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第8節 その1 スライムマン

地下ダンジョン47階から48階への階段付近。


《奈落の怪物》をなんとかやり過ごしたが、とても安全な状況とはいえない。


なんとか帰還しようとしても、僕らと奴がお互い最短ルートを通るなら、ここが迷宮と言っても一本道を歩くのと同じだ。


上に向かう途中で、鉢合わせする可能性は高い。


事前に奴が目視できた時、そこが運良く分岐路手前で、隠れる場所がある可能性も考える事は出来るが、復活し始めた魔物たちに見つかるかもしれない。


奴以外の魔物でも、深い階層では簡単に倒せるほど弱くはなく、ただでさえおびき出しては、一匹ずつ仕留めてきたのに、もしも見つかった場合、同時に相手をするのは、かなり無理がある。


そう考えると、後は下を目指すのみ。


その場合、もう一匹が戻る前に、けりを着けなければならない。


つまり、悠長に考えている時間はないはずだ。






作戦が決まった。


僕らは召喚した分身とスライムマンに、出来たばかりの作戦を説明した。




僕がまず一番先に飛び出し、右側から敵に向かって叫ぶ。




「うわあああああああ!!!!」


怪物はこちらを向いた。


思った通り、槍の前にいる敵は動かない。


だが注意が引ければ十分だ。


その隙に、分身が正面から近づいて行く。


そして、奈落の門番ともいえるその怪物は、すぐ目の前まで近づいてきた分身にようやく気付き攻撃しようと動き出した。


その時僕も奴の右側から挟み撃ちにするように、攻撃を仕掛ける。


敵の反応は素早く、長剣の一撃が届く前に、こちらをにらみ返し、威嚇してくる。


分身はそこを攻撃し、腕を切りつけた。


斬撃はその丸太のような腕に傷を与えるが、あっさりと振りはらわれた。


ダメージはわずかでもあるのだろうか?しかしこちらもそれくらいの覚悟はしていた。


僕はその時、アキレス腱のあたりを狙い渾身の一撃を振う。


しかし、この攻撃も足を切りはらうどころか、人間なら確実に歩けなくなるであろう切れ込みが入ったのにもかかわらず、そんな攻撃は意味がないとでも言わんばかりに、こちらに反撃してくる。


傷もあっという間に修復してしまう。


僕は剣を奴の足に刺したまま、後方へ回避する。


回避といっても切りつけた後すぐに、逃げ出しただけだ。


僕が回避した後、分身が捨て身の攻撃に出る。


この攻撃は、正面からの突撃だ。


奈落の化け物は、両の手を組み合わせて振り下ろす。


分身はもろに攻撃を食らい、一撃で倒されってしまった。


この時、マテリアが叫んでいた。




「ウェイトアップ!!!」


その言葉は、大上段から振り下ろされる銀の槍に向かって放たれた。


2メートル近くはあろうかというそれ自体がかなり重そうな巨大な槍は、スライムマンの豪力に加え、たった今振り下ろされると同時にかけられた魔法の効果で、僕らが現在発生させられる最大の強さで、怪物の後頭部を目がけて振り下ろされた。


僕ら二人は怪物と戦っている。


それだけで十分だった。


この時には既に、本命のスライムマンが、蛇のように体を細長く形を変えて、この怪物の後ろにこっそりと回り込み、槍をくるむようにとりついてから、人型に戻ると同時に槍を引き抜いていたのだ。


僕の予想は、《奈落の怪物》が、あの槍を守るからには、あの槍自体が弱点ではないか?ということだった。


そして、とにかくその槍で最大の攻撃をする。


そして、作戦通りの強烈な一撃をお見舞いすることができた。


その攻撃は怪物の首から腰のあたりまで深い傷を入れ、マグマのような体液が噴き出す。


その体液を浴びてしまったスライムマンは、溶かされてしまい、槍が地面に落ちる。


しかし、スライムマンは既に役目を終えていたのだった。




「$#=~&%$$$$$$||||||!!!!!」


怪物が叫ぶ。


断末魔の叫びだ。




切り裂かれた場所からさらに噴き出すマグマと白い蒸気。


そして、その恐ろしい怪物の体は煙とドロドロのマグマに変わり果てた。




 「やった・・・・・・」


僕はその場に座り込んでしまいたかったが、ゲートを閉め、槍を拾い、もう一匹のこのマグマの化身を倒さねばならない。


しかし、ゲートは僕とマテリアでは重くて閉まらなかった。


そして、約2倍の重さになったであろうその槍は疲れ果てた僕では持ち上げることすらできなかった。


僕らは約10分もの間、緊張した時間を待ち続けなければならなかった。


もう一匹がいつ戻ってくるか分らないからだ。




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