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第2節 その2 マテリアの家出(初めて)

 どれくらい眠っただろう。


日は高いので、もうお昼ぐらいか。


川まで行って水をのみ顔を洗って、家に戻ると、中はまるで何十人もの大人がハンマーやノコギリを使って暴れまわったのだろうか、と思われるほど荒らされていた。


そこにはもう残骸のようなものしか残っていなかった。


ベッドがあったところに、何かが書いてある紙が貼ってあった。


字は読めないけれど、数字らしいものが書かれていた。


大体なにがあったかマテリアなりに考えた。


泥棒だったら、書き置きなどはしないだろう。


おそらく姉はこっそりお金を借りていたりしたのだろう。



「もうここにはいられない。」


漠然とそれがわかり、残骸の中から唯一の自分の所有物である汚れてしまった枕を持って、この家だった場所を出た。


家の中を見た時にはマテリアの目には涙が溢れていたが、枕を拾い上げた時に、悲しみが一気に溢れ、声を出して泣き出してしまった。



ここ城塞都市の中は、かつては人が大勢いて、みんな楽しく暮らしていたそうだが、今はそんな楽しそうな人はいそうもない。


みんな貧乏で、食べ物も持ち物も誰もが持っていない。


「悪いことをしたり、一人で歩いていたり子供がいるとね、城塞都市の兵隊さんが連れて行ってしまうのよ。


わかった?だから一人で街を出歩いたり、悪いことしたりしちゃだめよ。」


姉によく言われていたことだった。


今は一人で目的もなく街を彷徨っている。


そんなマテリアを見つけにでも来たように、見回りの兵隊が二人組みで街を歩いている。


この町の警察だ。


他の住民たちとは違う雰囲気を持つ兵隊は見た目も怖い。


こんなことなら、姉に、「悪い子は兵隊さんに、いったいどこに連れて行かれるの?」と聞いておけばよかったとマテリアは思った。


むしろ、今からでも誰でもいいから教えてもらいたかった。


楽しいところとは思えるわけもなく、兵隊達がより多くいる街の中央へは当然いけなかったし、どのみち街の中には、マテリアがご飯にありつけるようなところはなさそうだった。


マテリアは行くあてもないまま、街の外側へ向かった。


この城塞都市の門には兵隊がやはり二人いて、門番をしている。


街の外から出るぶんには何にも言われないが、通行証が無いと街には決して入れてくれない。


しかし、マテリアはもう通行証を持っていなかった。


さきほど、パンと交換してしまったからだ。


パンを3つもくれるならとお腹の空いたマテリアは思わず交換してしまったが、こうなると困ってしまう。


パンはもうとうになくなっている。


だから街の外ぐらいしかもうご飯のある場所や寝場所が思いつかない。


結果的にこの街に帰れなくなるとしても、もうそれ以外選ぶことができなかった。


マテリアは、何の保証もないままこの城塞都市を出てしまった。

 


もう街を出て何日たっただろうか。


冬のこの時期に、森に食べ物はなかった。


そこに道があるという、《人の作った何か》に人と食料の期待をして、ひたすら道を歩いている。


一日歩き続けると、次の日はまた、城塞都市の方に向かって戻ってしまう。


あまり遠くに行くのが漠然と怖かったのだ。



(今日も何も食べることができなかった。

今日も誰からも声をかけてもらえなかった。

今日も誰も私の声を聞いてくれなかった。

今日もお腹がすいて寝られないのが、怖かった。

今日も寒い夜を過ごすのが苦しかった。


今日は頭が痛い。喉が痛い。風邪をひいている。

今日は熱がある。

肘や膝や足首が痛い。

痛い。

痛い。)



 とても苦しそうな、何でもいいから食べさせてくれと言っている声のようにぐぅーぐぅーと音がする。


もちろんマテリア自身のお腹からその音は鳴っているのだけれども、何か他人事のような気がしていた。



 「私のお腹、こんな音出す元気あるなら、もう少し我慢して・・・」とつぶやいたあと、余計な体力を使ったかなと後悔してしまった。


正直そんなことどうでもいいし、体力なんてどのみちもうずっと空っぽと思っていた。


体も頭もボーっとしてきた。


足だけは自分の意志とは別に、歩き続けている。


いつから自分の足に命令すらできなくなったのだろう。




とうとう体が足から崩れ落ちしまった。


道の脇の草むらに倒れこんでしまった。


ばったりと倒れて、顔を打ったが、もう痛みもよくわからない。


極度の疲労・空腹・眠気が体を麻痺させているのかもしれない。


もうどうでもよい、一歩も動けない。


眠いし、お腹もすいているけど、眠さの方がましてきた。


マテリアはそう考えながら少しでも早く眠りについて、今の自分にとって唯一の楽しみである《夢の時間》が、楽しいものである事。


それを心から願っていた。


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