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第4節 その1 ゴートと瑠璃の冒険


「・・・・・・ゴート、・・・・・・ゴート、起きて」


「ううん・・・・・・、むにゃむにゃ・・・・・」




「おおっ?!おはよう・・・・・・ございます。」


怒った瑠璃の声に、一気に目が覚めた。




 「おはようございます。


ゴート。


昨日はよく眠れましたか?」


天窓から差し込む朝日の光の下で、瑠璃は眩しいほど素敵だった。


ああ、昨日俺はこの子に、一目惚れしてしまったんだ。


そして、今日もまた会えた。


こんなに嬉しいことはない。




「ああ。


まあね。」


適当に答えながら、瞼をこする。


これからは彼女といる時間を、たとえ1分たりとも無駄にはできない。




「・・・・・・その昨日は、ありがとう。


実はお腹もすいていたの・・・・・・」


「ああっ、やっぱり?なんか『ぐうー』とか聞こえたかなって、思ったんだよね。」


「ん!!そんな音なんて出しません!!・・・・・・でも、出ていたかも、しれませんが、その、失礼なことは言わないでください。」


瑠璃は恥ずかしそうに応える。




(女性に対して失礼だったかもしれない。


そして、この人は、きっととても正直なんだ。)


「ああっ!ごめん。


そういう意味じゃなくて、というかそう。


俺たちは調査とか、これから色々やらなければいけないだろ?体力はつけなきゃいけないしね。


それに今日は朝から作戦をたてなくてはいけないんだぜ。


そうそう、よかったら朝飯を食べながら、作戦立案なんてどうだい?・・・・・・あの、そういう意味じゃなくて。」


俺は、ちょっと混乱してしまった。


正直マテリア以外の女性とまともに話をしたことなんてない。


マテリアは妹みたいなもんだし・・・・・・。




「そうですね。


何が起こるかわかりませんよね。


私も、しっかり旅の準備をしてくれば良かったと後悔しています。


水も食糧も何も持たずに、ほんと抜けていました。」


今日の瑠璃はとても素直だった。


彼女のために、何かをしてあげたくなる。




「よし、じゃあ瑠璃がお待ちかねのご飯にしようか。


水はまだあるな。


食べ物は、このクラッカーでいいかな?2枚ずつっと。」


僕は瑠璃に手持ちのクラッカーを半分渡した。




「だから、そういう言い方はしないで!」両手を膝に突き、反抗的な態度でこちらに顔をにゅっと近づけて圧迫してくる。


これが瑠璃の怒っている時の癖のようだ。




「まぁまぁ、俺はこんな感じだから、気にしていると何にもできないぞ、妹ぐらいしか女の子と一緒に過ごした経験がないんだからな。」


俺は正直に開き直った。


実際そうだし。




「私だって、男の人と暮らしたことなんてありません。


だからって・・・・・・・、ごめんなさい。


今はそんな事どうだっていいですよね。」


「いや、いいさ。


楽しくしよう。


せっかくこうやって瑠璃と出会ったのも何かの縁かもしれないしな。


・・・・・・いや、別に、その深い意味はないんだけど。」


今なんか、まずいことを言ってしまったかもしれない。


ごまかすために、クラッカーを口に放り込む。




瑠璃もちょっと気まずそうだった。


俺は、直ぐに話を変える。




「それじゃ、早速本題だ、食べながら聞いてくれ。


俺はもう食べ終わったからな。


先に提案させてもらうぜ?」


瑠璃はクラッカーをモグモグとたべながらフムフムと頷いている。




「よし、まず、俺は、この村の家の中は見ていない。


なので、いくつかの家をじっくり確認してくる。


そうできるだけ村の四方だ。


もしかしたら、時間差がわかるようなものがあれば、そこから、なにか、たとえば犯人がいるとしたら、どっちから来て、どっちへ行ったか、おぼろげながらでも方向がわかるかもしれない。」


瑠璃はフムフムと頷いている。




「それに、瑠璃にしたって、昨日の夜では暗かったろうし、朝の明るい時間なら新しい発見もあるかもしれない。


そう、もう一度現場をみることで、何か見つかるかもしれない。


俺の生まれた国のことわざに『現場百遍』というのがあるくらいだからな。」


俺は少し調子に乗っていた。


瑠璃に、記憶が・・・・と突っ込まれかけたので、言葉を遮り話を続ける。




「最後に村中の地面を見て回る。


村人全員がいっぺんにバラバラと離散したのか、していないのか不明だが、足跡やら何やらが残っているかもしれない。


大勢の人が通ったのなら、痕跡ぐらい残っているかもしれないし。」


「そうね。


全面的に賛成よ。


さっそく行きましょう。」


瑠璃は水を飲んでクラッカーを流し込むと、軽快に返事を返す。


上手く説明できた自信がなかったが、あっさり了承された。




(俺たちもしかして、コンビネーションいい?)


「よし、その水筒は持っていてくれ、後はこの残りの食糧も。


念のためだ。」


「ありがとう。


でも、いいの?」


瑠璃は申し訳なさそうに訊き返す。




「俺はどこの水でも飲めるし、食べ物もまだ持っているからな。」


まあ、ばればれの嘘だった。




「それより、まずはどの家からいくか、案内してくれるか?」


照れ臭いので話を逸らした。



「ありがとう・・・・・・あっ、うん。


・・・・・・ついてきて。」


瑠璃は颯爽と礼拝堂の出口へ向かって歩きだした。




「瑠璃、これ君のじゃないかな・・・・・・」


昨晩彼女が体にかけて寝ていたマントがある。




「ひっ!・・・・・・早く行くわよっ!」俺の手からマントを奪い取る。




早速、マントを忘れて行く瑠璃だった。


やっぱりこの子は少し抜けている?



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