第5節 その2 束の間の休息
城塞都市の家に帰って来て、二人でスープを飲んでいる。
今日はゆっくり休む日だ。
あの後、新しい町長さんの所へ行った時には、村中の人達が総出で洞窟へ行き、亡骸を葬る人やサハギンがやってきたであろう地下深くへ繋がる穴を塞いだりして、大騒ぎだったが、アクアマリンを正式に拝領し、また、落ち着いたら、城塞都市への交易も再開する約束も取り付けることができた。
こうして、サウス・カパーでのクエストは完了した。
僕らは港で待っていた骸骨兵と島の代表者1名と一緒に、ここ城塞都市へ帰って来た。
その代表者をクプラムさんへ紹介すると、僕らは家に戻り、こうやって休んでいる。
しばらくはミッションの話はしないという約束をして、たわいもない雑談をしたり、久しぶりにマテリアとゆっくりとした時間を過ごしている。
とはいえ、あの戦いの詳細と、その後僕が気を失った後の話をしないという訳にはいかず、結局、反省会のようになってしまったが、マテリアは僕のサハギンとの戦いに感動して、かっこいい、かっこいいと何度も言っていた。
僕もまんざらではなく、ちょっと自慢げだった。
分身も呼び出そうということになり、3人で夜更けまで語り明かした。
(この生活がずっと続けばいいのに。)
そんな風に思わずにはいられなかった。
次の日は、マテリアが伯爵に呼び出され、色々話をしてくると行ってしまった。
僕も誘われたが、伯爵に会うのが怖くて、今回は遠慮させてもらった。
正直、マテリアが帰ってこなかったらどうしようかとも思ったが、またあんな思いをさせるなら、伯爵の元にいた方がいいかもしれないとも思っていたりもした。
しかし、夜になると美味しいものをたくさん食べたのか、幸せいっぱいのマテリアが帰って来た。
「伯爵は何か僕のこと言ってた?」と訊くと、マテリアは、微妙な表情を浮かべて、
「うーん。
よくわからないけど、『次このペンダンドが発動したら、それがお前の最後だ、と言っておきなさい』とか言ってた。
何が最後なんだろうね?フフフ。」
全然、全く、ちっとも面白くない。
最後のクエストである西方の街、ウエスト・カパーへは、さらにその次の日に向かうことになった。
もちろん情報収集の上ではあったが、僕らにとって、ウエスト・カパーへの道のりはそれほど難しいものではなかった。
むしろ、お互いの修行・鍛練にちょうど良かったかもしれない。
街までは、街道沿いにまっすぐ行っても、3日程度かかったが、そこまでに現れた魔物はサハギンに比べればなんでもない。
分身のタイミングや剣の練習にもなったし、マテリアも回復の魔法の使い方とリードタイム(次に魔法が使えるまでの時間)を理解するのにちょうど良かった。
そうして、僕らは、今度も(街に着くまでだけなら、いつもだが)順調に目指す街へ着いたのだった。
街の門をくぐるときに、他愛もない話で笑っていた二人とも、今回のクエストが1年もの歳月を要することになるなんて、そしてあのような別れがくるなんて、この時は全く予想していなかった。