撃をかわし、反撃をする。


この武器があれば、もともと動作の鈍いゾンビが何体いても、どうということはない。


そのまま家の外に飛び出し、家を取り囲んでいた何十体ものゾンビを全て、斬りはらった。


遠くの方で呻き声が聞こえてくる。


このあたりは、もう死霊の巣窟になっているようだ。


とにかく離れるしかない。


かといって南のデイサイトはまずい。


北にあるというジェイドという都市を目指すしかない。


少なくともあのカタコンベの死体が全て襲ってきたら、今の俺でもさすがに苦戦するだろう。


そう考えると直ぐに、村の北側へ走り出す。


途中何体かのゾンビを薙ぎ払ったが、村の外へ出てからは、襲ってくるものはいなかった。


とはいえ、朝までは危険だろう。


昼間のゾンビはあの老人のように人に化けて、もしくは人であった時の行動を覚えているのか、人間らしい生活をしているのかもしれない。


詳細はもちろん不明だが、朝になればいきなり襲ってくることはないだろう。


国境へ戻るという約束が果たせないのは残念だが、致し方ない。


俺はとにかく北へ急ぎ、明け方まで走り続けた。


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