第5節 その1 アクアマリン
目を開けると、砂を塗り固められた白い天井が見える。
横を向くとそこには誰もいない。
ベッドがあったようだが、シーツはめくられたまま放置されている。
海から抜ける風が心地よい。
起き上がる自分。
サハギンとの戦いを思い出す。
今は夜のようだが、あれからどれくらいの時間がたったのだろうか?僕は自分の肩の痛みを思い出す。
しかし肩に痛みはない。
(どういうことだ?)
包帯は巻かれているが、腕も動く。
ただ、肩にヌルッとしたゼリーのようなものが付いている。
僕が指先でそのゼリー状のものをネチョネチョといじっていると、マテリアがやって来た。
「コースケ!大丈夫?どう、回復魔法は?」
青い宝石がつけられた杖を振り回しながら、マテリアが最初は泣きそうな顔をしていたが、僕が元気そうなのを見て、今度は急に誇らしげな顔をしながら、僕の横に来てドカンと座る。
「今、どんな感じ?痛い?」
マテリアはふざけているわけではないようだ。
僕は彼女のステッキをみて、思い出したようにポケットの中をまさぐった。
アクアマリンがない。
「このアクアマリンだよ。
コースケが持っているって聞いたから、早速使ってみた。」
お医者さんに診てもらったら、骨折も治っているって。
ただ、体力の消耗が激しいのは回復していないようだから、1日寝てなさいって。
もう1日以上たっているけどねー。」
「えっ?僕ってば24時間以上も寝ていたの?」
(この町にたどり着いたのが夕方だったから、それぐらいたったということか?まあ、あれだけの怪我をしたんだ。
肩がまた動くだけ十分じゃないか。
むしろアクアマリン(オリジナル)の回復魔法はとても強力だ。)
正直もう片腕は使い物にならないのではないかとあきらめていた。
「そうだよ。
すっごく心配したんだからね!」
なぜか今度は怒っているマテリア。
だけど顔は笑っているのが隠せない。
ああ、良かった。
またこういう日常に戻れたんだ。
安心したせいか、急に眠くなった。
今度は朝まで寝れば十分だろう。
「あれ、コースケ、ねぇ、コースケってば!ねぇ・・・コー・・・」
マテリアの話声は僕にとって最高の子守歌かもしれない。
僕はそんなことを考えながら、眠りに落ちて行く。




