第1節 その1 伯爵からの褒美
光介とマテリアが全ての依頼を達成した後、二人は城塞都市に戻った。
1日ほど自分たちの家でゆっくりと休息をとった。
久々に帰った家は伯爵の方でメイドさんを手配して整えていてくれたらしく、綺麗に手入れされていたおかげで、ゆったりとした気持ちで過ごす事ができた。
次の朝、とりあえず伯爵の元に報告に行こうという話になり、白銀の塔へ向かった。
ミッションを完遂した二人が来ると、伯爵は大いに喜んだ。
何よりマテリアに会いたかったようで、奈落の世界へのゲートを閉じたことや、伯爵の槍を取り戻し、こうして持ってきたことも、正直伯爵にとっては、どうでもいい、というような態度だったため、光介は正直残念だった。
(1年以上もかけたのに。
しかも大切な槍ではないのだろうか?)
そんな光介の心を見透かしたのか、伯爵が珍しく光介に声をかけてきた。
「コースケ。
今回の褒美でも欲しそうな顔をしているな?ああ、分かっている。
今回の褒美は、お前の体にある、もう一つの病巣を取ってやることだ。
しかしながら、私の見立てでは、それはかなわん。
もう少し体が成長し、体力をつけないと私がせっかく準備した術式を使っても、死んでしまうかもしれん。
なので、その槍を貴様に授けよう。
オリジナルの法具ではないが、二つの宝石を嵌める穴があるだろう。
その槍は、その宝石の力を組み合わせる力がある。
もちろんなんでもという訳にはいかんし、むしろ中々そのような相乗効果を発揮できる組み合わせを見つけられないだろう。
今付いている、その《シトロン》は敵をスタン(麻痺)させる効果を持っている。
それほど強い力は持った石ではないので、あまり期待はするな。
そしてもう一つの石は私が作った《ジルコニア》だ。
まあ人工的につくったダイヤモンドだ。
とはいえ、まばゆい閃光を放つ事ができる。
まあランプ替わり程度にはなるだろう。
実際、私はそのように使っていたのだからな。
そしてその槍を使いこなせるように訓練に励め、そうして自分が十分にそれを使いこなせるようになったら、私のところに来い。
今度こそ、その腫瘍をとってやる。」
伯爵は、さあ、これで用事は済んだとばかりにマテリアの世話をしている。
どうも手料理を作って待っていたようで、テーブルの支度やらを楽しそうにしながら、マテリアに旅の話などを聞いている。
マテリアの話は本当に些細な話だったが、それがとても偉業のように伯爵は感心したり、驚いたりしている。
そして、伯爵、マテリア、光介に加え、呼び出されてやってきたクプラムの4人で、今回の旅の報告会兼ミッション完遂の祝賀会が開かれた。
その席の中で、既に交易が続々と始まっていることや、城塞都市へ移住してくるものが増えてきていることなどが話題になった。
光介は自分がこの街の役に立ったことを誇りに思うと同時に、また鍛冶屋で働きながら、槍の訓練もしなければならないな、これは忙しいぞ、などと考え始めていた。
マテリアは料理に夢中で、今後についてはまだ考えていない。
そうして、2時間ほどの晩餐が終わったあと、伯爵は3人に話しかけた。
「明日にでも告知して欲しいのだが、3日後の正午に私から都市の皆に話したい事がある。」
クプラムが承知しました、とその告知の仕事を承ると、伯爵は部屋の奥へ戻っていった。
光介とマテリアは家に帰る途中に、伯爵はいったいどんな話をするのだろうか?とお互いの予想を話していたが、これといって思いつくことなどはなく、結局家に帰った後も、気にはなりながらも疲れて寝てしまった。




